第2話 よく言われる事

 「霊感少女なんでしょ?ねえ、私なんか憑いてる?」


 校内で、突然知らない人に話しかけられた。私が不思議な「モノ」が見える「霊感少女」であることは小さい頃からこの街に住む住人なら一度は聞く話だ。自分からもう言いふらしたりはしないが、人の噂はいつまでも忘れられることはなく、今でもたまに好奇心を抑えきれない人や、興味本位、本当に困っている人などが声をかけてくる。口調と笑いを抑えられない表情から、この人は興味本位だろう。この顔を、私は何回も見た。

 彼女が吐いた言葉も、何度も聞いた言葉だ。何も知らない幼い頃は正直に答えていたが、あまり正直に答えてはいけないと神主である父親に諭され、そしていくつかの手痛い失敗体験と共に、私は本当のことを答えることを控えるようになった。

 私が何を言うだろうと、期待と冗談が混ざった視線を向ける学生の肩にしがみつく血まみれの女の人が血走った目で私を睨みながら「余計なことを言うな」と聞こえる言葉を呟き続けている。口を一度閉ざす。そして精一杯の笑顔を作った。


「あー。何も憑いてないよ」


 ほんとー?と笑っている彼女の好奇心を満たす程度に適当に話を合わせて別れる。振り返る寸前、血まみれの女は歯を剥き出してニヤニヤと笑っていた。私は彼女の名前も知らない。私にも、出来ることと出来ないことはある。あれは、手を出してはいけない。見えるからこそ、わかる。


 後日、その子が事故に遭ったとグループラインに連絡が入った。

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