第10話:VSニセガミ
【分析完了。個体名:
また、
早速俺は使ってみた。
風速に近い速度なので避けるのもほぼ無理だろうな。
攻撃力はそこまで高くないが殲滅には向いている。ただエネルギーを一点に集めれば高威力出す事も可能だけど。
その分エネルギー消費も激しくなる。
どちらも要所要所で使う事にしよう。
そして俺は擬態をする事にした、まじでかっこいい。
似たような魔狼よりも素早さは
さて、色々確認したので俺は洞窟内を歩いた。
巨大な扉を押し開けると、ギギと鳴る。
異様な空気が俺を包んだ。そこに待ち受けていたのは、悠然と岩の椅子に腰掛けるニセガミ。足を組んでる。
「お見事!流石はリオンだ。」
ニセガミは称賛の言葉をかけてきたが、その声には余裕が見え隠れしている。俺は、別に褒められて嬉しくもなく、ただ一言応えた。
ニセガミは言葉を続けた。
「けど、足りないな。まだ足りないな!
その言葉と同時に、ニセガミの前に現れたのは、白い肉体の三体。それぞれがニセガミの命令に従い、ゆっくりと姿を変えていく。
最初に形をとったのは腐敗した死体のような姿の
次に変わったのは、
最後に現れたのは、筋骨隆々のトロール。手には棍棒を握りしめていて、その巨体が圧倒的な存在感を放っている。
「僕は神になる者だ──命の生成など造作も無いのだ。」
と、ニセガミは自慢げに語る、悪いが俺は奴の言葉に応えられる程余裕は無い。
ニセガミが軽く手を上げた瞬間、最初に動き出したのは
同時に、チャンスを逃さずに
「ははは、その程度の攻撃じゃ僕を殺せないよ、リオン。」
ニセガミは余裕の笑みを浮かべている。
俺が一瞬気を取られている間にも、
問題はあのトロールか・・・俺の視線は、後方で控えている巨人トロールに向けられる。奴は一撃の破壊力が高い。もしトロールが動けば、一瞬のミスが命取りになる。トロールの方はAIに任すわ。
俺はすぐさまAIに命令を下した。攻撃プログラムを開始してくれ──と。
AIが了承してくれたので目の前の敵を倒す事にする。
俺は
もし奴が本気で参加すれば、今の俺では勝ち目がないかもしれない。それなのに、何を考えているのか、意図が全く読めない。
まぁいい・・・今は好都合だ。利用させてもらう。
俺は再び気を引き締め、目の前の敵に集中する。ニセガミが動かない今がチャンスだ。この隙に少しでも敵を削る。
「お前、そろそろ鬱陶しいぜ!」
俺は右手を
「ァァァ!」
この不自然な静けさに一瞬の不気味さを感じつつ、俺はその不安を振り払う。今は考えるよりも動く時だ。
俺が事前にAIに命じたおかげで、攻撃プログラムは準備万端だった。トロールは抵抗することなく倒れた。その巨体は崩れ落ちた。
「お前、何がしたいんだ?」
俺は思わず問いかけた。ニセガミの行動が読めない。だが、彼は冷静に、淡々と答えた。
「ハンデだよ。僕は“神”だ。これくらいのハンデをやらないとつまらないだろう?さぁ、さっさとそいつらからスキルを奪えよ。」
ニセガミは俺の能力を完全に把握しているらしい。俺がスキルを奪う能力を持っていることなど、すでにバレている。思い返せば、俺はこれまでその能力を惜しみなく使い、実験もしてきた。
手の内を見せすぎたか・・・
「まぁともかく怖いが、俺はニセガミの言う通り、それぞれからスキルを奪った。」
俺は
「お前、随分と慢心だな。」
ニセガミが俺を強化させる機会を意図的に与えているのが見える。いや、今回だけではない。
「神が慢心ではなくてどうする。神は常に自分を驕り、奮い立たせる。それに、僕にとって君は強化されてもない。Lv1が2になった程度だ。」
ニセガミはそのまま立ち上がり、俺を見つめる。
「僕は君の肉体が欲しい!君の肉体は異常だよ!まさに神だ!いや、この迷宮で生まれたのだから当たり前だ!僕の肉体よりも!遥かに!遥かに!!・・・悪い興奮してしまった。」
「何が言いたい?」
嫌な予感がして、俺は最大限の警戒を鳴らす。ひっそりと攻撃プログラムを開始した。脳内に響く声。
【攻撃プログラムを開始します──
システム起動プロセスを開始します。現在の状況を分析中。情報収集を行い、敵の動向を把握しています。
全センサーが稼働し、データがリアルタイムで解析されています。
攻撃モードの起動を確認。目標の特定を行い、ロックオンプロセスを開始します。
最適な戦略を計算し、効果的な攻撃手段を選定中。
攻撃準備が整いました。次のステップに移行します。
10・・・9・・・8】
AIが静かに作動している中、ニセガミは興奮状態で話を続けていた。馬鹿が!その顔にエネルギーをぶち込んでやるぜ。
「僕は君の肉体が欲しいの。でも、神は寛容だから、君に抗う権利をあげるよ。」
【3・・・2・・・1、攻撃準備完了】
「んじゃ遠慮なく
超濃密度のエネルギーが解き放たれる。ニセガミはその場から動かない。反応できないのか、それとも避ける価値がないと思っているのか。洞窟を揺らすような衝撃音が響く中、俺はニセガミの不気味な笑い声を耳にした。
「アハハハ、素晴らしい!それが君の限界か!」
その声が響くと同時に、まるで時間が止まったかのように感じた。衝撃波がニセガミの周囲を吹き飛ばし、土埃が舞い上がる。だが、ニセガミは無傷だった。
「君の攻撃は僕に通じない。神の力は、そんなものでは揺るがない。」
「あはは!!!!いいね!もっと惨めに抗えよ!」
ニセガミの声が洞窟の壁に反響し、俺の心を刺激する。あのクソガキが、何を笑ってやがるのか。こいつを絶対に潰してやる。だが、目の前に広がる結界の強度はなかなかのもので、簡単に壊せるとは思えない。物量で攻めれば、いずれは壊れるだろうが、ゴールが見えないマラソンを走っているような感覚だ。焦りと不安が心に影を落とす。
「おい、結界解いてくれねぇか。」
「悪いけどそれは出来ない。神と人の間には壁があるのだから。」
ニセガミの冷たい言葉が、さらに苛立ちを募らせる。さっきから神、神とやかましい。俺の感情が高ぶるのを感じながらも、状況を冷静に分析する必要がある。
【対象の結界に干渉すれば解除可能です】
AIの声が耳に響いた。なるほど、まずは近づくことが重要らしい。果たして、こいつが素直に触らせてくれるかは疑問だが、挑戦してみる価値はあるだろう。俺は思い切って走り出した。
「物理で攻める手段が悪くない、だが君は危険だから抵抗させてもらうよ!」
ニセガミはそう言い放ち、瞬時に魔法陣を展開した。その瞬間、無数の魔法から放たれるのは、灼熱の炎だ。俺はそれを見た瞬間、すぐさま
「いってぇぇぇ!」
直撃した瞬間、異変を感じた。それは、炎属性の
「魔法はイメージ力、スキルとは汎用性が違うのだよ。灼熱の炎と見せかけて水属性の攻撃。雷と見せかけて回復の効果の魔法。イメージ力でなんともなる。」
ニセガミの声が耳に響く。俺は
「さて、そろそろ君の身体も弱ってきたな。」
ニセガミは満足げに笑みを浮かべ、俺を見下ろしていた。どこまでも俺を追い詰めようとするその眼差しが、再び闘志を燃え上がらせる。
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