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「恋はそれがいつ始まるのか、いつ終わるのか、誰と恋をするのか? あいてがどんな人なのか? 想像ができない。想像ができる恋は恋じゃない。恋は自分が想像できないもの。だからこそ心が揺れる。手に入れたいと本気で思う」秋は小さな胸に手を当てながら、演技をするように言った。

「それは秋のお父さんの言葉だね」

「そうよ。大好きなお父さんの言葉。お父さんはお母さんに偶然出会って、恋をした。そして二人が愛し合って私が生まれた」

「おめでとう」と私は言う。

「夢を見たの。とても幸せな夢だった」

「どんな夢?」興味津々と言った顔で秋は言う。

「もう忘れちゃた」にっこり笑って私は言う。

「忘れちゃたのに幸せな夢だってわかるの?」なんだ呆れたと言った顔で秋は言う。

「うん。わかる。幸せな夢だった」それだけはしっかりと覚えてる。(まくらも涙で濡れていなかったし)

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