第3話 空間魔法はやはり地味

高校の授業が終わり、部活に入っていない僕はすぐさま帰路に就く。

今日はまずお金を稼いで武器を新調したい。

DEXで耐久が減りづらくなるとは言え今の装備凡庸の剣じゃあ素の耐久と攻撃力が心許ない。

あとは魔法のことをもう少し知りたい。

序盤の街でも使い方とかを知ってる人はいるだろうし、The魔法使いといった格好のプレイヤーに聞いてみよう。

ベッドで横になりログイン。

宿屋の部屋で起き上がった僕は感覚に異常がないことを試してから街へと出る。

プレイヤーは非戦闘状態では頭の上にプレイヤーネームが出る。

一番人が多いのは露店のある大通りだろうか。

初期装備でも魔法使いの帽子とローブはでかいのですぐわかる。

露店の人と話している男に近づいていく。


「おうお前。昨日ぶりだな。」

「うん。そこの魔法使いに魔法を教えてほしくてね。」

「あぁ?えーと…コルクラニア。地味に長いな。いいぞ。スキルはあるんだろ?」

「もちろん。空間魔法を取ってる。」

「うわ、地味だな。しかも今まともに使えるのランカーぐらいのゲキムズ魔法だろそれ。」

「そうなんだ。軽くしか調べてないからわかんなかったや。とりあえず教えてよ。」

「順番に行くぞ。初めに魔導書で魔法を覚える。そして杖を持つ。ほかのスキルと同じで魔法名を言いながら撃つ場所を決める。これで魔法が使える。」

「それ初めに魔法3つ取った純魔きつくない?」

「あそこの街道近くのゴブリンなら杖で殴りつけるだけで十分戦える。俺は杖術取ってたからスキルも覚えられた。」

「ありがとう。魔導書はどこで読めるの?」

「あぁ…俺の初級魔導書貸してやるよ。これ買うと高いし。」

「本当?めっちゃ助かる!」


受け取った魔導書を開くと白紙の本にだんだんと内容が書かれていく。


『魔法:空間圧縮を習得しました。』


そのまま本を見る。

空間魔法には目視が必須。

出来るのはは空間を縮める、広げる、入れ替えること。

うーん。地味。

ただこれは使えれば強い系の魔法だ。

古武術などに縮地という移動方法があるらしいが、魔法で文字通り”縮地”ができる。

前衛向きだ。


「その顔は覚えられたか?」

「ばっちり。」

「ならよかった。杖はこの辺の露店で1000ガリンで一番安い奴が買える。」

「ありがとう。これ返すよ。」

「ああ。またいつでも聞いてくれ。」


名前はスルメイカ…イカ好きなのかな?

イカ男に言われた通り杖を探す。

すると木で作られた雑貨を売っている店でそれらしいのを発見。

黒っぽい木で作られたワンドだ。


「これいくら?」

「……30000ガリン。」


高っ!


「一番安い杖ない?」

「こっち。2000ガリン、いや1500ガリンで売ってやる。」

「それを頼むよ。」


こっちは白い木で作られた杖で長さも黒っぽい奴より少しだけ短い。

アイテム名は「白木の短杖」そのまま。

大通りを抜け門を出る。

途中で泣きわめく男がいたが何かのクエストでもあるんだろうか。

左手に杖を、右手に剣を持って春風の森に来た。

もう何番目かわからないゴブリンに杖を向けて。


「空間圧縮!」


僕たちの間の空間が縮ま…らなかった。

嘘でしょ!?

こっち気づいたし。

倒そうと僕は駆け出す。

すると、一歩でゴブリンの目の前に来た。

5mちょいが1.5mぐらいになった。


「兜割り!」


一撃で倒せた。

やっぱり空間魔法にしてよかった。

しかしエフェクトは何も出ない。

高速移動ではないので残像は出ないし光もない。

なんか…うん。地味だけど強い。地味だけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る