第21話:宣戦布告
俺たちはついに東の領土に到着した。メンバーは俺、シシア、ダクネス、クリムゾン、アクアの五名。シシアが集めてくれた情報を基に、まずは東の領土から奪還作戦を開始する。ここを皮切りに、残りの南、北、西の領土も取り戻すつもりだ。
「俺が言うのもなんだけど、マジで俺を信じてるのか?」
俺は敵兵を監視しながらクリムゾンに声をかける。クリムゾンも敵から視線を逸らさず、いつでも対応できる体勢を保っている。
「えぇ、選択肢はそれしかない。“奴”は強敵だ。少なくとも私たちでは勝てない。だから、あなたの力が必要なの。少なくとも、あなたが“奴”の味方じゃないってことは分かったしね。」
「へっ、よく分かってるじゃねーか。このダクネス様と兄貴が揃えば、一方的な虐殺になるぜ。」
ダクネスは鼻をすすり、自慢げに答える。
「んで、見返りはあんのか?」
「もちろん、あるわ。私たちができる範囲で出来ることをするわ。」
ダクネスの発言に、クリムゾンは即座に返答する。ダクネスはそれを聞いて満足そうに頷いた。「上出来」だと。
「しかしあの数の魔人、どれも中位魔人ですよ。どうやって対処するつもりだ?」
アクアの言う通り、エネルギーの量は相当なものだ。
東の領土は魔人たちが蔓延っている。彼らは元々ここに居なかった者たちらしい。十中八九“奴“のせいだと思うが、ニセガミよりは弱そうだ。
「ん・・・」
俺たちが出方を伺っていると、シシアが突然狙撃の体勢を取った。そして次の瞬間、パーンという銃声が響き、一人の魔人の頭を撃ち抜いた。
えぇ・・・作戦もクソも無さそうだな。
「おい!誰だ!」
「間違いない!死神だ!白い死神!」
魔人たちは慌てふためいている。それからシシアは単独行動を開始し、どうやら彼女のスタイルは一人で動いた方がやりやすいらしい。
クリムゾンはそれを見て頷いた。
「行くよ!」
クリムゾンとアクアは隠れていた茂みから飛び出す、俺もダクネスを立て続けに飛び出した。クリムゾンは飛ばすと否や双剣で魔人達の首を刈り取っていく。
すごいな・・・速い。
アクアは魔法を主に使用していて、水魔法で対象を攻撃している。ダクネスも、どうやら侮れない子供だ。腕前は間違いなく大人顔負けだ。
俺は魔人の攻撃を避けつつ、『炎帝』や『雷帝』を駆使して反撃する。
正直、敵じゃない。俺の攻撃で魔人たちは一撃で倒れていく。洞窟にいた奴らの方が何倍も強い。
俺たちは次々と魔人たちを倒していく。騒ぎを聞きつけたのか、一風変わった魔人が奥から現れた。
「まだ、生き残りの残党がいたのか。」
ポキポキと首を鳴らす。それを見たクリムゾンがボソッと呟いた。
「あいつは・・・四天王閣の一人、マダラ白鴎王よ。」
クリムゾンの説明を肯定するように、マダラは高らかに笑った。
「よく知ってんな、それで知った。で、どうする?戦うか?」
マダラは不敵に笑い、俺たちなんて敵じゃないと言わんばかりだ。確かにマダラは強い。他の魔人よりもエネルギー量が多い。
上位魔人だろう。しかし、ニセガミより強いかと言われれば、う〜んって感じだ。
「・・・貴方の首、貰うわ。」
クリムゾンは双剣を構え、マダラはこの決意を軽蔑するように嘲笑した。
「ふん、てめぇ如きに笑わせてくれる。」
マダラも手をブラブラさせながら戦闘態勢を取る。ダクネスとアクアはその様子を見守っている。
俺もその雰囲気に流されて、見守ることにした。
先に動いたのはクリムゾンだった。素早い動きでマダラに迫り、マダラは迎撃の姿勢を取るようだ。
一進一退の攻防が続き、マダラは口だけではなく、実力も伴っているらしい。彼の得意属性は“風”だ。自身に風を纏わせ、速度を上げている。性能はエクストラスキル止まりかな。
「ふん!どうした!口だけか!」
一見するとマダラが押しているように見える。しかし、クリムゾンの奴は何かを狙っているようだった。自分が押していると勘違いしているマダラは、どんどんとクリムゾンに詰め寄る。そして、クリムゾンは策を見せた。
「ここ」
その瞬間、太陽光がクリムゾンの双剣に映り、それがマダラに反射した。
「ぐぅ!」
いくら魔人といえど、太陽光を直視できないようで目を瞑る。その隙を逃すクリムゾンではない。クリムゾンは双剣の一本をマダラに刺し、血が噴射のように飛び散った。
「この、程度で!」
マダラは首に双剣が刺さっているにも関わらず攻撃しようとする。しかし、クリムゾンは左足を上げ、そのままマダラに刺さった双剣を押し出し、首を切った。
ドザッとマダラの首が落ちる。
「そこまで強くないわね。」
クリムゾンは双剣を拾い、血を落としながら鞘にしまった。
「ふん、俺は四天王閣最弱だ・・・他の奴らは化け物だ・・・ぞ。」
おぉ、なんというベタな発言。マダラはそう言い残し、この世を去っていく。
「噂程じゃないわね。問題はやっぱり一人、奴だけね。」
クリムゾンは勝ち誇ることもなく、当たり前だと言わんばかりに東の領土を奪還した。
♢♢♢
四天王閣マダラの死はすぐにこの森を駆け巡り、それは“奴“にも届いた。
「天城様!マダラが死亡したそうです。」
天城はそれを聞いても顔色を一つ変えず、玉座に座っている。周囲の部下たちも動じない。最高幹部がやられたのだ。本来なら異常な事態だ。
「てめぇ、名前は?」
「え?えぇ・・と、ルーカスです。」
ルーカスと名乗った中位魔人は、戸惑いながらも答えた。
「あそ、んじゃ今日てめぇが四天王閣に昇進だ。」
「え?は、え?!あ、ありがとうございます!」
「んじゃササッと消えろ。」
ルーカスは喜びを抑えきれない様子で、そのままその場を後にした。
天城にとって最高幹部など興味がない。所詮寄せ集めの軍隊に過ぎないのだ。実際にマダラという雑魚も、天城にとっては取るに足らない存在だ。ただ、そう言えば勝手にやる気になってくれるから言うだけだ。故に、欠員が出たならばすぐに補充すればいいという考え方だ。
「しかし、天城さん。珍しく5日間顔触れが変わらない四天王閣がやられました。最近では“紅の戦士“が動いているとか。」
彼・・・いや、彼らこそが“本物最高幹部“「王の御膳」の一人“フレア“だ。天城が認めた実力者たち。同時に天城に忠誠心を誓っている者たち。その中でもフレアは古参だ。天城がここに転移した時から心酔し、忠誠を誓っていた。
「紅の戦士か、あの赤髪の女か。」
適当に
「無視はできぬでしょう、我々はこれから規模を拡大していく。小石でも障害は取り除くべきです!」
露骨な欲を隠そうともしないで発言したのは“ハルク“だ。上位魔人で、その強さは“四天王閣“に匹敵する力を持っている。
「好きにしろ・・・」
天城は興味がない、勝手にやってくれと言わんばかりな態度だ。勿論、ハルクもそれに気付いている。天城は承諾していると信じて疑っていない。
(天城ィ・・・
ハルクは裏で微笑む。いずれ天城を倒し、自分が王になると。まず必要なのは、信用されるための実績だった。こうしてハルクも紅の戦士を倒すために自分の軍を上げたのだった。
♢♢♢
シシアはクリムゾンたちと別れた後、単独行動していた。定位置に付くと狙撃を構える。シシアがいる場所は南だ。
たった一人で南の領土を奪い返し、魔人たちを殲滅。南の四天王閣の頭に弾丸をぶち込み、一撃で倒した。
本来、魔人は頭を撃ち抜かれても死ぬことはない。では何故か、それこそがシシアの『ユニークスキル英雄型:
「ん・・・」
シシアに付いた異名は「白い死神」。姿を見せず淡々と魔人を倒していく。実はシシアは四天王閣を15体倒している。倒しても倒しても天城がすぐに適当に補填するため、作業のようなものだった。シシアは次なる場所に向けて足を運んだ。
♢♢♢
寝てて投稿遅れました!すみません
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