第6話 髪の毛

 真夜中に目が覚めた。


 喉の渇きを覚えて、ベットから出て台所へ行く。一人暮らし用の部屋は電気を付けなくても台所まで行くのは容易い。

 冷蔵庫にある麦茶を飲もうとコップに注ぐと、不快感があった。

 言いようのない、背筋をぞくりと這うようなもの。後ろを振り返る。

 台所の蛍光灯をつけた。変わらない台所の風景があった。一人が立つのがやっとの小さな狭い台所。人工の明かりに照らされた台所は蛍光灯が届かないところがあって深い闇が所々にある。

 緊張しつつ、コップを傾け、違和感に気がつく。何かある。コップの中を覗く。麦茶を入れたコップの中に明らかに自分のものではない長い髪の毛が浮いていた。それも一本だけでなく、数本の髪の毛が塊になって浮かんでいた。

 不快感が強くなった瞬間、私は迷わずコップの中身を流しに捨てた。詰まると面倒なので、明日にでもパイプ洗剤を流そうと思いながらコップも捨てる。

 予備のコップで麦茶を飲むことにした。今度は髪の毛は入ってなかった。冷えた麦茶は飲むととても美味しかった。

 捨てる事になったあのコップはお気に入りだったのでちょっと悔しい。

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