第19話 王女の想い

レーベン王城、王女は去っていく馬車をバルコニーから眺めていた。


「グリーン、帰ってしまいましたわ・・お父様も酷い、上手くいくと思っていたのに・・もう会えないのかしら」


「これで良かったのだと思いますよ」


正直俺はほっとしていた。顔には出さないようにしているが、内心はハラハラしていたのだ。なにせ俺は王女に惚れていて変な虫は付けたくないのだ。でも俺が王女と結ばれる可能性はほとんど無いのだけど。


「ロイド、またグリーンに会えるかしら?」


「特に会ってはいけないと言われたわけではないですよね。問題ないかと思われます」


俺はいつもの様に顔色一つ変えずに答える。王女は、雲一つ無い青空を眺めていた。




*****




「二人で町に来るのは久しぶりだね」


ガラ町の中心街。ぼくはアリスとお洒落なカフェで食事をしていた。町に来てしばらく経つけど、こんなお店に来たのは初めてだった。ボックス席で、向かい合わせで座っている。


「本当に久しぶりだわ。夢でも見ていたみたいね」


アリスはそう言うとテーブル上の果実水をストローで飲んでいた。小さい口でくわえる姿はリスみたいで可愛い。


「今日のグリーンはご機嫌ね」


アリスはぼくを見て微笑んでいた。


「え?そうかな」


ぼくは自然と笑顔になっているようだ。気持ちが高揚してドキドキしている。今までずっと一緒にいたというのに。



「ねえ、何かさっきから誰かに見られている気がするんだけど気のせいかしら・・」


「え?・・そうなの?」


アリスに言われて初めて気が付いた。今日のぼくは、浮かれていてどうかしているな。周りの事が気にならなくなっているみたいだった。しっかりしないと。


「グリーン、以前キャンセルしたお客さんの所へ一度見に行った方が良いと思うんだけど。あれから随分経っているから」


怪我をして休んで・・あれから、だいぶ日数が経っている。最近バタバタしていたから忘れていたけど、お客様には急にキャンセルしちゃってとても悪い事をしたな。


「謝った方が良いよね・・それと」


ぼくはアリスと相談をして、予約をキャンセルしてしまったお客様に会いに行くことにした。



**



コンコン


ドアをノックした。一件目。きっと怒っているだろうな。ぼくはそう思っていたのだけど。


「こんにちは。この前は申し訳ありませんでした・・」


「あれ、グリーンさんじゃないかい。帰って来たんだね。ほらほら上がって」


少し腰の曲がった、年配のお婆さんだ。


「あの時は、びっくりしたけども。怪我しちゃ仕方あるまいよ。そういう事もあるさね。え?わたしかい?少し痛いけどもう治りかけてるよ」


ぼくはお婆さんの足に手をかざした。


『癒しの女神よ我に力を与えたまえ・・ヒール』


「おお~。足が軽くなったねぇ。さすがグリーンさんだよ」


「お金は今回は要らないです。こちらの都合で断ってしまったので・・あ、そういば最近何か町で変わったことがありましたか?」


ぼくはお婆さんに、町の事を聞いてみることにした。


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