第1話:始祖の名前のコア

 落ち着け、俺は修学旅行を行く為に飛行機に乗っていた、それで漠然と海を眺めていたら、急に機体が揺れ始め爆発音が耳に響くと同時に俺は気絶をした。


 それで目が覚めたら、ここに居た。俺は服に付いている砂を取る。立ち上がり、辺りを見渡した。服装は無事だ。

 怪我の様子も無し、何が特殊な力を疑わずに居られない。


 波の音が静かに耳に響く中、俺は思考している。目の前には広大な砂浜が広がり、青い空と透き通った海が俺を包み込んでいた周囲を見渡すと、どこまでも続く緑豊かな木々が俺を出迎えていた。


 ここは島なのか?周囲を見回しても、誰の姿も見当たらない。服に砂がついていたので、軽く払って立ち上がる。幸い、服装に大きなダメージはないし、怪我もしていない。何が起きたのか、俺には分からなかったが、少なくとも今の俺は無事だった。


 目の前には広大な砂浜が広がり、青い空と透き通った海が俺を包み込んでいた。波の音だけが耳に響く中、俺はその景色をぼんやりと眺める。異世界にでも来たのか? そんな疑問が頭をよぎる。周囲を見渡しても、建物らしきものは一切見当たらない。ここが本当に無人島なのか、それとも何か他の場所なのか、全く分からない。しかし、今はそのことを考えても仕方がない。とりあえず動き出すしかない。


 まずは周囲を確認することに決めた。俺は足を動かして、周囲の探索を始める。森の方へと歩を進めると、木々が並んでいるのが見える。普段見かけるような木とは違う、異質な景色が広がっている。しかし、それでも空気はとても美味しい。普通ならこんなことに感動することはなかっただろうが、今はその空気がとても心地よく感じられる。冷たくて澄んだ空気が肺の中に染み渡り、心が少し落ち着くのを感じた。


 しばらく歩くと、森の景色はほとんど変わらず、ひたすら木々が続いているだけだった。川や洞窟らしきものも見つけられなかった。それでも、歩き続けなければならない。この場所が何かを知るには、前に進むしかないからだ。


 そして、数分後、俺の前に突然現れたのは─


「おはよう、私はコア。」

 コアと名乗った女性は 白いフードを被っている。

 そう言って、白いフードを被った女性が目の前に現れた。俺は一瞬、言葉を失った。おはよう? いや、確かに朝っぽいけど、こんな状況で「おはよう」なんて言われても、どう反応すればいいのか分からない


 間違ってはいないんだろうけど、何か違和感がぬぐい切れない。普通だったら、目の前にこんな状況が広がっている時に「おはよう」とか言わないだろ。


「り、リオンです。」

 あぁ、しっかり言葉を発してる。大丈夫だ、ちゃんと喋れるじゃないか。俺、コミュ障じゃないしな。面倒な招待面の人とも普通に会話できるし。

 それよりも、問題は言語が通じるかどうかだ。コアは普通に日本語??で話してるけど、まさかここが本当に日本なのか?いや、飛行機が爆発して、それで流されてきたって、そんな都合よく話が進むかよ。だって、現実的に考えてあり得ないだろ?こんなこと。


 俺の頭の中でごちゃごちゃ考えが渦巻いてる。その疑問のすべてを吐き出したい衝動に駆られたけど、コアと名乗った少女がそのすべてを吹き飛ばすような一言を放った。


 君、どこから来たの?」


 コアが俺をじっと見つめて、唐突にその質問を投げかけてきた。思わず、俺は言葉を失う。ここが一体どこで、どうして俺がここにいるのか、自分でもよく分かってないのに、そんなことを急に聞かれても…。


「ど、どこからってなんか気付いたらここに居た的な?」


 我ながら、かなり分かりにくい答えだった。けれど、それしか言いようがない。どう説明すればいいのか、全然見当がつかないんだ。気がついたら、ここにいた。それが今のところの事実。飛行機の爆発から気を失った記憶しかないから、あとはもう何も。


 俺が言葉を続けると、コアは一瞬、考え込むような仕草を見せた。まるで、俺が言ったことが何かの手がかりになるとでも思ったかのように、真剣に俺を観察している。


「異邦人ね・・・あんたさ、前居たところって日本でしょ?」


 その言葉に、俺は驚いて目を見開く。日本?まさか、コアは俺が日本から来たことを知っているのか?


「え、はい!そうです!そうなんですよ!俺迷っちゃ──」


 思わず興奮して声が大きくなる。今の俺にとって、日本という言葉は救いのように感じられた。少なくとも、この異世界で自分がどこから来たのかを知っている相手がいるのは、少し安心できる材料になる。


 でも、言いかけてすぐに気づく。コアの顔に浮かぶ、どこか冷ややかな表情。それに、俺の返事があまりにもあっけらかんとしているせいか、彼女の反応が少し違和感を覚えさせる。


 その違和感を抱えたまま、俺は続けようとしたが、コアはすぐに言葉を遮った。


「うるさい!口臭い!!」


 その一言で、俺の口は完全に塞がれた。え、俺口臭いのか?そんなこと言われたのは初めてで、しばらく自分の息が気になって仕方がなかった。いや、別に朝から何も食べてないし、寝起きも悪くなかったはずなんだけど…。


 けれど、すぐにその思考は打ち消される。コアの言葉が続く。


「いいから黙って私だけの言うことを聞いて。」


 その強い言葉に、俺は無意識に反応して、頭を下げるようにしてうなずいた。「はい」って、つい声が出てしまった。もう反論する気力もなかったし、何よりこの場で無駄に口を挟むのは得策じゃないと感じたから。


「私からの助言は1つここから離れた方がいいわよ、この森は危険だから。」


 森が危険?確かに、今までに見たこともないような木々が立ち並んでいて、その不気味さを感じ取っていた。でも、じゃあどうすればいいんだ?ここを離れて行ける場所なんて、すぐには見当たらない。俺がどこに行けばいいのかなんて、分かりゃしない。


「それって?」


 俺の問いかけに、コアはすぐに答えた。けれどその答えは、俺が期待していたものではなかった。


「悪いけど、私から言えるのはこれぐらい。」


 その言い方に、俺は少し動揺した。なぜこんなに冷たく、素っ気ないんだ?助けを求めている俺に対して、あまりにも冷徹すぎる。


「いや、ちょっと待ってくれ!俺異邦人でさっぱり分からない──」


 俺は焦って言葉を続けた。何も分からない。状況が全く理解できていないし、ここで何をどうすればいいのか、それが見当もつかない。でも、その言葉はコアには届かなかった。


「感謝しなさいよ、私は別に赤の他人を助ける程お人好しじゃないから。じゃあね。」


 コアのその冷たくて短い一言で、全てが終わった。彼女の姿はすぐに消えていく。まるで、俺の存在が最初からなかったかのように。


 その後も、ただ立ち尽くすだけだった。言いようのない感情が胸を締め付ける。彼女の最後の言葉には、明らかに「敵意」が篭っていた。その言葉の裏に感じた拒絶感、無視されているような感覚に、俺はどうしていいか分からなかった。


 コアは確かに、俺を助けようとする素振りすら見せなかった。そのどこか冷酷な態度に、俺は自分の無力さを痛感させられた。


 歩きながら、コアの言葉が頭の中で繰り返される。あいつが言った「日本」という言葉、あれがどれだけ引っかかるか分かってるか? つまり、ここは日本じゃないってことだ。だったら、なんで俺はここにいるんだ? 飛行機が爆発して、流されて、目を覚ましたらこんな場所にいた。これ、全部夢なんじゃないかとも思ったけど、そうじゃないのはすぐに分かる。目の前に広がるこの世界は、どこかがっちりと現実だと感じさせる。


 そしてコアがわざわざ「異邦人」と言ったこと、その響きが妙に突き刺さった。異邦人って、なんだよ。単なる外国人、いや、それ以上の意味を込めてるとしか思えない。部外者? 異質な存在? 俺がどれだけここに馴染めていないか、思い知らされてる気がする。


 他のクラスメイトがここにいる可能性があるのかも分からない。思い返してみても、俺一人しか見当たらなかったし、まさか俺だけがこんな目に遭うとは考えにくい。でも、もしここに他の奴らがいるとして、どうやって会うんだ? どこを探せばいいのかも分からないし、手がかりすら見当たらない。それを考え始めると、頭がどんどん混乱してきて、もはやどこから手をつけていいかすら分からなくなった。


「うるさい、考えても無駄だろ」って、頭の中で声が響く。でも、それを振り払うようにして、俺は再び足を動かした。ここで立ち止まってる暇なんてない。結局、今の俺には進むことしか選択肢はないんだ。


 でも、さっきコアが言った通り、先に進むことが危険だって分かってる。確かに、あの森の深さと不気味さは感じてた。けれど、戻っても仕方ない。どこにも行けないなら、行けるところまで行くしかないんだ。俺にとって、今はそれが唯一の選択肢だった。


 再び深く息を吸い込むと、冷たい空気が肺に染み込んでいく。もう、この世界に来てから感じたものの一つ一つが、全てが重く感じてきた。だけど、それでも俺は進む。歩みを止めてしまったら、きっとどんどん追い詰められていくだけだから。


 進んで、進んで、そして…もし俺が絶望にぶつかったとしても、それがどんなものか、ちゃんと受け入れる覚悟はできていた。

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