第10話 隣の席の女の子はとんでもないお嬢様だった
「じゃあ西井君、また明日!」
「じゃあね、また明日」
下校時間になり、神楽坂さんと挨拶する。
神楽坂さんは小走りで教室から出て行った。
俺は鞄を持って立ち上がり、帰ろうとした時、一人の女子に声を掛けられた。
「西井君!よかったら一緒に帰らない?」
「ごめん、今日用事があるからまた今度ね」
「そっかぁ……わかった!じゃあね!」
今日一日で俺が女子に優しいというのがクラス全体に伝わったのか、みんな気軽に話しかけてくれる。
「お前よく女にあんな態度できるな」
前の席に座っていた金髪で目つきが悪い男に話しかけられた。
「別に普通じゃない?」
「いや、普通じゃないだろ」
「君は女子が嫌いなの?」
「いや、嫌いっていうか……、悪い、自己紹介してなかったな。俺は
「朝も言ったけど、西井蒼太。よろしく!」
結構強面だけど、意外とフレンドリーな奴だな。
俺が女子と仲良くしてるから憎まれ口を叩かれるんじゃないかと思ったが、そうではないみたいだ。
「話し戻すけど、嫌いじゃないのに何で女子と話さないの?」
「俺は女が怖いんだよ」
「いや、どの顔の奴が言ってんだよ!」
「顔は関係ねえだろ!」
「あははっ、ごめんごめん。何で女子が怖いの?」
「妹がいるんだが……そいつに昔いろいろと……」
西園寺竜也は顔を青くし、ブルリと震えた。
少し思い出しただけでこの反応……。きっとよっぽど嫌な事をされたのだろう。
「西園寺君も苦労してるんだね」
「
「もちろん!」
やった!男友達ができたぞ!
俺はこの学校に来て初めての男友達が出来て、思わずにやけてしまう。
「じゃあ俺はそろそろ帰るよ。また明日な、蒼太。」
「じゃあね、竜也」
竜也と別れて俺も教室を出る。
下駄箱で靴を履き替え、校門まで歩いていくと岬姉ちゃんが校門の前に立っていた。
「岬姉ちゃん、おまたせ」
「あ!蒼太君」
岬姉ちゃんは俺を見て、上品に微笑む。
「さあ、帰りましょうか」
俺達は家に向かって2人並んで歩いていく。
桜の花びらが落ちていて、道路がピンク色に染まっていた。
「学校はどうでしたか?」
「なんとかやっていけそう。男友達ができたし」
「それは良かったです!今日一日蒼太君が新しい学校になじめるか心配で、先生の話が全く耳に入りませんでした……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ!」
「でも蒼太君はちょっと変わってるから……」
「変わってる?どこが?」
「女の子に優しい所と危機感がない事です。それと常識がなさすぎます、まるで別の世界から来たみたいに」
「ぎくっ!」
す、するどい!前世の事はなるべくバレないようにしなければ……。
まあ正直に言っても信じないとは思うけど
「あ~桜が綺麗だな……」
「話をすり替えないで下さい。朝の事もありますし、本当に気を付けてくださいね」
「う、うん……。あっ!そういえば隣の席の女の子がめっちゃ可愛かった!」
「は?」
突然、岬姉ちゃんの目のハイライトが消え、表情が消える。
「えっ?」
やばい!話す話題を間違えた!
つい焦って何も考えずに言ってしまった事を後悔した。
「へぇ~そうですか。それは良かったです。私が心配する必要もなかったみたいですね」
「い、いや、それは……」
「どんな子なんですか?く・わ・し・く!聞かせて下さい」
やけに「詳しく」の部分を強調して言う岬姉ちゃんに俺は思わず後ずさる。
「え~っと……」
その時、赤信号になり、黒塗りの高級車が俺の横で停車する。
俺は横目でその高級車の後部座席を見ると、そこに座っていたのは神楽坂さんだった。
「あっ!神楽坂さん!」
神楽坂さんの名前を呼んだが、車に乗っている神楽坂さんには聞こえなかったのか、俺の存在に気が付くことはなかった。
俺が声を出したと同時に信号が青になり、その高級車が行ってしまった。
「あっ!ごめん。さっき話していた隣の席の可愛い子が今の車に乗ってたんだ」
「そうですか。それより神楽坂さんって言いました?」
「うん、隣の席の子が神楽坂さんって名前なんだ」
「そ、それってまさか神楽坂茜ですか?」
「え?岬姉ちゃん知ってるの?」
「逆に知らないんですか!?」
岬姉ちゃんは目を大きく開き、驚いていた。
「?知らないけど……」
そういえば神楽坂さんも「私を知らないの?」とかなんとか言ってたな。
「いいですか、蒼太君。この国の経済を握ってる有名な四大財閥があるんです」
「へぇ、そんなのがあるんだ」
「はい。その四大財閥は【
「そうなの?そんな人には見えなかったけどな……」
「それだけ力があるってことです!それに私立桜小路学園には【神楽坂家】【如月家】【天羽家】の長女がいます。あと【西園寺家】の長男もいましたね。面倒事に巻き込まれたくなければ、四大財閥の人達とはなるべく関わらない様にして下さい!いいですね?」
ん?西園寺の長男?どこかで聞いたような……。
「あ!そういえばさっき言った、新しく出来た男友達の名前が「西園寺竜也」って奴なんだけど……」
「……。もう!蒼太君!!」
岬姉ちゃんは今までに見たことないくらい頬を膨らませて俺を睨んでくる。
岬姉ちゃんは怒ってても可愛いなぁ~。
この時の俺は事の重大さに気付かず、そんな事を考えていた。
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あとがき
今回で10話になりました。
読者様からの反応、とても嬉しく思っております!
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これからもよろしくお願いします。
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