第5話

「よせ、もういい。肩から手を離せ。」


賭博を仕切る男は諦めたように口を開いた。

どうやら、レプトンが微塵も怖がる様子を見せないので、手を引かせたらしい。


「負けたよ。あんたに金を渡そう。だが、俺は300万円もの金は手元にない」


申し訳ないという態度を少しも感じさせない物言いだった。


男は手元から、受取っていた金をレプトンの前に放り投げた。


「どういうことだ?」


ゆったりとした落ち着いた口調で、しかし、男の目をはっきりと見つめながら、レプトンは尋ねた。


「わからないのか?これはこの地を訪れたことのない観光客向けの商売なのさ」


男は開き直った様子で、悪びれもない態度だったので、マルクは少しばかりイライラした気持ちだった。


「そうか、私は騙されたのか。はっはっは、急かして損をしてしまった。お金を返してもらえただけでよしとするか」


騙されたことに対して何も感じていないのか、それとも、気持ちを押さえつけてハッタリで演じているのかわからない。


「しかしだな、私を騙したことに対しては何かしら償いが欲しいところだ」


急に態度を変えると思っていなかったのか、男はキョトンとしていた。

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