第11話 戦闘、元悪徳商人
風が収まり、目を開くとダインがいたはずの場所には一言でいえば気色悪い方の虫人間が立っていた。
ヒロイックさが微塵もない虫人間……これがアナウンスにあった「ダイン融合体」なんだろう。
「なんだろうこの虫……銀色のコガネムシ?うわこっちみた。口元きもいなぁー。」
「キシャァァァァ!」
「ちょこっち来たよ!受け流し!」
飛びながらの突進だったが受け流しで横にそらすことに成功。ただその勢いのまま道の横の建物に突っ込んでしまった。
夜とはいってもまだ酒場や道にはNPCがいる。
別に関係ない、でもいいんだけど人が死ぬのを避けられるなら避けたい。
「そう思うよねぇ!?グロウィス!」
「何の話だよ!とりあえず俺がヘイトを集めておくから兵士とかほかの人に伝えてくれ。」
「わかった。できるだけ連れてくる!」
全力疾走で屋敷の方まで戻れば、他プレイヤーがこちらに向かって走っていた。
「こっちに敵!銀色の虫人間で突進とかしてくるタイプ!理性はないっぽい!」
走りながら僕はそう言う。
僕よりAGIが高い物理職の人に先に行ってもらって、その少し後ろを遅い人たちが固まって移動している。
僕らが着いたころにはグロウィスがタンク、その他の人が剣やメイスで融合体を攻撃していた。
融合体の隙に合わせて攻撃しているのだが、外骨格が固いのか剣で切りつけるのが難しそうだ。
「魔法組が来たから一旦退くぞ!」
全員が一気に、いや数人が残ったがすぐに退きそれぞれが思い思いの魔法を放つ。
「ギシャァァァァァ!」
悲鳴なのか咆哮なのかよくわからない声を上げ、融合体は空へ飛んでいく。
インベントリにしまっていた借り物の弓を取り出し、撃ってみるもスキルも何も乗ってないただの矢では弾かれてしまい外骨格は貫けなかった。
ただ、実際の虫のように関節部分に外骨格のない場所がある。そこならまともにダメージが入るだろう。狙えるかどうかは別だけど。
ゴウッッッッ
大きな音を立て上空からこちらに向かって突進してきた。
運悪く一人の戦士が食らってしまうが、かなりの距離吹っ飛ばされた後、泡のように消えてしまった。リスポーンだ。
食らったらまずい。だが、
「グロウィス。あの突進弾けない?」
「できなくはない。真正面だと一撃で盾がお釈迦になるかもだが。」
「できたらチェーン被せて斬首する。死ぬかはわからないけどでっかいダメージ出せるよ。」
「いや、それやるなら確実に殺せるときがいいだろう。まずは魔法だな。魔法使える奴は積極的に撃ってくれ!」
僕も魔法使いの方に行き、いつでも受け流せるように剣を構えておく。
MPは無限じゃない。だから外すのは痛いはず。
「物理組は肉壁になるしか仕事ない感じかなこれ。」
「はぁ!?ふざけんなよ!なんでそんなんしなきゃいけねぇんだよ!」
ほぼつぶやきだったんだが。
「耳がいいんですね。あと後ろ来てるよ。」
「うわっ!?放せこの虫野郎!」
行動が変化し、ただの突進ではなく掴んで空まで運び落とすといった行動に変化した。あれは受け流せないかもしれない。
耳がいいのに後ろからくる羽音に気づけなかった剣士君は掴まれ、上から落ちて落下ダメージでリスポーンした。
その間にも魔法は撃ち続けられ、次々と着弾していく。
そのうち土属性の岩を放つ魔法が外骨格に綺麗にあたり、ひびを入れた。
ただ、ここは序盤の街。高くても20前後だ。
次第にMPが切れた人が出てくるようになる。
それぞれでMP回復アイテムを持ってはいるようだが、やはりそれも有限だ。
決めるならさっさと決めた方がいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます