第9話 気になる女の子を褒めてみよう
キーンコーンカーンコーン。
「じゃあ、今日の授業はここまで。しっかり復習しておくように」
4時間目の授業が終わり、昼休みになる。
クラスの生徒達は、自分のお弁当を食べ始める人や購買に行く人など、それぞれ違う動きをしていた。
俺は鞄の中から岬姉ちゃん手作りの弁当を出す。
「いただきます」
お弁当を食べようとした時、
「西井君!よかったら一緒にご飯食べない?」
一人の女子が俺に昼食のお誘いをしてきた。
特に断る理由もないし、クラスの人とはぜひ仲良くしたいと思ったので了承した。
「うん、いいよ」
「えっ!?い、いいの!?」
その女子はまさか俺がオッケーするとは思っていなかったのだろう。
クラスを見渡してみると、女子と一緒にご飯を食べるどころか会話をする男子も一人もいなかった。
これが普通なんだな……、やっぱり前の世界とは全然違うな。
改めて自分は貞操逆転世界に生きてるんだなぁと思った。
「じゃ、じゃあ―」
「西井君!私も一緒にご飯食べたい!」
「じゃあ私も!」
すると、他の女子達もそれに便乗してきた。
「う、うん。いいよ」
その勢いに俺は圧倒され、苦笑いを浮かべる。
「やったー!じゃあ私隣~」
「は?ずるいわよ!」
「ダメだよ!最初に誘った私が隣!」
なにやら女子達は誰が俺の隣に座るかで揉め始める。
「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて!」
俺は慌てて止めに入る。
「ごめんね、西井君。でもこれは女の戦いなの」
一人の女子にそう言われ、俺は何も言い返せなくなる。
「はぁ~」
自分ではどうしようもない状況に俺は思わずため息を吐く。
結局ご飯を食べられたのは昼休みが終わる10分前だった。
ちなみに時間がなかったので急いでお弁当を食べたが、岬姉ちゃんの作ったお弁当はすごくおいしかった。
◇
また午後の授業が始まる。
正直、昼休みはあまり休めなかった。
一応女子達は謝ってくれたが、これが毎日続くかもしれないと思うと少し憂鬱だ。
「ふふっ、人気者は大変だね。西井君」
神楽坂さんが隣から俺をからかうように小さい声で言ってきた。
やっぱり神楽坂さん可愛い……。
前の世界のテレビに出ていたアイドルや女優よりも可愛い。
「そう思ったのなら助けてくれよ」
俺も先生にバレないように小さい声で言う。
「あの状況で助けようとすれば私が敵になっちゃうよ!ただでさえ女子に優しい西井君の隣の席ってだけで嫉妬されてるのに」
「え?そうなの?」
「そうだよ!西井君は女の子に囲まれて気付いてなかったかもしれないけど、私も昼休みは女子に囲まれてみんなから席を変わって欲しいって言われてたんだよ!?」
「そ、そうだったんだ。迷惑かけちゃったね」
「全然いいよ。それとも誰かと席変わって欲しかった?」
「いや、隣は神楽坂さんがいいな。仲良くなれそうだし」
「ほ、本当?」
「うん。なんとなくだけど神楽坂さんって他の女子と何か違うんだよね」
「それはたぶん昔から男の子とある程度、接点があったからじゃないかな?」
「そうなの?」
「うん。もちろん深い関係にはなった事ないけどね。家はちょっと特殊でさ~、子供の頃からお見合いとかさせられてたんだよね。男の子って女の子に冷たい人多いから……それでちょっと男の子が苦手になっちゃって……」
「そうなんだ。俺の事は苦手じゃないの?」
「うん!全然平気!西井君も他の男の子とは違うから!」
「そっか……あっ!」
話に夢中で、消しゴムを落としてしまった。
その消しゴムは神楽坂さんの椅子の下まで行ってしまった。
神楽坂さんは椅子を少しずらし、消しゴムが取りやすいようにしてくれる。
俺は一瞬自分で消しゴムを拾おうか迷ったが、前に読んだアプリの情報を思い出した。
「ごめん、消しゴム拾ってもらってもいい?」
「えっ?私が取ってもいいの?」
神楽坂さんは目をぱちぱちさせながら俺の顔を見る。
「うん。神楽坂さんが嫌じゃなければ」
俺はそれに答えるように笑顔で神楽坂さんの顔を見る。
神楽坂さんはほんのり頬を赤く染め、消しゴムを拾って俺の方に差し出してくる。
「ありがとう」
神楽坂さんの手の平の上に乗っている消しゴムを取る。
神楽坂さんの手は思わず見とれてしまうようなしなやかな手をしていた。
その時、ポケットにあるスマホが震える。
俺は先生に見つからないように、机の下でスマホを開く。
『通知:キューピッドが更新されました』
すぐにキューピッドを開き、情報を見る。
『気になっている女性と仲良くなりたい!そんな時にするべき事は女性の良い所を見つけて【褒める】事だ!褒める内容は基本的になんでもいい!髪型、服装、性格など、その人の良い部分を見つけ、褒めてみよう!そらに女性の小さな変化に気付いてそこを褒めてあげれば効果大!ただし、容姿とスタイルを褒めるのは気持ち悪がられるのでNGだ!顔とスタイルを褒めていいのは付き合った後にしよう!』
なるほど、褒めるか……。
俺は神楽坂さんの方を見る。
「ん?どうしたの?」
神楽坂さんは小さく首を傾げる。
か、可愛い……。でも容姿を褒めちゃダメだ!
あ!結構おっぱい大きいな……、ってこれもダメだろ!
他に何かないのか!?
俺は必死に良い所を探そうと脳みそフル回転させる。
あ!そうだ!手だ!
「いや、神楽坂さんの手綺麗だったなぁって思ってさ」
「へっ?」
神楽坂さんは自分の両手を見る。
「あ、あはは……家事とかあんまりしないからかな……」
神楽坂さんは照れたように言う。
「神楽坂さんってお嬢様なの?」
「いや、この学校に来てるんだからお嬢様に決まってるでしょ!」
「あっ、確かに」
「西井君ってやっぱり面白いね!」
神楽坂さんは俺を見ながら楽しそうに笑った。
―――――――――――――――――――――
ちなみに今回のキューピッドの情報は本当の情報です。
女性の容姿やスタイルを褒めるのは付き合ってからにしましょう。
女性は自分の好きな人から容姿やスタイルを褒められる事が嬉しいのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます