第6話 ゲーム
芽衣と別れてから、俺は帰路に着いた。
学校終わりの疲れた頭でぼーっとしながら玄関のドアを開ける。
「あ、おにいちゃんおかえり~」
「あぁ、ただいま」
すると、リビングから陽菜の声が聞こえた。
そのまま、靴を脱いでリビングに入ると、陽菜がソファで寛いでいた。
ぶかぶかのTシャツだけを着て、下はパンツ以外何も履いていない格好だった。
シミ一つない綺麗な脚を惜しみなく晒している。
学校の男子が見たら確実に目が釘付けになるだろう。
ただ、俺はその様子を見ても溜息が出るだけだった
「はぁ……そんな格好して……風邪ひくなよ?」
「風邪ひくわけないもーん。大雨の中傘を貸してずぶ濡れで帰ってきたどこぞのおにいちゃんには言われたくないし」
「うっ…………まあ、そこは置いとくとして、今日の夜飯の担当は俺だったな」
「そーだねー。楽しみにしとく〜」
俺はまず部屋に荷物を置いてから、キッチンへ向かった。
冷蔵庫を漁ると、冷凍餃子が入っていたので、今日は餃子にしよう。
まず、米を研ぎ、少し水に入れてから炊飯器に入れる。
米を炊いている間に、餃子をフライパンに並べて火にかける。まあうちはIHコンロなので実際に火をつけるわけではないが。
手の空いている内に味噌汁を作る。
そうして出来た料理を食卓に並べた。
「陽菜、出来たぞ」
「お、ありがと」
「どういたしまして。まあ今日は俺の担当だからな」
そう言って席に着く。
食べ終わり、皿を片付けていると、陽菜が話しかけてきた。
「ねぇ、おにいちゃん。今日、ゲームしよ」
「あぁ、いいぞ。ちなみに何を?」
「乱闘ゲー。今日こそは勝ってやる」
「お前が勝つなんて百年早いんだよ」
「へぇ、本当にそうかなぁ?」
俺は皿洗いを一通り終わらせてから陽菜が座っているソファに座る。
すると、陽菜が俺にコントローラーを手渡してきた。
「それじゃー始めよっか。おにいちゃんどのキャラにする?」
「うーん、選ぶのめんどくさいしランダムでいいや」
「え?本当にそれで勝てるの?」
「兄を舐めるなよ?」
「一日も歳離れてないでしょ……」
そして、ゲームがスタートする。
「それおにいちゃんが苦手なキャラじゃん」
「苦手でも勝つのがプロなんだ」
「いやおにいちゃんはプロじゃない……って、それズルい!」
「チッ、吹っ飛ばなかったか」
「むっ、そっちがその気なら!!」
そんな感じで盛り上がっていく。
俺と陽菜はよくこうやってゲームをしている。
大体同じくらいの実力なのだが、格闘系のゲームは俺が、FPS系のゲームは陽菜が得意だ。
俺たちはお互いにかなりの負けず嫌いで、常日頃から相手に宣戦布告をして、今みたいに相手にボコボコにされている。
「もーー!!おにいちゃんそれずるいってぇ!!!」
「ははは、ほら言っただろ?お前が勝つなんてひゃ────」
「とりゃっ!」
「ちょ、おま、直接手元に攻撃してくるのは反則だろ!」
「へへっ、これも戦略の内だよ~」
「それじゃ、これもいいんだな?」
俺はおもむろに陽菜の脇腹に手を伸ばし、くすぐる。
陽菜は身を捩って躱そうとするも、座っている状態、しかも二人掛けのソファなので思うように逃げられない。
「ひゃっ!ちょ、おにいちゃん、それ、だめっ、!」
そのまま陽菜が笑い続け、力が入らなくなってしまったのかコントローラーを落としてしまった。
流石にやりすぎたと反省し、謝る。
「すまん、流石に調子乗りすぎた」
「はぁ、はぁ……私もちょっとふざけすぎたかも……ごめん」
お互いに頭を下げ、頭が冷えたのでゲームを落とす。
そのあと、自室に戻ろうとしたとき、後ろから声をかけられた。
「ね、おにいちゃん。今日部室に行ってたよね」
「ん、ああ、そうだけど」
「何しに行ってたの?」
「あぁ、久しぶりに様子見にな。それとちょっと作業進めたかったし」
「そっか。いつもお仕事お疲れ様」
「ありがとう。まあ、そこまで負担でもないけどな」
俺はそこまで言うと、階段を上って自室へ向かった。
部屋に入り、明日の支度をした後、俺は椅子に座った。
と、そこで一昨日蒼汰の誘いを断ってしまったことを思い出した。
スマホを取り出し、メッセージアプリを開く。
蒼汰に電話をかけると、ワンコールで出てきた。
『もしもし?』
「お前……ワンコールで出てくるとか暇人か?」
『心外な!今はたまたまスマホ触ってたんだよ!』
「ま、だろうな。んで、明後日どっか遊びにいかね?」
『お、いいな!どこ行くどこ行く?!』
蒼汰が如何にも目を輝かせているように声を弾ませる。
それだけ俺と遊びたかったのだろう。
まあ俺も割と遊びたかったから、気持ちはわかる。
「うーん、そうだな……あ、隣駅に新しくできたショッピングモールはどうだ?」
『あそこか、ちょうど行ってみたかったんだ。……でも、2人だけだとちょっと寂しくないか?』
「確かにな……あ、そうだ。冬馬も呼んでみるか」
『そうだな、あいつとはクラス別になっちまったし……』
「そんじゃ、誘っとくわ。また明日な」
『あぁ、また明日』
俺はそう言って通話を切る。
その後、今日は塾であろう冬馬にメッセージを送り、まだ読んでいない小説を手に取って読み始めた。
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