電車の窓

時無ロロ

電車の窓

 電車の窓から流れていく景色は良いものだ。と、帰省の度に考えている。


 片手で数えられるだけしか人がいない電車の中、向かい側の窓をぼんやり眺める。遠目に見える住宅街が、テンポよく様々な家に移り変わっていく。長年家族を守っているのが伺える和の風貌こ家もあれば、真新しいツートンカラーの壁の家も見える。飽きることがない。


 ゆっくり停車した後、プシュと音を立てて扉が開く。誰も乗り降りしないまま閉じられ、また走り出す。

 もう少し田舎の地域に入り、生い茂った植物が窓の外で流れる。電車との距離が近いせいで、それはもう猛スピードで流れていく。色で植物だと判断できているだけで、最早、線だ。電車が走る音、揺れる音、それらと合わさる植物の線は、どことなく趣を感じて面白い。


 何度も扉の開閉音を聴いていると、炭酸飲料が入ったペットボトルの蓋を開ける音と似ている、なんて気がしてくる。小気味良い破裂音が混じっているところなんかが、共通している。


 また扉が開き、閉まり、電車が動き出す。植物の線が生まれるのを心地良い気持ちで眺めて、気付いた。あ、乗り過ごした。

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電車の窓 時無ロロ @tokimuroro

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