第39話 妹が出来ました

「えへへ……来ちゃった♡」


「……」


そういえば子供の頃に岬姉ちゃんと遊んでいた時に、岬姉ちゃんのお母さんが抱っこしていた子供がいたな。

確か歳は俺の2つ下だったような気がする。


海依ういちゃん?でいいんだよね?」


「えっ!?名前で呼んでくれるの!?嬉しいなぁ~」


海依ちゃんは両手で頬を触りながら、体をくねくねし始めた。


「海依、蒼太君の前でその気持ち悪い動きをやめなさい」


「はっ!ご、ごめんなさい!ついつい嬉しくて……」


海依ちゃんは照れくさそうに頭を押さえる。


「はぁ~、全く……。何しに来たんですか?」


「ここでお話しするのも何ですから中で話しましょうよ~」


海依ちゃんはニヤニヤと笑いながら言う。


「どうしてこの家に住んでいないあなたから、そんな風に言われなければいけないのですか?それに鍵を持っていない海依がどうやって部屋に入ったのですか?」


「まあまあ、細かい事はいいからいいから」


俺達は海依ちゃんに促され、部屋に入る。

俺の隣に岬姉ちゃんが座り、机を挟んで向かい側に海依ちゃんが座った。


「むぅ~」


海依ちゃんは頬を可愛く膨らませ、岬姉ちゃんを睨む。


「何か問題でも?」


「お姉ちゃんずるいよ!私も蒼太お兄ちゃんの隣座りたい!」


「海依は何をしでかすか分かりませんからダメです。それにいつから蒼太君がお兄ちゃんになったのですか?」


「だってお兄ちゃん欲しかったんだもん。いいよね!?蒼太お兄ちゃん?私だって一応幼馴染なんだし!」


「まあ、全然いいけ――」


「ダメです。それに海依は幼馴染ではありません。子供の頃だって蒼太君と会ったのは一回か二回だけじゃないですか」


確かに岬姉ちゃんとは何度も遊んでいたが、海依ちゃんはちらっと見かけたくらいだ。

前世の時からずっと一人っ子だったので、兄弟というものに少し憧れがある。


「お兄ちゃんって呼ぶくらいいいじゃん。お姉ちゃんはずるいよ!こんな優しくてかっこいい男の子と毎晩〇〇〇ピーしてるんでしょ!?」


ん?なんかすごいエッチな単語が聞こえたぞ。


海依ちゃんの言葉を聞いて、岬姉ちゃんは顔を真っ赤にさせた。


「そそそそ蒼太君の前でなんて事言ってるんですか!?それにまだ私と蒼太君はそんな事してません!!」


「えーーー!!一緒に住んでるのにシてないの?お姉ちゃんも度胸がないね。私だったら初日で襲ってるのに」


「私は蒼太君との関係を大事にしているだけです!」


「根性がないだけでしょ?そんなことより蒼太お兄ちゃん、隣に座ってよ!」


海依ちゃんは目をキラキラさせながら俺にそう言った。


「蒼太君、絶対行ってはいけません。海依は男性に関して免疫はほぼ0ですので」


「な、なるほど」


俺は岬姉ちゃんの言葉を聞いて、生唾をごくりと飲む。


「なんでよ!私も蒼太お兄ちゃんの匂いを嗅ぎたい!」


「今のセリフを聞いて余計に近付けさせる訳にはいかなくなりましたね」


「ちぇっ。その匂いで今晩は自分でゴニョゴニョ……」


なんか海依ちゃんキャラ濃いな……。

後半何言ってるか聞こえなかったけど、きっと良からぬ事を考えていたのだろう。


「男性に対してその態度は全く治ってないですね。いつまでもそんな事言ってたら男性ボディーガードになれませんよ?」


岬姉ちゃんは海依ちゃんを見て、大きくため息を吐いた。


「だって最初から男性ボディーガードなんかになる気ないもん。お母さんが無理やり私にやらせたがってただけじゃん」


「昔から海依はそう言ってましたね」


「うん。それよりさっき手繋いでたよね!?」


「え?ま、まぁ……」


岬姉ちゃんは頬を赤く染めながら答えた。

俺も直接口にされると恥ずかしくなってしまう。


「いいな~私も男の子と手繋いでみたいな~。じゃあキスとかはしたの!?」


海依ちゃんは身を乗り出して、目をキラキラさせながら聞いてきた。

少し変な子だけど、こういう所を見ると海依ちゃんも恋バナが好きな一人の女の子なんだなあと思う。


「……」


岬姉ちゃんは耳まで真っ赤にさせながら俯いた。


「ふむふむ。その反応はしたって事だね……。お姉ちゃんばっかりずるいずるい!私もちゅーしたい~!」


「こんな風に聞かれると照れてしまいますね、蒼太君」


岬姉ちゃんは俺に向かって不器用な笑顔を作りながらそう言った。


「そうだね……」


「ごほんっ。海依、私達の話を聞いて結局何がしたいんですか?」


「私は男性と毎日○○〇ピー生活が出来れば――」


「黙りなさい!」


すると岬姉ちゃんはどこからともなくフォークを取り出し、海依ちゃんに向かって投げる。

真っ直ぐ飛んできたフォークを海依ちゃんは片手で掴み、何事もなかったかのように机に置いた。


「ええ……」


俺は今のやりとりを見て、若干引いてしまう。

岬姉ちゃんのお母さんが来た時も思ったけど、北条家は一体どんな育てられ方をしてるんだよ……。


「その下品な口を今すぐ閉じなさい」


「はぁ~、お姉ちゃんは真面目なんだから。はいはい、ごめんなさ~い」


海依ちゃんは気の抜けたような声で謝った。


「全く……、本当に何しに来たんですか?」


海依ちゃんは人差し指で頬を触る。


「う~ん、大した話じゃないんだけどね」


「大した話じゃない?」


「まあ簡単に言うと、私が今日から蒼太お兄ちゃんの事守るから、お姉ちゃんは家に戻って会社継いで欲しいんだよね」


「「えっ?」」


海依ちゃんの言葉を聞いて、俺と岬姉ちゃんは同時に声を出した。






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