第1話 more anotherの世界

「ここをこうして…目と髪色はいい感じのピンクにしよう。」


僕、桜庭瑞樹さくらばみずきはキャラメイクに勤しんでいた。

バイト代を貯めに貯めまくって購入したフルダイブ型VR筐体。そしてそのゲームソフト、「more another」。モアアナなんて呼ばれたりもするが、フルダイブ技術が一般家庭に普及し始めて割とすぐ出たゲームだ。ジャンルはMMORPG。「もう一つの世界」をテーマにしたゲームで、その売りはファンタジーな世界観と自由度。探索要素が尽きないほど莫大な量あり、発売から一年以上たってもまだ新要素が見つかっているほどだ。

僕自身の顔に似せるように、だけど少しイケメンにアバターを作った僕は次に自分の初期スキルを選ぶ。

なんでもキャラメイク時に最大3つスキルを選べるらしい。

まあオーソドックスに武器スキル:剣と武器スキル:格闘。

格闘なのに武器かぁ…と思いつつ、最後のスキルを探していく。

このゲームで僕がしたいのは魔法剣士だ。ゲームによっては器用貧乏扱いされるが、やはりそこにはロマンがあふれていると思う。

魔法系スキルは…炎、水、風、雷、土、光、闇などの基本の属性に加えて呪いやバリアなんてものもある。

その中で僕が気になっているのは魔法:空間だ。

出来ることといえば空間を広げる、縮める、入れ替える、しかも視認していないと使えないといった地味な魔法だが、物理の補助に最適だし、魔法の地味さはスキルで何とかなる。

ただ炎とかで薙ぎ払ったほうが強そうな気はする。僕だって「エンチャントファイア!」ってやってみたいし。

悩むこと10分、

「ええいままよ!どうせ属性魔法は後からでも覚えられるだろう!」

というわけで後からの習得が難しそうな魔法:空間にした。

最後にプレイヤーネームは…ほかにも使っている「コルクラニア」でいいや。

これでキャラメイクは終わりだ。

いざ、「more another」の世界へ!








ステータス振ってなかった…


☆☆☆


初期装備は片手剣「凡庸の剣」に「凡庸の革鎧」、ステータスはVITを限界まで下げてSTR、DEX、AGIに振った。序盤は物理を強めに伸ばしていこう。

今僕が立っているのは森。マップを呼び出せばここは春風の森というらしい。

近くにはエーデラントという街がある。

まずはモンスターをそれなりの数倒してドロップアイテムでも探そう。

周囲を探るため耳をすませば、草が何者かに踏まれている音が聞こえる。

そちらに目を向ければ、ファンタジーの代表、ゴブリンさんだ。

ゴブリンが…僕の目の前を歩いている!

夢にまで見た光景に心躍らせながら、凡庸の剣を握りしめる。


「第一エネミーはっけぇぇぇぇぇぇん!」


飛び上がりながらゴブリンに向かって振り下ろす。

ゴブリンが振り向くときにはもう遅い。

青白い光を帯びながら脳天にぶち当たった攻撃はクリティカル。

一撃で仕留めることができた。


『剣スキル:兜割りを習得しました。』


アナウンスの声が聞こえる。

ステータスを確認すると、武器スキル:剣の下に兜割りが追加されていた。


兜割り

アクティブスキル

相手の頭上への剣の振り下ろしにダメージ補正。


こうやって使っていくと派生していくんだな。

これはどんどん試して派生させるしかない!

ドロップはぼろ布だけなのでさっさと拾って次のエネミーを探す。

パリィ系、回避系は欲しいな。


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