第33話 神楽坂と如月
次の日の朝、俺と岬姉ちゃんはいつも通り、一緒に学校へと歩いていた.
「全く……蒼太君は短期間に色んな女性に手を出しすぎです!仲良くなる女性をもっとしっかり選んでください!」
「わ、わかったよ。岬姉ちゃん」
昨日、莉乃の家から自分の家に帰ってから今までずっとこの調子で岬姉ちゃんに怒られていた。
「分かればいいのです。まあ、私も昨日の事で覚悟を決めましたから」
「覚悟?」
俺は岬姉ちゃんに聞き返すと、ハイライトが消えた目で俺を見る。
「今日から蒼太君のプライベートはほとんどないと思ってください。私が徹底的に蒼太君のスケジュールを管理します」
「そ、そんなの困るよ!それだけはやめてよ」
「ダメです。これも悪い女に捕まらないように蒼太君を守るためです」
その後も色々言ってみたけど、岬姉ちゃんの意思は固く、結局外出するときは必ず誰と何時から何時まで行くかを岬姉ちゃんに伝えるように言われた。
「あともう少し私にも構ってください……」
「わ、わかったよ」
学校の校門をくぐり、下駄箱で靴を履き替える。
「それでは私は自分の教室に行きますので、くれぐれも神楽坂茜と余計な接触はしないようにしてくださいね」
岬姉ちゃんは腰に手を当てて、目を細くしてそう言った。
「茜とは隣の席なんだから、嫌でも接触はすると思うけど……」
「じゃあ無視してください」
「そ、そんなの無理だよ!」
「冗談です。ちょっと意地悪言ってみただけです。放課後は下駄箱で待っていますから、今日こそ一緒に家まで帰りますよ。いいですね?」
岬姉ちゃんは俺に顔を近付け、圧をかけてくる。
「わ、わかってるよ」
「ならいいです。それではまた」
そう言うと岬姉ちゃんは振り返り、自分の教室に向かって歩いて行く。
それに続いて俺も階段を上り、自分の教室に向かう。
「おはよう、竜也」
「おう、蒼太か」
俺は前の席の竜也に挨拶して自分の席に座る。
「なあ聞いてくれよ昨日さ――」
「ねぇ、あれって……」
「隣のクラスの……」
竜也と雑談しようとした時、教室の中が騒がしくなる。
綺麗な長い黒髪を揺らしながら、一人の女子が教室に入ってくる。
その女性は真っ直ぐ俺の近くまで来て、俺を見下ろす。
「おはよう、蒼太!今日もいい天気ね!」
初めて会った時よりも表情が明るい気がする。
きっと昨日莉乃の家で遊んだことで今までよりも仲良くなれたからだろう。
「ああ、おはよう莉乃。どうしたんだ急に?俺に用事でもあるんのか?」
「別にないわ。蒼太の顔が見たくなっただけよ」
「そうか、俺も莉乃の顔が見れて嬉しいよ」
そう言うと莉乃は頬を赤く染め、自分の髪を指で触る。
「そ、そう。なら明日も来てあげるわ!」
すると竜也から肩を叩かれ、顔を寄せてくる。
「そ、蒼太!あんまり話さない方がいいぞ!こいつが誰だか分かってるのか!?」
竜也は俺にだけ聞こえるような小さな声でそう言った。
「誰って……莉乃はただのゲーム友達だぞ?」
「いや、こいつは――」
「ちょっと、何あんた!今は私と蒼太が喋ってるんだから割り込んでこないでよ」
莉乃は腰に手を当てて、竜也を睨む。
「す、すまん」
竜也は顔を真っ青にさせて莉乃に頭を小さく下げる。
「あれ?あなたどこかで見たことあるような……」
莉乃は顎に手を当てて、竜也をじっと見る。
バン!!
勢いよく教室のドアが音を立てて開き、全員がドアの方を向いた。
「やっぱり昨日蒼太君と一緒にいたのは莉乃ちゃんだったんだね……」
ドアの前に立っていた茜はそう呟くとゆっくりこちらに向かって歩いてくる。
「それは私のセリフよ。茜……」
茜は自分の鞄を机の上に置き、莉乃を睨む。
「莉乃ちゃん、今すぐ蒼太君から離れて」
「嫌よ。茜こそあまり蒼太に近づかないでもらえる?」
二人はお互いに睨み合い、火花を散らす。
「あれ?二人とも知り合いなの?」
俺の質問に答えたのは莉乃でも茜でもなく、竜也だった。
「あ、当たり前だろ!」
「何で当たり前なんだよ」
「だってこいつは、四大財閥の【
「はぁぁぁぁ!?き、如月!?」
俺は莉乃をじっと見ると、莉乃は横目で俺を見た。
「そうよ。言ってなかったかしら?」
「は、初耳だよ!」
「でもそんなの関係ないわ。私は蒼太の事が好き、それだけ分かってくれれば十分よ」
いや十分じゃねえだろ!
別の四大財閥の人間と関わっているのがバレたら、また岬姉ちゃんに怒られる!
「蒼太君と私の前でイチャイチャしないで!」
茜は大きな声でそう言うと、目が闇に染まっていく。
「茜、やっぱりあなたは神楽坂家の人間ね。そうやって好きなものを自分一人で独占しようとするところは昔から変わらないわね」
それを聞いた莉乃の目も闇に染まっていき、茜を睨む。
「莉乃ちゃんこそ、如月家の人間だね。自分と蒼太君の関係を周りにアピールして自分が一番じゃないと気が済まないの?昔からプライドだけは人一倍強いんだね」
二人のやり取りを聞きながら、俺は震えが止まらない。
「な、なあ竜也。この二人って仲悪いの?」
「い、いや……そんな話は聞いたことないな。今の四大財閥の子供達はみんな歳が近いから俺以外はそれなりに交流があるはずだ」
じゃあなんで二人はこんなに喧嘩してるんだよ!
「二人とも一回落ち着けって!そろそろ授業が始まるし、先生が来ちゃうぞ!?」
二人は俺の言葉を無視して、言い合いを続ける。
「私は幼馴染で昔から一緒に遊んでいた莉乃ちゃんの事は親友だと思ってる。でも蒼太君だけは譲れない」
「私も茜の事は親友だと思っているわ。それに蒼太と恋人になるのも茜だったら許してあげる。でも蒼太の一番だけは譲らないわ」
「ど、どうしたらいいんだ……」
俺は二人の喧嘩を見て、困惑する。
ピコン
スマホの通知が鳴ったので、スマホを開いた。
『ラブメーターが更新されました。今すぐチェックしよう!』
俺は通知をタップして、キューピッドを開く。
メイド服を着た女性のイラスト ピンク色のハート 100/100
赤いリボンを付けた女性のイラスト 少し黒みがかったピンク色のハート 120/100
長い黒髪の女性のイラスト 少し黒みがかったピンク色のハート 120/100
茜と莉乃の数字が100を超え、莉乃のハートも黒みがかっていた。
「莉乃まで黒くなってきている……これは一体……」
スマホを見ながら固まっていると、横から竜也が声を掛けてくる。
「お、おい!スマホ見てないで早く喧嘩止めてくれよ!クラスの奴らが怖がってるぞ!?」
「わ、悪い!」
俺はスマホをしまって、仲裁を試みるも二人の喧嘩は収まらず、先生が教室に入ってきてもまだ喧嘩を続けていた。
◇
「会長~、いますか?」
一人の女子生徒が重々しい生徒会室のドアを開けて中に入る。
「どうしたんだ?」
座っている黒のオフィスチェアを回転させ、ドアの方を向ける。
「会長!今日もかっこいいですね!」
女子生徒は目をハートにさせ、腕を組みながらそう言った。
会長と呼ばれた女性は銀髪のショートカットで、身長が高くモデル体型だった。
細くて長い脚を組み、女子生徒にウインクをする。
「ふふっ、ありがとう。君も可愛いよ」
「きゃーーーー!!」
女性生徒は頬に手を当てて、足をバタバタとさせる。
「それで、どうしたんだ?」
「それがですね、ちょっと面白いことがありまして……」
「面白い事?」
「会長と同じ四大財閥の関連ですね。二年の神楽坂茜と如月莉乃が喧嘩したみたいなんですよ。それに授業が始まっても一切気にせず言い合いを続けたそうです」
「ほう、それは確かに興味深いな」
会長は目を細めて、唇の端を吊り上げた。
「それで、喧嘩の原因はなんだ?」
「二人とも同じ男の子を好きになっちゃったみたいです。その一人の男子生徒を取り合って喧嘩したようですね。喧嘩なんかしなくても三人で仲良く付き合えばいいものを……」
「ふふっ、普通はそうなるだろうな。でも私達四大財閥の人間にそれは無理だ、みんな変わり者ばかりだからな」
「あっ!そういえば副会長もその男の子が好きみたいですよ。毎日一緒に登校してきていますし」
「何っ!?岬もか?」
「はい。面白くなってきましたね~」
女子生徒は目をキラキラさせながらそう言うが、反対に生徒会長は大きくため息を吐いた。
「また問題が起こりそうだな。一度その男子と話をしてみよう、その男子の名前はなんだ?」
「たしか……西井蒼太君です。今年に転校してきたばかりです」
「西井蒼太か……」
「あっ!じゃあ私は先生と打ち合わせがあるので行きますね」
「ああ、お疲れ様」
そう言うと女性生徒は部屋を出て行った。
生徒会長はそれを見送ると、立ち上がって窓から学校を見渡す。
「四大財閥にはそれぞれ強い欲望がある。神楽坂は【独占】、如月は【傲慢】、天羽は【承認】、西園寺は【愛情】。四大財閥の人間達で物事を共存させるのは非常に難しいだろう。恋愛となれば絶対に不可能だ、それを二人も囲うつもりなのか……」
生徒会長はふっと小さく笑う。
「西井蒼太か……面白い、少し興味が出て来たな。早く会いたいものだ」
生徒会長そう呟くとカーテンを閉めて、椅子にドカッと座る。
「もしかしたらこの【
――――――――――――――――――
【あとがき】
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これからも『貞操逆転世界で恋愛攻略アプリを使ったら、美少女達がヤンデレ化した』をよろしくお願い致します。
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