第59話 ラブメーター

『ラブメーターが更新されました。今すぐチェックしよう!』


「こ、これどういうこと?」


朝ご飯を食べて制服に着替えていた時、キューピッドの通知が来てたので開いてみたらラブメータの項目が増えていた。


 メイド服を着た女性のイラスト ピンク色のハート 120/100


 赤いリボンを付けた女性のイラスト 少し黒みがかったピンク色のハート 120/100


 長い黒髪の女性のイラスト ピンク色のハート 120/100


 銀色ショートカットの女性のイラスト ピンク色のハート 110/100


 金髪ハーフアップの女性のイラスト 少し黒みがかったピンク色のハート       110/100


「こ、これって葵さんと結愛ちゃん?いつの間にこんな増えたんだ?」


さすがに偶然この項目が出てきたとは思えない。

前々から思っていたけどこのアプリは一体何なんだ?


「やっぱり危ない物なのかな?なんか怖いし、もうこのアプリは俺には必要ない。アプリ消そうかな」


俺はキューピッドを長押しして、×ボタンを押す。


『このアプリを消去しますか?はい・いいえ』


迷わず「はい」を押す。


『もしこのアプリを消した場合、この世界からあなたの存在が消え、元の世界に戻りますがそれでもよろしいですか?はい・いいえ』


俺は急に画面に表示された文字を見て、体がブルリと震える。

思わずいいえを押すと、元のホーム画面に戻った。


この世界からあなたの存在が消える?

俺がこの貞操逆転世界に来たのはこのアプリをダウンロードした直後だ。

つまり俺がこの世界に来れたのはこのアプリのおかげってことか?


「……」


もし本当にキューピッドを消して、元の世界に戻り恋人達に会えなくなってしまうと思うと怖くて消せなかった。


「せめて通知だけでも切っておくか」


俺はスマホの設定画面からキューピッドの通知をオフにする。


「蒼太君!そろそろ学校行きますよー!」


部屋の外から岬姉ちゃんの声が聞こえた。


「分かった!今行くよ!」


俺はネクタイを締めて、鞄を持つ。


「元の世界には戻らない。俺はこの世界で幸せになるよ」


そう呟いて自分の部屋を開ける。



「やあ、おはよう。岬、蒼太様」


「お、おはようございます。葵さん」


校門の前で首輪をつけた葵さんが笑顔で話しかけてきた。

俺は戸惑いながら岬姉ちゃんを見る。


「葵、分かってますか?」


「ああ、もちろん。迷惑かけるような事はしない」


「そうですか……。では蒼太君、私は生徒会の用事があるので先行きますね」


「えっ!?み、岬姉ちゃん?」


「大丈夫ですよ。葵は心を入れ替えたみたいですよ」


「ああ、その通りだよ。そんなに警戒しなくても大丈夫だ」


それだけ言うと岬姉ちゃんは俺を置いて、校舎の方に歩いて行ってしまった。


「蒼太様、今日はいい朝だね」


「そ、そうですね」


俺は警戒しながら葵さんと話す。

前回は変な薬を飲まされたからな……俺も気を付けないと。


「ふふっ、そんなに警戒しないでくれ。ところで蒼太様は好きな食べ物とかあるのかい?」


「え?好きな食べ物ですか?う~ん、ハンバーグとかですかね?」


岬姉ちゃんが作るハンバーグが最高に美味しいんだよな~。

今度また作ってもらおう。


「そうか!実は美味しいハンバーグを出す店を知っていてね。良かったら今度一緒に行かないか?」


「行きたい気持ちはあるんですけど、岬姉ちゃんがなんて言うか……」


「岬にはあらかじめ許可は取ってあるから大丈夫だ。蒼太様次第だな」


さっきの動きを見るに岬姉ちゃんは俺と葵さんが仲良くなるのはオッケーって事なのかな?


「じゃあ行きましょう!」


ちょっと変な人だけど、こんなに美人に誘われて断る理由はない。


「ふふっ、そうか!では連絡先交換しよう!」


「ええ、いいですよ」


俺はチャットアプリのQRコードをスマホに表示させ、葵さんに差し出す。


「ありがとう。これから定期的にチャット送ってもいいかな?」


「もちろんです!」


「そうか!嬉しい……」


葵さんは頬を赤くしながら、照れ臭そうに笑う。

そんな表情を見て、俺は思わず心臓がドクンと跳ねる。


「では教室まで送っていくよ。蒼太様みたいなかっこいい男性は女性に絡まれるかもしれないからね」


「あ、ありがとうございます」


葵さんの時々出てくる女性っぽい部分にギャップ萌えを感じた。



「じゃあ、蒼太様。また連絡するよ」


「はい!ありがとうございました」


葵さんに教室まで送ってもらい、笑顔で挨拶をする。

教室に着くまでの間、葵さんと話していたが、ユーモアもあるし気遣いもできる。

岬姉ちゃんの言ってた通り、あまり悪い人ではないのかもしれない。


「おはよう!蒼太!」


俺が席に着くと前に座っていた竜也が笑顔で挨拶してきた。


「おはよ……って今日はなんだか元気だな」


竜也は昨日とは別人のように肌艶もよく、体形も元に戻っていた。


「お前のおかげだ、蒼太」


「は?俺なんかしたっけ?」


竜也は満面の笑みを浮かべながら、俺の肩に手を置く。


「結愛をよろしく頼むぞ。これから俺は蒼太の兄になるんだからな!何かあったら今度は俺が助けてやるぞ!」


「よ、よく分からんけど頼むわ」


「おう!」


するとしばらくしてから茜が教室の中に入ってきた。


「おはよう、茜」


「おはよう……」


「なんか元気ないね?」


「うん。私の彼氏が会長と一緒に教室まで歩いて来たたってクラスの女子が噂してたからね」


「い、いやそれは……」


「ふふっ、嘘だよ!岬さんから聞いてるから」


茜はぎこちない笑顔を浮かべながらそう言った。


「茜?どうかしたの?」


「ううん、大丈夫」


「何かあったらすぐに言えよ?俺に出来る事があったら何でもするからさ……」


「うん、ありがとね。……でももう少し頑張ってみるよ」


この時、無理やりでも茜の気持ちを聞いていたらと思うのはもう少し先のお話。

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