第12話 突然の来訪
ドンドン!
「おい。誰かいるか!」
乱暴に扉を叩き、聞き覚えのある中年男性の声が教会内に響いた。薄汚い顔を見て、ぼくはげんなりする。今更何をしに来たんだろう。
「叔父さん、何か用?」
「ちょっと助けてもらいたくてな・・最近かなり儲けているらしいじゃないか」
この顔はあれだ。お金をせびりに来たに違いない。祖父の財産があるだろうに、いったいどうしたんだろう。相変わらず汚い恰好をしているし。
「ぼくは村から追い出されたので必要ないんですよね?」
「あの時は悪かった。俺がどうかしてた。謝るから許してくれないか」
手を合わせて謝っているように見える。多分、本心じゃないだろうな。
「誰か来たの?」
新緑色のワンピースを着たアリスが顔を
「アリス、この人追い返すからちょっと待ってて」
「ちょ、追い返すってそれはあんまりじゃ・・血のつながった親族に向かって・・」
「ぼくは追い出されましたけど?それにこれから出掛けるので、お引き取り下さい」
ガタガタ・・。
王城からの迎えの馬車が、教会の前に到着した。馬車のいたるところに金の装飾が施されていて立派なつくりをしている。
「すみません。すぐ支度します。待っていてください」
ぼくは御者に声をかけた。
「高そうな馬車だ、あの紋章は王族の・・迎えって、いったいどうなってるんだ?」
ぼくは叔父を無視し、教会の奥の部屋に入った。直ぐに着替えないといけないからだ。
「出かけるときにお客様なんて、一体誰だったの?」
馬車はレーベン王城に向かっていた。ガラ町を出て、窓の外の景色は畑が続いている。馬車の中は、ぼくとアリスの二人きりだ。服装を新調しぼくは背広を、アリスはドレスを着こんでいた。王城までは馬車で5日かかるが、宿代も王城持ちらしい。気前が良いな。
「最初の頃に言っていた・・家を追い出した人だよ」
ぼくは顔を思い出し、嫌な気分になった。
「え~っ。なに今更来てるのかしら?」
「さあ?聞かないで来ちゃったからな。聞く必要ないんじゃないか」
*****
教会の扉には、張り紙が張られていた。『しばらく休業いたします』
オレは
グリーンを家から追い出して、村に住み始めたが上手くいかなかった。肝心の金がどこにあるのかわからなかったのだ。兄のリーデルはやり手で病気で死んだが、村人からの信頼は厚かったらしい。村長の息子を追い出したことがわかると、村人たちの態度はますます冷たくなった。
グリーンを村に戻せば、村民の態度も和らぐであろう。金のありかも知っているに違いなかった。あの時は頭に血が上って、追い出してしまったが・・。
「しかし・・王城とは・・そうだ!」
オレはある事を思いついた。今度は、きっとうまくいくに違いない。口元が自然に緩んでいた。早速準備するべく村に戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます