第46話 葵さんには冷たくするんじゃなくて優しくするの?

「ご馳走様でした。岬姉ちゃん、今日も美味しかったよ」


 俺は笑顔で、横に座る岬姉ちゃんに言う。


「ありがとうございます。私も蒼太君が美味しそうに食べている所を見れて幸せです」


 岬姉ちゃんはそう言って、俺の方に頭をのせてくる。


「俺の方こそ、毎日岬姉ちゃんのご飯が食べれて幸せだよ」


「嬉しいです……」


 俺は岬姉ちゃんに軽く口づけする。


「離れるのは名残惜しいですが、そろそろ洗い物しなければいけません……」


 テーブルに置かれている皿を見ながら、そう呟く。


「俺も手伝おうか?」


「ありがとうございます。でもこれは私の仕事だと思ってますし、洗い物は好きなので大丈夫です」


「いつもありがとね」


 そう言って俺は岬姉ちゃんの頭を優しく撫でる。

 俺は岬姉ちゃんから離れて、ソファに座る。


 テレビを付け、リモコンでチャンネルをパチパチ変える。

 バラエティーやニュース番組を見ても、出ている芸能人達はほとんど女性ばかりだった。


 こういう所を見ると、改めて貞操逆転世界に来てしまったんだと思う。


「これアイドルか?こっちの世界にも女性アイドルなんているんだな~」


 チャンネルを変えていると、あるライブの映像が流れた。


『みんな~あいのライブに来てくれてありがとう~!!みんな愛してるよ~!』


『『『きゃ~~~!!』』』


 そこには長い金髪をハーフアップにした可愛らしい女性が、大きなライブ会場でマイクを片手に歌ったり踊ったりしていた。


「すごいな……。ファンは女性ばっかりじゃん」


 ライブに来てるファンたちはほとんどが女性だった。


『すごいライブ映像でしたね』


『ええ、さすがは日本を代表するアイドルです』


 映像が切り替わり、二人の綺麗なお姉さんが先ほどのアイドルについて話している。


『最近では、約半年間にもおよぶアメリカでのツアーをしたばかりだそうです』


『私も見に行きました。アメリカでも愛さんの人気は凄まじかったですよ!』


『最近ではハリウッド映画にも出演するのではないかという噂もありますよね』


『それはどうでしょう?先週、日本に帰国していますからアメリカを拠点に芸能活動をする気はなさそうですが……』


『そうなんですね!ではこれからも日本を拠点に芸能活動していくのでしょうか?』


『その可能性が高いですね。何故なら彼女は日本で有名な四大財――』


「蒼太君」


 テレビを見ている途中に岬姉ちゃんから声を掛けられたので、テレビを消す。

 岬姉ちゃんは隣に座り、俺の手を握ってくる。


「この前は葵が迷惑を掛けてすみません」


「ただ呼ばれて少し話しただけだから、迷惑なんて思ってないよ。でもみんなの話から会長は男性だと思ってたから、びっくりしたよ」


 身長も高くて、口調も男っぽかったらな。

 実際に会ってみて、かっこいいとは思った。


「そうですよね……。葵は学校の中でも大人気ですから、ファンクラブまであるみたいですよ」


「ファンクラブなんてあるのか……。そんな葵さんと親友だなんてすごいね」


「別にすごくないですよ。ただ葵が私に付き纏ってきてただけですから」


「この前言ってた四大財閥の友達って葵さんの事だったんだね」


「そうです。葵が私に付き纏ってきた理由だって、本当に気持ち悪くて……あっ!」


 岬姉ちゃんは何かを思い出したかのように声を出すと、急に目を鋭くさせて俺をにらみ始める。


「な、何で睨むの?」


 岬姉ちゃんがなぜ怒っているのかわからずに、困惑してしまう。


「葵に首輪付けましたよね?」


「え?あーうん。まさか葵さんからあんなものが出てくるとは思わなかったから面白くてつい……」


 でもなんであんなもの持っていたんだろう。

 飼い犬の首輪か何かかな?にしては葵さんにサイズがぴったりだったような気が……。


「はぁ~」


 岬姉ちゃんは俺の言葉を聞いて、大きなため息を吐く。


「まさか……またやらかしちゃった?」


「はい。細かい理由ははぶきますが、このままだと葵に執着されてしまいます。蒼太君ならもうわかると思います。四大財閥の人間に執着されるとはどういう意味なのか……」


 俺は茜と莉乃の事を思い出し、体がブルリと震える。


「こ、これ以上はさすがに無理だよ……」


「まあやってしまったものはしょうがないです。今回に関しては蒼太君も悪いですが、一番悪いのは葵ですからね。校内放送を好き勝手使ったことで先生達から怒られましたし」


「でもこれで葵さんも好き勝手しなくなるんじゃない?」


「それはないでしょうね。それに怒られたのは葵ではく、私です」


「なんで岬姉ちゃんが怒られるの?」


「天羽家は私立桜小路学園に多額の資金提供をしています。なので基本的に葵には何も言いません、先生達からはいつも私に葵をどうにかして欲しいと言われています」


「そうなんだ……」


「はい。なのでこうして蒼太君に癒してもらわないとやってられません!」


 岬姉ちゃんはそういうとさらに体を俺にくっつけてくる。


「これくらいならいつでもやってあげるよ」


「ふふっ」


 岬姉ちゃんは笑うと、俺の頬に口づけをする。


「やっぱり葵を蒼太君から遠ざけなければ……。茜と莉乃にも協力してもらわなければいけませんね」


 岬姉ちゃんはそういうと、スマホを取り出して何やら連絡を取り始める。


「二人と連絡先交換したの!?それに名前で呼んでるし……」


「最近のあの二人は安定していますからね。三人で蒼太君と居れる時間を分担するために話し合っていたら仲良くなりました」


「い、いつの間にそんな話合いが行われていたんだ……」


「思ったよりいい子達でしたよ。四大財閥にも話が分かる人がいるんですね。葵は相変わらず我儘ですが」


「それより流石にこれ以上四大財閥の人に執着されるのはもう嫌だな……。茜や莉乃にも迷惑かけちゃうと思うし」


 今はみんなと比較的良好に関係が進んでいるので、最近はこの三人と仲良く暮らしていければそれでいいとも思い始めている。

 三人とも可愛いし、俺にはもったいないくらい素敵な子達だ。


「じゃあ俺は葵さん執着されないために、他の男みたいに冷たく接すればいいのかな?」


「それはダメです。葵に何か言われたらなるべく身体接触は避けながら丁寧に、優しく接してあげてください。私や茜、莉乃に接するみたいに」


「え!?ど、どういう事?」


「葵は少し……いえ、とても頭がおかしいので、普通の女の子とは違います。とにかく冷たく接するのはやめてください」


「よくわからないけど、分かった。岬姉ちゃんの言う通りにするよ」


「お願いします。葵はしつこいですから、何かあったらすぐに連絡してください」


「うん。じゃあ俺は歯を磨いてくるよ」


 俺は立ち上がって洗面所に向かう。


 すると机の上に置いてあったスマホが光り、二回震えた。


『通知:キューピッドが更新されました』


『通知:ラブメーターに新しい女の子が追加されました。今すぐチェックしましょう!』


それは天使キューピッドのささやきなのか、それとも悪魔のささやきなのか……。



―――――――――

【あとがき】

久しぶりにアプリが登場しました。


別の連載もやっているので更新頻度遅くなっていますが、必ず完結させますのでもし良かったらブックマーク、★★★評価お願いします!!

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