第20話 町の噂
「最近変わった事といっちゃあ、グリーンさんがレーベン城に行ったって話さね。ガラの噂になっとるよ」
お婆さんはニコニコしながら教えてくれた。あれ?誰かに行くことを伝えてあったっけ?馬車に乗っている所を見られたとか、それくらいしか思い浮かばない。
「あ~もしかして・・」
アリスには思い当たる節があったらしい。
「マリリアにレーベン王城に行くことを言ってあったんだよね。もしかしたら、誰かに言ったのかも・・」
十分あり得る話だった。マリリアさんはギルド職員。そこから話が広がってしまったとしても不思議ではない。
「特に、口止めをしていたわけではないから」
町の人の視線はそういう事か。お城に行ったのは事実だし、別にいいんだけど。
**
二件目のお客さんの家を訪れてみた。
「グリーンの旦那、久しぶりだなぁ。怪我?もうすっかり治ってるぜ?まだ少し痛みがあるくらいか」
冒険者の男性で、無精ひげを生やしている。重症では無かったのが幸いだ。
「申し訳なかったと思います。無料でヒールをかけさせて頂いてます」
「そんなに謝る事でもないだろうに。無料なら喜んでやってもらうけどよ」
『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』
淡い魔法の光が、冒険者の右足を包み込んだ。男性は治っていく足をじっと見ている。
「なぁ、気のせいかもしれないが魔法の威力上がってないか?」
「え?」
「治り方が早くなっている気がするんだ。俺、何回か他の人の治療するところ見てたからな」
そういえば、ステータスちゃんと見てなかったな。後で見ておこう。
**
「ねえ、グリーンの魔法って成長しているの?」
教会への帰り道、アリスが尋ねてきた。
「うん。何回か使うと熟練度が上がるのかな?確かに最初の頃よりは、威力が強くなってる気がするけど」
ぼくもよくは分かっていない。ただ、最初よりは変わってきていることは確かだと思う。特に死にかけたあたりから急激に上がっていたのだ。もしかしたら、女神さまが特別に何かしたのかもしれない。
「明日も何件かまわろうか」
意外と皆優しくて、怒っている人はいなかった。あと何件かまわったら、教会の治療を再開しても良いかな。落ち着いてきたら、教会の近くに良い物件を探しに行こう。
「「あ~っ!」」
突然アリスが叫んだ。
「明日悪いけど、一人で行って来てくれないかな。教会の諸々の仕事やってなかったから、やらないとまずいわ」
ぼくの知らない教会のお仕事があったようで・・。そういえば、何日も教会を空けていたものな・・畑も放りっぱなしだったし・・。最近はアリスがいつも付いてきているので当たり前になっていた。一緒にいても特にやる事はないのだけど。
「そっか。アリスも頑張ってね」
治療のお仕事は問題ない。ただ一人で移動か・・。王城でロイドさんに、命を狙われているのなら複数で行動していた方が良いと言われていたのだ。
「まさか、昼間だし襲ってこないと思うけど・・」
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