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私の人生において、今、私の前にあるとっても高い壁を乗り越えるために、私は秋に出会う必要があった。だから実際に秋は私の前にあらわれた。(まるで救いの神様のように)
人生とは、(あるいは運命とは)案外そう言うものなのかもしれない。
私が秋の力を必要としなくなるまで、きっと秋は私のそばにいてくれるのだと思った。(もちろん逆の場合もある。私が秋の力になることもある。そのときは私は秋が私を必要としなくなるまで、ずっと秋のそばにいるだろう)
高い壁は自分の力だけで乗り越えなくてはいけない。秋は私のことを『ちゃんと見てくれている』だけだ。
でも、それが大切なことなのだと思った。『自分をちゃんと見てくれている人がいるから、人はこんなにも懸命になって頑張れるのだ』。
まっすぐに生きていけるのだと思った。(……進む道に、迷うことなく)
じりりりーと黒電話がなる。(その音を聞いて私はびっくりする)
秋は今、アトリエにいない。
アトリエの中にいるのは私一人だけだった。
私は鳴っている黒電話を見る。
アンティークな(とてもおしゃれな)黒電話。
電話には出てもいいよ、と秋から言われている。
私は悩んだ。(黒電話は鳴り続けている)
私は電話に出ることにした。
がちゃと言う音がして私は受話器をとって耳に充てる。
「もしもし?」私は言う。
「もしもし。あれ? 君、秋じゃないね。誰?」そんな若々しい(小学生の男の子みたいな)大人の大人の男の人の声がした。
その声を聞いて私は受話器の向こう側にいる人が秋のお父さんだとすぐにわかった。
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