幕間 マンホールの背景
ガンダムのマンホールを見た後、私たちは緑色のういろうを買って帰りの新幹線に乗り込んだ。
せっかくなので、工藤君と二人で食べてみると、予想通りの抹茶味。濃いお茶が合う甘さだ。
東京に着くまでの間、工藤君からガンダムの話を聞いた。私は、友人や親しい人から、その人が大好きなものの話を聞くのが好きだ。自分の知らなかった世界を教えてくれるのも嬉しいし、その人が楽しそうに話してくれるおかげでこちらまで楽しくなるからだ。
以前、鳩に詳しい友人からポーターというすごく鳩胸で足の長い種類の鳩の話を聞いて以来、今でも鳩の群れを見かけるたびにポーターがいないか探してしまうくらいだ。
そんな私なので、東京に帰った後、ガンダムを観てみることにした。のだけど、タイトルに「ガンダム」とついたものの多いこと多いこと。
どれを観ればよいのだろう。と、考えても仕方ないので、その中で絵がキレイなのを選んでみた。とりあえず、原作者として小田原生まれの富野さんの名前があるから本物だろう。
見始めたガンダムは今から300年ほど先の未来の話らしい。ドラえもんよりも未来の話ということになるのだけれど、タイムマシンやどこでもドアは登場しない。
しかし、二話くらいまで観たところで、どうも工藤君が話していたのとは違う話のような気がしてきた。主人公が動かすロボットも、マンホールに描かれていた鎧武者っぽいロボットとはかなりデザインが違うし。
工藤君に確認してから観ればよかったかな、やっぱりこれはガンダムではないのでは、と思いながら観ていると、不意に主人公の少年が、
「俺がガンダムだ!」
と口走る。君がガンダムか!
主人公がそういうからには、やっぱりガンダムには違いないのか。
しかし、ガンダムって、ロボットのことだとばかり思っていたけど、この少年がガンダムなのか。ウルトラマンのように変身するのだろうか。もう何が何やらわけが分からない。
続きはいったん工藤君に相談してからにしよう、と思い、私は観るのをやめた。
後日、工藤君に話してみると、あれは確かにガンダムではあるのだけれど、工藤君としてはガンダムと認めたくないのだとか。謎はますます深まるばかり。理由についても早口で説明してくれたのだけれど、聞き慣れない単語がちょこちょこ出てくることもあって、あまりよくわからなかった。
ただ、タイトルにガンダムと名のつくアニメが山ほどあって、そのバリエーションも豊富だということと、工藤君のようにファンの人はすごくこだわって楽しんでいることはよく分かった。
なるほどなあ、小田原生まれの人がこれほどのものを作ったのなら、そりゃ、マンホールにもしたくなるよなあ。
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