第7話 発芽

「発芽には条件があるの」


途中、言葉をつまらせながらエマが話した内容をまとめると、こんな感じになる。


そもそも、カミサマ以外の種族の場合は発芽をするのは「種」を持つ者だけで、1万分の1ぐらいの割合でしか生まれてこない。知能が発達している上位種族はこの世界に800万強いるので、だいたい800人ぐらい。


一方カミサマは、全員が複数個の、発芽後の能力(上級スキルみたいなものらしい)を生まれながらに持つ。


その他の種族については、発芽前の種を持っている段階でも「ギフト」と呼ばれる便利な低級スキルを持っているが、発芽するとそれとは比べ物にならないほど強い上級スキルを手に入れる。


そのための条件はただひとつ。

大切な人を目の前で殺され、絶望すること。


種を持って生まれた時点で、このイベントが起こることは確定しているという。

ただ、自分も一緒に殺されてしまう場合が多いため、発芽が済んでいる者は極端に少ない。


「それってつまり、エマも、リンネも……」

「うん。わたしは……」


さらに悲痛な顔になったエマに、この質問はダメだったと反省した。

何やってるんだ、俺は……。

喋れなくなったエマをかばうように、リンネが俺の前に立つ。


「聞くまでもないんに、嫌な確認してくれるねぇ」

「ごめん、リンネ。エマも……さすがに配慮がなかった。俺が完全に悪い」

「自分はもうええけど、エマなんかまだ発芽からそこまでたってないんよ。ごめんなさいで済む問題でもない」

「……」


弁解の余地もない。同じ苦しみを持つ少女を傷つけてしまった。

姉が自殺した時の絶望感は、まだ俺のこころの奥に深く刻まれているのに。

下を向いた俺に、


「自分も言い過ぎやったねぇ、ごめん。いったん、この施設の中を案内するわぁ。この話はまた」


すこしばつが悪そうに言いかけたリンネの話を


「──リンネ。大丈夫だから」


背後の少女がさえぎった。


「なんとなくだけど、ユズルさんは大丈夫な気がする。話すよ。上手に話せるか分からないけど」

「エマ!」

「いいの。カミサマには全部話して、わたしたちの味方になってもらわなきゃでしょ」


とぎれとぎれで、ときどき涙ぐみながら、それでもエマは最後まで話しきった。

エマの、たった1人の親族だった姉の話。そして、昔のエマについての話。

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