第4話 神様の扱いにはくれぐれも気をつけろ
自分の部屋の扉を開けると置き去りにしてきたはずの、ガムの神様がいた。思わず「あ、あくま」と鷹志は声に出していた。
「誰が悪魔ですって?」
階下から亜希子の怒った声が聞こえてきた。なんでもないよ、と階下の母に向かって叫ぶと鷹志は自分の部屋のドアを閉めた。
「なんでいるんだ?」
鷹志は訊いた。自称、ガムの神様は鷹志の机を指さした。その指の先にはガムのボトルがあった。
「ガムがあるとこなら移動できんねん。」
鷹志は汗をかいた。うそだろ、全力で自転車漕いだ自分の努力は何だったんだ、と思うと太ももの筋肉がピクついてきた。
「責任、ちゃんととってくれるんやろうな。」
そもそも責任って何、と思いなながら、無理無理と手を振った。
「なんでオレにまとわりつくんだよ。もっといいやつに憑けばいいだろ。」
そうするとまるでホコリのようにふわふわと落ちながら近づいてきた。
「お話ができるほうがええやん。なかなか、神になると話ができる人がいないねん。」
絶対、かまってほしさに迷惑かけてくる奴じゃん、と鷹志は思った。そもそもなんでオレだけこんな目に合うんだよ、とつぶやきながら学習椅子に座った。
「素行が悪いからちゃう?」
オレのどこが?と鷹志は言いながらガムの神様を睨みつけた。ガムの神様は鷹志の部屋を見回しながら、陽が落ちるときに、崖の上からガムを吐き捨てたのがいけなかったんちゃう?とだけ言った。鷹志は正論過ぎて何も言えなかった。
「お前のオカン、いつもあんなんなん?おっかないな~。ちゃんと門限は守らなあかんよな。」
うんうん、と頷きながら蛍光灯の周りをふわふわと飛び始めた。
「そもそもさ、ガムの神様って何?神様ってほかにもいるの?」
鷹志が訊くと、八百万の神様って知らんの?と返ってきた。八百万の神様ってガムの神様もいるのかよ。ガムの神様はふわふわと浮かびながら、いい部屋じゃん、とつぶやいた。そして、鷹志のベッドの上にふわふわと降り立つと、くつろぎ始めた。おい、もっと説明しろよ、と鷹志が問い詰めるとガムの神様が言った。
「なんでもかんでも答えると思うなよ、クソガキ、ちょっとはちょっとで考えろや。」
口めっちゃわる、と思った鷹志が、クソヤロウじゃん、と言うと、階下から母の声が聞こえてきた。
「誰がクソヤロウですってー?」
なんでもないよ、と階下の母に向かって鷹志は叫んだ。
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