第48話 最強メンバー

「ここがSSランクダンジョン、さすがに雰囲気が違うな」


 ダンジョンに入ると、いきなり全身の肌を針で突き刺されるような張り詰めた感覚を覚えた。

 国際的な標準として、基本的に人類が立ち入ってはいけないダンジョンに対してSSランクの評価が下されるらしいがなるほど、確かにこれは納得だ。


 ここはダンジョンであってダンジョンでない。

 違うな、此処こそが真のダンジョンなのだ。


「凰真よ、どうやら手厚い歓迎があるそうだ」


「確かに、こりゃなかなかすごいな」


 ダンジョンに入って数分で前方からモンスターの群れがゾロゾロと押し寄せてくるのが見える。

 歓迎というよりは不法侵入者を追い返そうとしているようにも見える。


 もちろん帰ってやるつもりはない、このまま押し入ってやる。


「それじゃあ……」


「いいよ、お兄ちゃん。ここは私と希梨ちゃんに任せて!」


 誰と一緒に戦おうか迷っていると、美沙は希梨ちゃんと共に一歩前に踏み出した。

 

「いいのか?」


「うん、前の時に感覚を掴めそうだったから早く試したいの!」


「いいよ、美沙。行こう」


 何も心配いらないとみんな理解しているらしい。

 襲い来るモンスターに向かってゆっくり歩みを進める二人を余裕な表情で見つめている。


 二人が手を繋ぐと、一瞬ダンジョン内部が光に包まれる。

 そして美沙の右手には天羽々斬が握られ、その背中からは白く巨大な翼が生えていた。


 やはりというべきか、そこからの動きは見えなかった。

 ただ気がつくと壁のように押し寄せていたモンスターは一体残らず霧散していき、その先には天使のような姿の美沙がいるだけであった。


「美沙、その姿写真に撮っていい?」


「いいけど、急にどうしたの?」


「いや、すごい可愛いから」


「かわっ⁉︎」


 場所が場所なだけに周りが薄暗いのが残念だが、その分淡い光を帯びた美沙がより神々しく見えていい。

 是非とも額縁に入れて部屋に飾っておきたいくらいだ。


「凰真くん、一応私たちは遊びに来たわけじゃないんだよ?」


「そうだったな。みんなのためにも早くここのボスを倒さないとか」


「気をつけて進みましょう。SSランクダンジョンともなれば、どのような罠や不意打ちが待っているのか想像もつきません」


「おっしゃ、じゃあオレの出番だな」


 来夢がパチンと指を鳴らすと、俺たちを取り囲むように光の結界が生成される。


「コイツがあれば急に何が来ても心配いらねーからな」


「ウチもいるから何が起きるかわかるしね」


 うーん、改めて凄いメンバーになってきたな。

 桜さんの未来予知があれば不測の事態にも対応できる、来夢の結界があれば防御面も完璧。

 神代三剣の二人を含む五人で倒せない敵などまず存在しない。


 あれ?俺必要ないのでは?


「それじゃあいこ、おにいちゃん!」


「……そうだな」


 そんな不安を抱えながら俺たちはダンジョンを進むこととなった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「翼っち、右から来てるよ!」


「言われるまでもない、それとその呼び方はやめろと言ったはずだ」


「江莉香さん、私が突っ込むので援護をお願いします」


「了解、任せて!」


 十階層くらいは進んだだろうか、俺の予想通り何も問題なくここまで来れている。

 というかみんな昔よりも強くなっている気がする……いや、連携が取れるようになったのか。

 

 一緒に過ごしていたり、同じ学校に通っていたり、これまではバラバラだったみんなが集まって過ごすようになったことで息が合っている。

 ただでさえ一人一人が強力な力を持っているというのに、加えて力を合わせるようになれば本当に死角がない。


「つーかみんな勝手に動くから俺の出番が全く無いな……」


「おにいちゃん、おんぶ!」


「はいよ」


 気合を入れてSSランクダンジョンに来たというのに、まだ俺は一度も戦っていない。

 いつもよりも芽亜に構う時間が増えている。

 芽亜、もしかしてピクニックに来たとか思っていないだろうな。


 まあ一つだけ言い訳をさせてもらうとしたら、決して俺はサボろうとしているわけではない。


「凰真クン、後ろから来るよ!」


「なっ、わかりました!」


「もう、じゃましないでよ!」


 俺も活躍したい、みんなの力になりたいという思いはある。

 だが俺に近づくモンスターは芽亜が一瞬で倒してしまうのだ。

 多分10m圏内に近づいてすらいない。


「やはり敵が多いですね、連戦で消耗するのはあまり好ましくないかもしれません」


「そうは言っても進むしかないであろう」


「いや、いい方法がある」


 偶然二人を見たからだろうか、少し前のことを思い出した。

 初めて澪葉が星剣であると知ったあの日、ダンジョンそのものを破壊したことを。


「一気にぶっ壊して下まで行ってしまおう」


「なるほど、あの時みたいに、ですね」


「さすがは凰真、名案だ」


「じゃあ二人とも頼むぜ」


 ようやく俺の出番だ、腕が鳴るぜ。

 あの日と同じようにレーヴァテインとティルヴィングの二刀流となり、足元に向けて全力の一撃をぶち込む。


「オラァッ!」


 レーヴァテインの能力によって階下の地面がことごとく切断、粒子になって消えていく。

 これで一気に近道、のはずなのだがようやくやってきた出番に張り切りすぎたかもしれない。

 俺たちは想像以上に落下していく。


「ゴグァァァァッッ!!!」


 そして幸か不幸か、SSランクダンジョン“プルソン”を支配するボスの目の前に降り立った。

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義妹と二人暮らししている底辺配信者の俺、魔剣(美女)と契約してしまい大バズりする〜なんか伝説の剣が周りにいっぱいいるのですが〜 上洲燈 @viola-000

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