第6話 神様
言われるがままにリンネの方にまわる。
「じゃあ、
ゆったりとした口調でそう言われ、俺は鏡に目を向けた。
そこに映っていたのは相変わらずイケメンな俺。
──そして、どことなくリンネに雰囲気が似ているおっぱいの大きいお姉さん。
しかし、腕はリンネの木でできた
リンネはたれ目だが、鏡の中の女の人はつり目で気の強そうな顔をしている。
「このサオトメさんの隣に映ってるの、自分なんよ」
「えっ、これがリンネなのか?」
「モチヅキさん、な?」
「あ、ごめん、これは本当にモチヅキさん?──腕、あるけど」
「あっはは、あけすけ。そうやね、これは間違いなく自分だよ。もっと正確に言うと自分の魂やねぇ」
あ、あとモチヅキさんって呼べってのは冗談やから。みんなリンネって呼んでるよぉ。と、くすくすと笑いながら付け加えられる。
「食えない女」ってリンネみたいな人のことを言うんだろうな、とふと思った。
「この鏡は人の魂を映すんだよ。生まれたばかりの赤ん坊は別として、ニンゲンの実体の形と魂の形は別のものになるの。実際の容姿と魂がぴったり一致するのはカミサマだけ」
いつのまにか、さっき俺が座っていた方に移動していたエマが教えてくれる。
そういえば、ずっと鏡を避けるように動いているような気がするな。
俺に魂を見られるのが嫌だからなのだろうか。
エマが言うには、この国──
ニンゲン、オニ、そしてカミサマ。
とは言ってもカミサマは希少な種族で、腑西の外の国を見渡しても、俺を含めて3人しかいないようだ。なんなら腑西のカミサマは俺1人らしい。
「他の国か。どんなところがあるんだ?」
「腑北、腑東、腑中、腑南。そしてここ。この5つの国で全部やねぇ」
「リンネ、もうちょっと詳しく説明してあげたほうがいいんじゃない?ユズルさんって転生者でしょ、まだ分かってないことも多いだろうし」
「えっ、いや、俺は……」
思わず口ごもってしまう。転生者だとばれないようにしようと考えていたのに、無知をさらしすぎてしまっていたか。
「大丈夫だからねぇ、転生者だからって自分らがサオトメさんをいじめるようなことはしないから」
にこにこと笑うリンネ。どうやらお見通しだったようだ。
リンネもエマも悪人ではなさそうだし、ここで嘘をついても効果がない気がするし、もう認めてしまうしかないか。
「あぁ、そうだな。俺は元はこの世界の住人じゃない、と思う。色々あって自殺して、ここに来た」
「だよねぇ。カミサマの多くは異世界人やし。──うーん、国の話はまた今度にして、とりあえずサオトメさんにはどんな能力が発芽しているか聞こうか」
「能力の……発芽?」
「能力っていうのは、カミサマ全員と、その他の種族の一部が持ってる魔法みたいなもののことだよ。炎を出すとか、そんな感じ」
「自分らもその一部に入るんよぉ。エマは雷を操れるし、自分は時の流れを遅くすることができる」
なんでも、リンネやエマほどの能力を持つ者は全世界を見渡してもほんの少数だそう。
俺、もしかして今かなりすごい奴らと喋ってる?しかも美少女、美女だ。
「じゃあ発芽は?」
「───────────発芽っていうのは、それが使えるようになること」
長い沈黙のあと、エマがぽつりと答え、目を伏せた。
リンネの笑顔も一瞬だが崩れ、痛みをこらえるような表情になる。
とまどったのが顔に出てしまったのだろう。
エマが、あんまり気持ちのいい話じゃないんだけど、と前置きをして話し始めた。
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