第21話 最後の襲撃

「これで最後か・・」


キャンセルをしたお客様の所に一通りまわって残り一件。無料で治療するとみんな喜んでくれた。こちらが悪かったのだから、仕方ない事だ。明日から通常営業できるかな。アリスの教会も信者さんよりも治療に来るお客様の方が多くて、嘆いていたっけ。借りる家も探さないといけないしな。


コンコン


お客様の家のドアを叩いたが応答がない。留守かな?また後で来てみることにするか。ぼくは教会に戻ることにした。


「グリーンさんですか?」


フードを被った幼い少女に呼び止められる。まだ、5、6歳位だろうか。


「うん。そうだけど」


「あっちの大人が話したいことがあるって・・」


袖をひっぱられ、裏の路地に引っ張られた。


「ほら、金だ」


少女は黒いフードを被った男から、銀貨を受け取って足早に去っていった。




「あの時殺したと思ったんだが・・旦那がうるさいのでね。悪く思うなよ」


気が付くと、黒いフードの男はぼくの脇腹にナイフを突き刺していた。動作が早すぎて避けられなかった。


「え?」


何か当たっている感覚はあるが、痛くない。というか傷もついていない。


「防具でも着ていたか・・ではこれはどうだ!」


正面から拳で頭を殴られた。思わず目をつぶる。恐る恐る目を開けると、驚愕した男の表情。ぼくは痛くもかゆくも無かった。


「どうなってんだ。確かに気絶くらいは、するはずだが・・」


男は自分の拳を見つめていた。

ステータス 防御魔法 障壁 レベルSのお陰だろう。仕組みはよく分からないが、ぼくを傷つけることは出来ないみたいだ。今度は近くにあったブロックを持ち上げる。


「いくらなんでも、効くだろう」


バリン!


ブロックをぼくの頭に、思い切り叩きつけた。壊れたのはブロックのほうだった。やっぱり。


「うわああああああ・・こいつ、やべえ・・」


男が顔面蒼白になって逃げようとしたので、捕まえてそのまま町の自警団に連れて行った。


「殺されかけました」


ぼくは自警団の人に正直に言ったのだが、信じてもらえなかった。


「た、助けてくれ・・こいつ殴っても死なないんだ・・」


男が正直に話し、自警団も信じざるを得なったようでようやく捕まった。どうやら男は、隣町ミルドスの治療院で雇われてぼくを殺しに来たらしい。首謀者のリグルスは捕まり、同時に治療院も潰れてしまった。自業自得だと思うけど。



*****



余は謁見の間で玉座に座っている。ガラ町から荷馬車で、治療院の院長リグルスが衛兵に連れられて来た。グリーンを殺害しようとしていたらしい。


「わしは、わしは何もしていない・・」


リグルスは証拠があるにも関わらず、否定をしてきた。顔面蒼白になりながら、言い訳をしている。


「だ、だいたい人を救う治療院が人を殺すなんてするはずないじゃないか」


よくもまあ、抜け抜けと言うものだ。悪人とはこういう人物をいうのだろう。調べたら余罪が出るわ出るわ・・どうやら初めてでは無いらしい。グリーン以外にも、気に入らない人物がいると同様の事をしていたようなのだ。


「治療院が人殺しなど、あってはならないことですわね。お父様、グリーンを殺そうとしたのですよ?重い刑をお願いしますわね」


普段温厚な娘が冷たく言い放つ。グリーンを殺そうとしたのが余程腹立たしいのだろう。誠意を見せれば少しは罪状も変わってくるだろうが、反省の余地は無いようだ。


「そういう事だ、リグルス観念しろ。この者は、地下牢にでも入れておけ」


がっくりとリグルスは肩を落としていた。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る