第5話 紫操
俺はエマと女__モチヅキ・リンネに案内され、小さな応接間にやってきた。
リンネは戦闘で両腕を失ったらしい。木で作った義手があれば、魔法で本物の腕のように扱えるのでなんとかなっているのだという。
戦闘とはどういうものだったのか聞いてみたが、お茶を濁されてしまった。
見た感じは20代半ばぐらい。よく見てみれば美人だし、スタイルもいい。
「リンネ、鍵と防音の確認終わったよ」
エマが笑顔でリンネに報告をしている。
髪はエマが水色、リンネは薄紫で全然違うし、顔立ちも似ていないのでたぶん血は繋がっていないと思うのだが、本物の姉妹さながらだ。
「ありがとぉ。じゃ、サオトメさん、本題に移ってもいいかな?」
「ああ。俺が神様って、どういうことだ?」
「そうやねぇ。エマ、
「えっ、あれ?…分かった」
少し気乗りがしない、といった感じの声で返事をして、エマが小さな鏡をタンスから取り出し、リンネに渡した。
ぐい、っと押し付けられた鏡に俺の顔が映る。うーん、この顔にはまだ慣れないな。美形すぎて俺だと認識できない。
「そこに、何が映っているか教えてくれはる?」
「さっき別の鏡で見たのと同じ……青い髪の男だけど」
以前の俺とは別の姿だということは言わないでおく。
ここが転生者に優しい場所なのかも、まだ分からないからな。
エマがびっくりしたような顔をして、リンネと顔を見合わせている。
こくり。エマにむかってリンネがうなずいた。
「じゃあやっぱり、サオトメさんはカミサマやねぇ。カミサマ以外の者はこの鏡に実体と違うモノが投影されるんだよねぇ。サオトメさんは自分の外見そのままの姿が映ったんやろ?」
「っと……。つまりどういうことだ?違うものが投影されるって?てかそもそも神って何なんだ?」
頭の中がハテナでいっぱいだ。
リンネが困った子供を見るような目で俺を見てきた。ひどい話である。
これ、この世界では常識なのかもしれないな。だとしたら分かったふりをしていた方が良かったか。
そういえば前世でも、学校に行けなくなる前は向こうみずな言動で損しまくってたな……とつい遠い目になってしまった。
「じゃあサオトメさん、自分の方に来てくれる?」
ちょっと迷った風だったリンネが、いいことを思いついたとばかりに俺を呼んだ。
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