第6話「鷹とスカーフと掴めなかった手」
「なっ!?」
「今だ!」
ドンッ!
「グハァ!」
ユイアは鷹のメモリスを見上げ驚く向の腹に蹴りを入れ、向は腹を抑えその場に倒れてしまう。その際に手から落とした銃を瞬時にユキタカが2丁共回収した。
「よくやった!」
室内に入ってきた鷹のメモリスは室内で飛び回り絵画や壺を割っていく。それをユキタカから銃を受け取ったレーテの隊員達が鷹のメモリスに撃ち始めた。ユイアはすぐにドライバーが入ったバッグを置いた場所まで向かうとバッグからドライバーを取り出し腰に装着する。辺りを見渡してみると向と麗奈の姿がない。
「待って!麗奈ちゃんがいない!」
「何!」
「おい!向もいないぜ!」
ユキタカとダンも探し始める。するとドアが僅かに動いていることにルナが気がついた。
「部屋から出たのか!」
鷹のメモリスは隊員達に任せ、ルナとユキタカとダンとユイアはドアの向こう側の廊下に出た。廊下には麗奈の口元を押さえながら逃亡を図ろうとする向の姿があった。麗奈は泣きながら足などをバタバタと動かし抵抗をしていた。
「麗奈ちゃん!」
「向!」
「チッ......バレたか!」
向は麗奈を人質にとりながらエレベーターに向かって走り出す。4人も追いかけようと走り出したその時だ。
「うわ!なにこれ!」
「おいおい....なんでランプや絵画が浮いてるんだよ!」
廊下に飾ってあった絵画やランプが浮き始め3人に向かって投げ飛ばされていく。3人はなんとかそれを避けるも次は割れた絵画のガラスが飛んできた。
「痛ッ!」
「ユイア!」
ユイアはそれを避けるもガラスが頬をかすってしまい切り傷から血が出てきた。
「日代!」
(痛い.......なんで物が勝手に動いているの?鷹のメモリスの能力だとは考えられない。)
ユイアは必死に考えた。この状況、ダンから見せてもらった麗奈の母親が殺害された時のカメラの映像、周りの住民達、壊されたベランダ。そしてその全てがある仮説に繋がった。
「大丈夫か日代。」
「またくるぞ!」
再び物が浮かび始める。ユイアは目を開くとすぐに落ちてあったガラスの大きな破片を浮かび始めた物の下の空間に思いっきり投げつけた。
「ここだ!」
グサッ!
投げつけた大きなガラスの破片は空中で何かに刺さると緑色の爬虫類の姿をした怪物の姿が現れた。
「グエェえー!」
「なんだコイツ!!」
「何バレてやがるんだテメェ!!」
奥でエレベーターを待っていた向がこちらを振り返った。緑色の爬虫類のようなメモリスは天井に張り付きながら向の方に動き始めた。
「やっともやもやが晴れた......杉山刑事からカメラの映像を見せてもらった時おかしいと思ってたんだ!だって本当に鷹のメモリスを使ってベランダから侵入したならその間に近所にいたご婦人達や下校中の小学生達が目撃していないわけがない!」
「確かにあの大きさなら目撃してねぇ方がおかしいよな。」
「それに庭の防犯カメラにも鷹のメモリスの動く影も映ってなかったし羽も落ちてなかった。だから貴方のメモリスは鷹のメモリスじゃなくて貴方の後ろにいるカメレオンの方!」
「くそっ......おい!カメレオン!やっちまえ!」
「グェゲゲげげゲ!」
カメレオンのメモリスは長い舌を出しながら天井を張り付きなからユイア達の方へ向かってくる。
ユイアはスカートのポケットからカセットを取り出してドライバーに装填する。装填すると同時に出現した後ろの画面からピンク色のヒーローが飛び出し、天井に張り付いたカメレオンのメモリスに攻撃を始めた。
ドン!ドンドン!
「グェ!」
3!
2!
1!
「変身!」
ヒーローアップ!
アーマーがバラバラになりユイアの身体にそれぞれ装着され最後に顔の黒い複眼がピンク色に変化していった。カメレオンのメモリスは攻撃を受け怯んでいるのか舌を出しながら身体を震わせている。
You are HERO!!
「テンション上げていくよ!」
ユーアがカメレオンのメモリスを倒すために走り出したその時だ。向の後ろに黒い大きな穴が出現しそこから身体中に人間の骨がくっついたおぞましい姿をしたメモリスが現れた。
「なっなに!?」
「気をつけろユーア!アイツはメモリスの幹部だ!」
「かっ幹部!?!」
「お初にお目にかかります私の名はゴースト。以後お見知りおきを.........」
ゴーストと名乗るメモリスは深くお辞儀すると指をパチンと鳴らした。するとゴーストの周りを飛んでいた緑色の人魂が分散しそこから十数体の黒いフード姿の怪人が出現した。
「ストレイズ.....これは私からささやかな贈り物です。さぁ向様、この穴を使ってお逃げてください。貴方のカメレオンの力は我々に必要ですからね。」
「おぉ助かるぜ。おいいくぞ!カメレオン!この娘には「あの場所」で死んでもらわねぇとな!」
「グェぐえ!」
「フィぃいいア!」
奥の部屋からレーテの隊員達による攻撃を受け、傷だらけの鷹のメモリスが廊下にやってきた。ユーア達に目もくれず向に向かってボロボロの翼を使って飛んでいく。
「ひぃ!」
「邪魔ですよ。」
鷹のメモリスが向の目の前に来た瞬間にゴーストは向の前に立ち鷹のメモリスの首をぎゅっと掴んだ。鷹のメモリスの首はどんどん絞められていき必死に羽をバタバタと動かした。鷹のメモリスは残った力で口から赤い炎を吐くがすぐに消されてしまう。
「使えないメモリスは私には必要ありません。」
そう言い放つとゴーストの手のひらから緑色の炎が勢いよく溢れ出し鷹のメモリスの全身を包んだ。
「フィイィイイアァああああ!!!!」
ゴーストは焼かれ続けている鷹のメモリスを壁に向かって投げ捨てた。壁にぶつかり鷹のメモリスは力無く倒れる。ゴーストは黒い穴を広げ、穴の中に入っていく。鷹のメモリスは怯える麗奈を見つめながらくちばしを僅かに動かした。
「わタ....シ....がアナたを....守.....ル。」
「え、」
ユーアはドライバーのホイールを回転させ両足にピンク色の雷のようなオーラを纏うとゴースト達に向かって走り出した。
「お姉ちゃん!」
麗奈が泣きながらユーアに手を伸ばす。
「麗奈ちゃん!」
ユーアはその手を取ろうとしたが麗奈を人質にとった向とカメレオンのメモリスとゴーストが黒い穴の中に入った瞬間に穴は消えてしまった。
「麗奈....ちゃん.......」
「くそ!逃げられた!」
ユキタカは腰から抜刀した刀を使ってゴーストが生み出した黒いフードをした人の形をした怪人と戦う。遅れてやってきた隊員達も銃などの武器で攻撃し始める。メモリス達はお互いの身体の中に手を突っ込みナイフ形状の武器を取り出した。
「おい!武器取り出したぞ!どうするんだユキタカ!」
「俺に任せろ。」
ダンも最初は所持していた拳銃を取り出して怪人達を撃っていたがすぐに弾丸がなくなったのかユキタカの後ろに行ってしまった。ユキタカは刀の持ち手にあるボタンを押し装填されていた青いメモリカセットを刀から抜いた。
必殺待機!
刀から和風な曲が流れ始め、再び刀に青いメモリカセットを装填すると同時に刀の刀身が青い雷状のオーラを纏い始めた。ユキタカは刀を構える。
「剣心一閃!」
ユキタカは強く踏み込み刀の持ち手のボタンを押す。押した瞬間にユキタカは加速し一瞬でメモリス達を切り倒していく。
ズバ!ズバズバズバズバ!!!!!
ズバァァァァァ!!!
剣心一心斬り!!
「すっすげぇ.......あの数を1人で切り倒したさすが隊長さんだぜ。」
「はぁ...はぁ....やはり生身だと必殺の反動が心臓にくる......俺も鍛え直しだな。」
ユーアはカセットをドライバーから抜き、変身を解除すると鷹のメモリスに近づいた。身体を包んでいた炎は消えていたが身体は消滅しかけている。
「このメモリスまだ息があるぜ。どうする倒すか?」
「いや、このメモリスはすぐに消えちゃうよ......貴方...もしかして麗奈ちゃんのお母さんのメモリスなの?」
「レイ...な...れイナ.....」
ユイアは麗奈が見せてくれた写真に写った母親が巻いていたスカーフを思い出す。そのスカーフと同じスカーフを鷹のメモリスは巻いていた。
「やっぱり.........ずっと麗奈ちゃんを追ってたのって麗奈ちゃんを狙ってたんじゃなくて守ろうとしてたんだ。それなのに.....ごめんね...倒そうとしちゃって......ごめんね....麗奈ちゃんの手を掴めなくて......」
ユイアは少し涙を流しながら鷹のメモリスの羽をぎゅっと優しく掴んだ。鷹のメモリスはユイアの方を向き消滅する瞬間に口を開いた。
「レイ...ナを救け...て......」
そのまま鷹のメモリスは消滅し赤いメモリカセットがことんと床に落ちた。その様子を見たユキタカとダンはユイアのそばにやってきた。
「メモリスは宿主の記憶を共有している。大切な娘を守りたいという意志を母親から受け継いでいたんだな。」
「絶対救ける.......麗奈ちゃんを...絶対に!」
ユイアは鷹のメモリスが落とした赤いメモリカセットを拾い上げ、強く握りしめる。そこに傷だらけの隊員が少し怪我をした麗奈の父親を連れてやってきた。
「...先ほどスマホに向からメールが来ました。」
麗奈の父親はスマホの画面を全員に見せた。
明日の正午この場所の屋上で待つ
要求は2つ
一億円を用意する事と火野グループの社長であるお前がここに来ることだ
そうすればお前の大切な娘を返してやる
メールの最後には一枚の20階建てのビルの写真が写っていた。
「この写真に写っているビルは?」
「火野グループの前のオフィスビルです。事業拡大と共に10年ほど前に今の本社に変わりました。一億円は用意してみせます。みなさん.....どうか私の娘を!」
「明日の正午.......分かりました。任せてください絶対に麗奈ちゃんを救います!」
ユイアは力強くそう言い放った。麗奈の父親は泣きながら何度も頭を下げた。
「なぁユイアそのメモリカセット貸してくれないか?」
ルナはユイアの前にやってきてユイアが握っている赤いメモリカセットを見た。
「え、どうするの?」
「私を信じろ。麗奈ちゃん救けたいんだろ?」
「うん......ルナを信じる。」
そう言ってユイアは赤いメモリカセットをルナに手渡した。
「待ってて麗奈ちゃん.......」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます