第18話 帰郷

「パトリシアの様子が変だと言うから来てみれば・・お客人が困っているだろう・・よく考えてから行動しなさい」


低く貫禄のある声が部屋に響き渡った。扉の入口に銀髪の壮年の男性が立っている。頭に王冠があり、白い上質なローブを羽織っている。


「お父様・・」


「お前は、すぐ周りが見えなくなる悪い癖がある。誰に似たのやら・・パトリシア部屋に戻りなさい」


「はい。申し訳ありません」


項垂うなだれて、王女は部屋を出て行った。ロイドも一緒に付いていく。



「王様!」


ぼくは慌てて、頭を下げた。


「頭を上げてくれ、余の娘を助けてくれたそうだな。感謝している・・それと今まで娘のわがままに付き合わせてすまなかったな」


「お詫びと言ってはなんだが・・きみは町の人々を治療しているそうではないか。ぜひ役立てて欲しい」


王様の従者がトレーをぼくの前に差し出した。革袋が乗っており、中には金貨が入っていた。


「少ないが、良かったら受け取ってくれないか」


「有難うございます。是非治療に使わせていただきます」


ぼくは深々と頭を下げた。




*****




「グリーンどうしたの?」


帰りの馬車の中で物思いにふけっていると、アリスから声をかけられた。王女からの告白。もし受け入れていたら今頃どうなっていただろう。そんな思いが頭をよぎった。


「何でもないよ・・」


アリスには余分なことは言いたくない。変に心配させそうな気がするから。5日かけてようやくガラ町に戻ってきた。何年も離れていたような、懐かしい不思議な感覚だ。


帰ってきて、ぼくは寝室のベッドに寝転んだ。


「グリーン?」


アリスがぼくの隣にいて、ベッドに腰かけていた。


「あ、ごめん、何でもないよ気にしないで」


「別に謝る事無いけど、最近変なの。いつも私の顔見てない?」


「え?そうかな」


「うん。それに何だかぼーっとしているみたいだし・・」


自覚はあった。気が付くと自然と目で追ってしまっているからだ。




「ああ、そうだ」


ぼくは起きて、王様から貰った革袋を開けて確認してみた。金貨が100枚入っていて、しばらく働かなくても十分に暮らしていける金額だ。でも折角なので、考えていたことをやってみようと思った。


「凄い金額ね・・」


「これでテナント付きの家を借りようかなって考えてる。流石に最近は手狭だからね。いつまでも間借りしているのも悪いし」


「そんな、気にしないで良いのに」


「実は、教会の近くの場所を借りようと思っているんだ」


数日前、王女の告白を聞いて動揺したけれど、それだけだ。ぼくは平民だしそもそも身分が違いすぎるからね。凄くキレイな人だとは思うけど。


どちらかと言うと、ぼくが今一緒に居たいのはアリスだから。



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