今、都内のマンションの95階にいます。

今、都内のマンションの95階にいます

「今、都内のマンションの95階にいるんだけどｗｗｗｗｗｗｗ」

　オレの掲示板の書き込みにみんなが食い付いた。

『東京に95階建てのマンションなんかねぇよ。今は建設中の新宿の60階のが最高層だ』

「だろうなｗｗｗｗｗｗだって都内だけど、海外の都内だもんｗｗｗｗｗ」

『海外の都内とはｗｗｗｗｗｗｗｗ？？』

「いつ今オレが日本にいるって言ったよにわかｗｗｗｗ」

『95階以上のマンションがある場所はドバイにしかねぇし、首都じゃねぇよボケ』

『嘘松乙ｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗｗ』

　………………

「……ふぅ。さて、どうしたもんかね」

　スマホを切ったオレは、凄まじい速度で迫ってくる海面を見て悟った。

　あ、これ死んだな。――と。

　頼りないパラシュートで落ちてく中、海と空だけは無駄に綺麗だった。

「スマホも圏外になっちゃったし、いよいよヤバイかな」

　直前まで映っていた標高アプリによると、ここは地上から約285メートル。

　――マンションの高さにして95階に匹敵する高度だ。

「うん、オワタ」

　なんでこうなったのかというと、元々スカイダイビングのために飛行機に乗っていた時のこと――

『よォお前ら、もう少しでダイビング地点だ』

『ひゃっほーぅ！！』

　みんなで盛り上がってたその時、飛行機のドアが空いたんだ。

『あ！　すまねぇ、間違ってドアロックを――』

『ダイビング最高だ……え？』

『あ』

　やっちゃった。早とちりして、めちゃくちゃ早い段階で飛び降りちゃった。

『ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！！！！！？？？？？？』

　――その後にすぐパラシュート開いたせいで、飛んでもないところまで風で流されちゃいました。

　気が付けば東京から太平洋側のすんごいとこまで飛ばされた。

　今の時期、風の影響や気温の関係で上昇気流が発生してるとのこと。おかげでこんな遠くまで来ちゃいました。なんか向こうの方に大都会が見える。

「ところであれ、アメリカとオーストラリアのどっちだろ？」

　都内？　首都？　それとも別のとこかな。今の高さと同じぐらい高そうなビルばっか見える。

　まあどれでもいっか。頑張ってもあそこまで飛んでけないや。

「……うん、海まっしぐら」

　あーヤバい。落下の勢いついてきた。海面に叩きつけられんのも時間の問題だわ。ま、しゃーない。

「こうなったら落っこちるまで暇だし、次のスレでも考えてるか。次のは……」

　――――今、都内のマンションの90階相当の高さにいます。