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「秋は誰かとキスしたことある?」

 晩御飯のときに秋の手作りの肉じゃがを食べながらそんなことを聞くと、秋はなんだかすごく変な顔をした。

「お父さんとならあるよ。なんども」と秋は言う。(秋はちゅーをする顔をした)

「お父さんいがいの人とは?」

 少し考えてから「……うーんと、ない」と秋は言った。

「私とキスしてみる?」と私は言った。

「え!? なんで!」顔を真っ赤にして(自分の唇を私に両手で隠すようにして)秋は言う。

「私とじゃいや?」

 冗談だったのだけど秋の反応が面白いから聞いてみる? 私はそっと秋に近づく。(秋は私から私が近づいたぶんだけ距離を取る)

 秋は逃げようとする。

 それがわかったのでその前に捕まえる。

「えっと! ちょっとまって! 冗談だよね!」ばたばたと対抗しながら秋は言う。

 もちろん冗談なんだけど、秋が可愛すぎるから危なく本気になってしまうところだった。

 晩御飯のお片付けをしてお風呂に入ってパジャマに着替えをする。

「ねえ、秋。恋ってなんだと思う?」

「自分のかけているものを、埋めることのできる誰かを求めること。それは失ったものじゃなくて、もともとないもの。私たちは生まれたときから完璧じゃない。誰かとつながることで、はじめて本当の自分に出会える」

「それは秋の恋? お父さんのお話じゃなくて?」

「そうだよ。私の恋。お父さんの恋はもっと情熱的だよ。恋はうばうものだってお父さんは言ってた」

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