第43話 西園寺家の長女が帰ってきたみたいです
「ごちそうさま。今日も美味しかったよ、岬姉ちゃん」
今日もいつも通り、岬姉ちゃんの作った朝ご飯を食べる。
「ふふっ、ありがとうございます」
台所からエプロンを付けた、岬姉ちゃんが笑顔でそう言った。
「制服に着替えてくるよ。家を出る時間はいつも通りでいい?」
「はい。あっ!」
「ん?どうしたの?」
岬姉ちゃんが俺に近寄ってきて、眉を下げながら俺を見上げる。
「神楽坂茜と如月莉乃とのデートは楽しかったですか?」
「えっ?うん。楽しかったよ」
土曜日は茜と遊園地。
日曜日は莉乃とお家デートをした。
二人とデートをして、さらに二人の良い所を発見することができた。
おかげで充実した休日になった。
「そうですか……」
岬姉ちゃんは俺に抱き着いて来て、胸に顔を埋める。
「どうしたの?」
俺は声を掛けながら岬姉ちゃんの頭を優しく撫でる。
「この土日は私が家にいる時、蒼太君は他の女の子と遊んでいるのだと思ったら少しだけ嫉妬しちゃいました……」
岬姉ちゃんはそう言いながら、強く抱きしめてくる。
「大丈夫だよ。次の土曜日は岬姉ちゃんとのデートでしょ?楽しみにしててよ!」
「はい!楽しみにしてますね!」
岬姉ちゃんは先ほどまでの暗い表情ではなく、笑顔で俺にそう言った。
◇
岬姉ちゃんと一緒に登校し、自分のクラスの教室に入る。
「おはよう、竜也」
俺は竜也に挨拶して、自分の席に座る。
「おう……蒼太……。今日は学校に来るのが早いな……」
竜也はか細い声で挨拶してくる。
「一緒に登校する子が生徒会の用事があって……。って、なんか元気ないな。どうしたんだ竜也?」
今日の竜也は顔を真っ白にして、髪ぼさぼさだった。
「ああ、ちょっと疲れててな……」
竜也はそう言って、大きなため息を吐く。
「土日は休みだっただろ?それでも休めなかったのか?」
「実は……」
何やら重い雰囲気で竜也は口を開く。
「な、なんだよ」
「妹が一昨日から家に戻って来たんだ」
確か竜也には妹がいたんだっけ?
竜也の妹って事は四大財閥の女性って事か……。
やっぱり茜や莉乃みたいに他の女の子とは少し違うのかな?
「家に戻って来た?今までは違うところに住んでたのか?」
「はぁ……半年間、アメリカに留学してたんだ」
「なるほど……だからそんなに疲れてるのか」
「この土日はずっと結愛に……うわぁぁぁぁ!!」
竜也は頭を搔きながら、叫び出す。
「西園寺君どうしたの?」
「なんか今日は様子がおかしいね」
「今、優しくしてあげたら好感度アップするのかしら?」
竜也の声を聞いたクラスメイト達がヒソヒソと話し始める。
「お、おい!しっかりしろ!」
俺は竜也の肩を持って、揺らす。
「へぇ~、結愛ちゃん帰ってきたんだ~」
するといつの間にか茜が横の席に座っていた。
「おはよう、茜」
「おはよう!土曜日のデート楽しかったね!」
「ああ、また今度一緒にデートしような」
「うん!」
俺と茜の会話を聞いていたクラスメイト達がまたもヒソヒソと話し始める。
「う、嘘でしょ……。神楽坂さん、いつの間にあそこまで関係を進めていたの!?」
「あれ完全に付き合ってるじゃん!」
「私も彼氏欲しい!」
「ふふっ」
そんなクラスメイト達の様子を見て、茜が小さく笑った。
「何がそんなに面白いの?」
「蒼太君が私と付き合ってるって事がクラスのみんなに知ってもらえて嬉しいの。今だけは自分だけの蒼太君って感じがするから」
茜は頬をほんのり赤くさせ、俺の目を見つめてくる。
「そうだな。今は茜の事しか見えてないかもな」
やっぱり改めて見ると、茜はクラスの中でも群を抜いて可愛い。
自分が付き合えているのが不思議なくらいだ。
「嬉しい……」
茜はそう呟いて、俺の手を握ってくる。
「そ、蒼太……お前正気かよ」
俺と茜の会話を聞いていた竜也が真っ青な顔でそう言った。
「正気だよ。正気じゃないのは竜也の方だろ?そこまで疲れてるなんて、妹に何されたんだよ……」
「思い出させないでくれぇぇ!!俺はこの休日……うわぁぁぁ!!」
また竜也は叫びながら、頭を掻き始める。
「あはは……、結愛ちゃんは愛情表現すごいからね~」
竜也の様子を見て、茜は苦笑いする。
「そういえば茜は竜也の妹と幼馴染だったな」
「うん、莉乃ちゃんとも幼馴染だよ。昔はよく三人で遊んだな~」
茜は少し上を見て、思い出を振り返るようにそう言った。
「へぇ~、どんな子なんだ?」
「まあ一言で言うと、甘えん坊かな?」
「甘えん坊?」
「うん。気に入った友達にずっとくっついたりするんだよね。私もよく抱き着かれてたな~。一回抱き着いてくると一日中離れなくて……」
「や、やっぱり四大財閥の女の子は癖が強いな……。甘えん坊の度を越えてるな。ちょっと面白いなぁとは思うけど」
俺は顔を引きつらせながらそう言う。
「むぅ~、もしかして私や莉乃ちゃんだけじゃなくて結愛ちゃんも狙ってるの?」
茜は頬を膨らませながら、俺を睨む。
「狙ってないよ!俺が節操のない男か何かと勘違いしてない!?」
「違うの?」
「ち、違うよ!狙ってないって!」
でも正直ちょっと見てみたいなぁ~とは思ってました、すみません。
「でも蒼太君は『四大財閥キラー』だからね……。ちょっと心配」
「何!?その不名誉な肩書は!?」
「私達みたいな変わり者がすぐ好きになっちゃいそうって事だよ」
「……」
四大財閥の二人と付き合ってるから否定はできないな。
「あははは、適当に言ってみただけだから気にしないで!」
茜は笑いながらそう言った。
「でも、結愛ちゃんが日本に帰って来たのか~。西園寺君も大変そうだね……」
「そ、それだけじゃないんだ……。結愛の歳は俺たちの一個下で、今日からこの学校に転こ――」
ピンポーンパンポー―ン
『2年の西井蒼太さん、至急生徒会室に来てください』
竜也が喋ってる途中に校内放送が流れた。
「お、俺!?」
俺は驚きのあまり、ついつい立ち上がってしまう。
「蒼太君、何かしたの?」
「いや、身に覚えはないけどな……。とりあえず呼ばれたみたいだし、行ってみるよ」
「うん!いってらっしゃい」
でも俺に何の用事なんだろう……。
俺は不安に思いながら、生徒会室に向かって歩き出す。
―――――――――
【あとがき】
次回4人目のヒロインが登場します。
お楽しみに~。
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