第7話 遭遇
土曜日。
俺は最寄り駅の前で待ち合わせをしていた。
今日は蒼汰と冬馬と久々に遊ぶ日だ。
ちなみに一昨日はあの後冬馬が快諾してくれた。
「お、真人~!お前早いな~」
「ほんとに早いな……まだ集合時間の40分前だよ……」
スマホをいじって待っていると、蒼汰と冬馬がこちらに手を振りながら走ってくる。
集合時間の40分に来る辺り冬馬たちも早いが……
俺は今日は珍しく朝早く起きれたため、集合時間の1時間前からここにいる。
「お前らも大概だろ……ま、俺が一番人のこと言えねぇか」
「ほんとだよ。……んで、今日は隣駅に行くんだったっけ?」
「そうだな」
俺たちは駅構内に入り、改札へ向かう。
「ごめん、僕ちょっと切符買ってくる」
「あぁ、そういえば冬馬って定期持ってないんだっけ」
「そうだね。特に電車を使って移動することがないから」
「まあ、この辺は割と自転車だけで行けるところ多いしな」
俺たちが住んでいる地域にはゲーセン、商店街、カラオケボックスなど学生がよくいくような場所がかなり多い。
だから、この地域に住んでいる学生で定期を持っていない人も少なくない。
冬馬が切符を買い終わり、三人で改札を抜ける。
電光掲示板を見ると既に俺たちが乗る電車が到着しているようだった。
俺たちは少し急ぎ足で電車に乗り込む。
数分後には電車が出発した。
隣駅なので電車に乗る時間はそこまででもないが、この三人で遊ぶのは今年の2月ぶりなので会話が弾む。
そうこうしているうちに目的の駅に到着し、俺たちは電車を降りた。
「駅から歩いて2分ぐらい……めっちゃ近いな」
「だな~。まあ電車乗らなきゃだし若干不便ではあるけど」
「そこを差し引いても来る価値があったらいいね」
そんなことを話しながら歩いていると、件のショッピングモールに着いた。
かなり大きめで、ネットに書いてある情報などを見る限り映画館やゲーセンなど娯楽施設も多く併設されているようだ。
「うわー、でっけぇー」
「そうだな。これは凄い」
その大きさに驚きながらも中に入る。
やはり出来たてであることもあり、割と混んでいる。
とりあえず近くにあるフロアマップを見てみる。
ここは4階建てで、一階にはレストランや食品売り場、二階には服飾雑貨、三階には映画館のような娯楽系やグッズ専門店、四階には家具や家電などの大型のもの、というような並びのようだ。
「どこから行こうか?僕としては三階が一番気になるかな」
「俺も同感だ。というか、正直言ってほかに興味ない」
「そうだよな……。まあちょっとレストラン街は気になるけど」
「じゃあ、そこはお昼にでも行ってみようか。混んでるだろうけど」
「そうだな。じゃあ、三階に行くか」
ということで、俺たちは三階へ向かうことにした。
まず初めに、三人でゲーセンに立ち寄った。
近所に大きめのゲーセンはあるが、こういうところに来ても入ってしまうのは学生の性ではなかろうか。
入口付近にはクレーンゲームが所狭しと並んでいる。
蒼汰がその内の一つに指をさし、少し興奮した様子で言った。
「お、あれいめほれのぬいぐるみじゃん。あれやろうぜ!」
「本当に蒼汰っていめほれ好きだよね。まあ分かるけど」
「冬馬も分かるよな!あのじれったさを表現するのが上手いんだよなぁ、如月先生」
やめろ。本人の目の前で褒めるな。
恥ずかしくなってくるだろ。
まあ、流石にそんなことは口が裂けても言えないので黙っておく。
俺が愛想笑いを浮かべながら着いて行くと、蒼汰が財布を取り出して100円玉を機械の中に投入する。
「よ~し、見てろよ。一発で取ってやるからな!」
蒼汰はそう言いながらアームを操作する。
「ここだ!」なんて叫びながらアームを降ろす。
アームはぬいぐるみのタグの部分に上手いこと引っ掛け、持ち上げる。
しかし、その途中で落っこちてしまった。
「うわっ、惜しい……」
「でも、なんか行けそうじゃない?」
「確かにな。あの調子でなら割とすぐ……」
と、言っていたはいいものの……
やはり現実はそんなに甘くない。
蒼汰の手元から3枚ほど千円札が離れていったが、ぬいぐるみはまだ取れていない。
蒼汰は若干焦点の合わない目で「あとちょっとだけ……」なんて呟いている。
なんか、可哀想だな……
「蒼汰、一回やってみていいか?」
「あぁ、いいぞ……」
俺は機械の前に立ち、硬貨を入れて操作を始めた。
だいたいこの辺りか、と狙いを定め、アームを降ろす。
すると、ぬいぐるみはするっと持ち上がり、そのまま穴まで運ばれ、落ちてきた。
「あ……取れちまった……」
「真人……お前、運強すぎじゃねぇか……?」
「ま、俺は要らないから蒼汰にやるよ」
「いやいやいや、これを機にお前もハマれよ!それは俺要らないから!」
「いや俺も要らんって!」
もう俺サンプルとしてもらってんだよ!!!
二つも要らねぇよ!!!!
と、不毛な押し付け合いをし、最終的に蒼汰に渡すことにした。
その後もクレーンゲームを続けたり、メダルゲームをしたりして楽しんだ。
そんなことをしている内に、既に13時を回っていた。
誰か……というか全員の腹の虫が鳴る。
三人で笑い合いながらエレベーターで一階へ降りることにした。
俺たちはエレベーターの中で話していた。
「あ~腹減った。何食う?」
「僕はラーメンでも食べたいかなぁ」
「俺は辛いもんでもあれば──────」
俺がそう言いかけたその時、エレベーターの扉が開いた。
「あっ」「えっ」
扉の前にいたのは、2人の女子高生。
その片方は……
芽衣だった。
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