第11話:偽の神

 俺はありとあらゆる攻撃を試す、雷撃ケラノウス炎熱プロメテウス 更に獲得した状態異常攻撃の数々、しかし効果は無いのかニセガミは平然と笑っている。


「僕のユニークスキルは異能型『神』!!防御、攻撃、イメージの補佐。肉体生成。はっきり言うが僕に出来ないことは無い、神の力をその身で受け止めろ!」

 ニセガミは自分のスキルをさらけ出す、スキルが不明というアドバンテージを捨てたのだ。それだけ俺を舐めているということだ。だが今は好都合、悔しいがやつの方が強い。それを認めないと俺は勝てない。


「六属性の攻撃を織り交ぜた!」

 炎、水、雷、地、闇、光、6つの属性の球体が俺に襲いかかる。特殊なエネルギーの波動は俺に攻撃を与える事が出来る。故に回避一択だ。

 だがこのまま逃げ続けても勝ち目はない、相手のエネルギー消費を狙う事も視野に入れてもいいが、あいつの方がエネルギー量が多いんだよな。俺のエネルギーが尽きるのが先だ。つまりこの作戦は無しだ。


「ちょこまかと、まぁでも君の戦闘データは取れてるがな。神聖輪黎明ホーリー・サークル

 ニセガミの前に魔法陣が二つ現れた、そこから発生られるのは黄色いの光線だ。

 魔法とスキルを併用した攻撃だった、俺のエネルギーを完全に破壊する為の魔法。あれを喰らえば即死だ。

 なるべく防御結界プロテクションは使いたくない、あれは耐久値があるから避けれる物は避ける。

 俺は攻撃を避けると同時に──

無片鱗墜激アサルト

 を放った、無数の弾丸しかしニセガミの結界にて防がれる。それと同時だった。


「転移魔法!」

 ニセガミは俺の目の前に瞬間移動する、そしてそのまま──

「遊びは終わりだ、神の拳ゴット・ハンド

 ドーーンと大きな音がなると共に俺は壁に打ち付けられた。痛い・・・立ち上がれない。


「終わりだな・・・君の肉体は貰うよ・・・憑依ポゼッション

 なるほど、こいつ俺を強化させた理由は憑依する為か。余計な手間を省かせる為に俺を強くさせたのか。

 そして元々勝気の無い戦いをやらされていたのか。

 あはは笑えるぜ、せっかく異世界転生したのによ。

 ここまでか──


「ん?!?!」

 だがその瞬間何が起きた、俺の体内に奴が弾かれた。何が起きた理解出来ないけど俺はその機会を見逃さない、拳を握り奴の結界に触れるとそのままぶち破る。

「やっぱそうかれお前の結界魔法やスキルには強いが物理攻撃には弱いのか!神にも欠点があるなんて、めちゃくちゃ忠実に再現してんじゃん!」

 だからこいつは俺が近寄ることを嫌がったのか。まぁ確かにあれだけ魔法に長けていて、スキルを強ければ本来なら近付く事すら不可能だろうな。

 俺の拳はニセガミを捉え吹き飛ばした。




「な、舐めんなぁ!」

 ニセガミは激昂するも冷静だった。

(何が起きた、僕の憑依ポゼッションは発動成功したはずだ。・・・まさか精霊と契約?でもいつだ)

 精霊と契約しているならば憑依ポゼッションの効果は無い。だが問題はいつ契約したのかだ。

 炎の化身プロメテウスもニセガミが生成した者だ、つまり契約は出来ない。

 この迷宮内で起こる全てを掌握しているのだ、だからこそだ。いつどこで契約したのか、ニセガミは分からない理解が出来ない。

 もう、あるとすればこの“本来の迷宮の主“がリオンの存在を隠したか。

(仮に精霊と契約しても、僕の力なら上位精霊如き無理やり奪える・・・)

 非常識な事が可能なのが自分だとニセガミは自負している。

(まさか・・・奴の精霊が僕と“同格“?!)

 有り得ないとニセガミは理解出来ない、いや、理解しないように脳が拒んでるようだった。

 自分の同格の精霊がここに居ても自分が気づかない訳が無い。

 今は考えても仕方ないと割り切りニセガミは精霊から殺す事にした。結界は崩壊されたので近距離戦は分が悪いだろう。苦い思いをしながらニセガミは戦闘体制を取る。


 俺はニセガミと向き合う。奴の結界を壊すことには成功した。AIによると復元には時間がかかるらしい。だからこそ、ここで決着をつける必要がある。ニセガミの攻撃が何故効かなかったのか、その理由を考える余裕は今は無い。


毒吐ポインズ・ブレス!」

 俺は最大出力の毒ガスを放つ。濃厚な紫色の霧がニセガミに向かって襲いかかる。しかし、ニセガミはまるでその攻撃を受け止めるかのように動じない。


「僕は手配した魔物のスキルなんて、耐性を保有しているに決まってるじゃないか」

 ニセガミは冷たく笑う。確かに、奴は様々な魔物の能力を使いこなす巧者だ。だが、それだけでは終わらせない。毒が効かないなら、別の手段で攻めるしかない。

 近寄れればいい、そう思いながら俺は魔狼に擬態する。 これまで使うことはないと思っていたが、魔狼貶してごめんな。ニセガミは近寄らせないために、様々な攻撃を放ってくる。

 魔法やスキル、さらにはその俊敏な動きで俺を阻止しようとするが、俺は魔狼の特性を生かして洞窟の中を駆け抜ける。


 魔狼の力を使えば、俺は一瞬でその攻撃を避けることができる。冷たい風が俺の体を撫で、耳を澄ませば周囲の音が一層鮮明に聞こえてくる。


「分身!」

 ニセガミは周囲に複数の影を生み出す。俺を惑わせようとしているのだろう。

 しかし、俺の目には全てが見えている。どの影が本物か、明らかだ。


「お前が本体だ!」

 叫びながら、魔狼の擬態を解除する。瞬時に体をスムーズに動かし、ニセガミに向かって全力で蹴りを飛ばした。


 俺の脚が奴の側面に命中すると、ニセガミは驚きの声を上げて吹き飛ぶ。

 力強い一撃で、奴の分身が消え、残ったのは本体だけだ。ニセガミは地面に倒れ込み、驚愕の表情を浮かべている。


「お前以外と身体脆いんだな」

 こいつはスキルや魔狼は優秀だが肉弾戦になると弱い。だからこそ俺の肉体を欲しがっていたのかもしれないな。それを補うために。自分の身体が限界を迎えている事も悟ったのかもしれない。


「あぁ・・・そうだよ。お前の肉体、そして僕の魔法とスキル。それがあれば僕は最強になれるのに!」

 ニセガミは立ち上がる、フラフラとしている。

 ニセガミは拳に力を入れる。そして言葉を続けた。

「エネルギーがようやく溜まった!死ね!神の拳ゴット・ハンド!!」

 ニセガミは俺に向かって拳を放つ、それは俺の胴体を貫いた。

「ふはは!ざまぁ見ろ!」

 二セガミは笑っている、勝ったとおもっているのだろうな、だが俺こいつに今から現実を突きつける。

「・・・お前のエネルギーの波長は無効化しているよ。俺はエネルギーの集合体だぜ?」

 実際にやってくれたのはAIさんだ。あの時奴の神の拳ゴット・ハンドを受けた時エネルギーの残滓を『解析、鑑定、分解』を使用し適合させたのだ。その結果俺は奴のエネルギーを無効化させることに成功した。

「お前は一つ勘違いしている。お前が俺を食らう側ではなく、俺がお前を食らう側なんだよ。」

 俺の声がニセガミの耳に届くと、表情に恐れが浮かんだような気がした。


 俺は奴の体内の情報に侵入し、内部のエネルギーを感知する。ニセガミが異変に気づき、焦りながら拳を引き抜こうとするが、俺はエネルギーの集合体として、しっかりと絡まりついて離さない。

「てめぇぇ!離せや!!」

 ニセガミの怒声が洞窟内に響くが、俺の決意は揺るがない。


「お前はもはや逃げられない。俺がこの体を支配する!」

 俺の力がニセガミの体内で渦巻き、エネルギーを吸収していく。ニセガミは暴れ回るが、俺はその動きを一切許さない。絡まりつくエネルギーの鎖は、彼の動きを制限し、絶望感を与える。


 食う食われる、それは弱肉強食の本能を表していた。俺はニセガミの恐怖を感じ取りながら、さらに力を込めて彼のエネルギーを吸収していく。奴の力が衰え、無力感が奴を包み込む。奴の目には焦りと後悔が交錯する。


「こんな・・・こんなあっさりと・・・」

 ニセガミは掠れた声で喋る、もはや喋る事すら困難な状態なんだろう。

「・・・まぁ、お前強かったよ」

 これは心の底からの本心だ。AIが居なかったら負けてたし。

 俺がこいつに勝てたのはこいつが油断してくれたおかげだ。

 死に往く者の最後の情けだ。


「ふっ・・・当たり前だろ、僕は神だぞ」

 そう言うとニセガミの光の因子になって消えていく。

 俺は奴の情報を獲得した。

 だが俺も限界だったのか、その場に倒れた。


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