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「私はきちんと歳をとっていきたい。永遠に十六歳にならないなんて可哀想だよ。十六歳になれば、もっと楽しいことはいっぱいあるのに」

「その代わり辛いことや悲しいこともたくさんあるかもしれないよ」

 そうかもしれない。でもそれでも歳をとることができないなんて可哀想だと思う。

「私の絵が完成したら、私も十六歳のままで永遠に歳を取らなくなる」

「そうだね。そうなると思う」秋は言う。

 でも、その絵の中には私のすべてがある。

「ねえ、ちょっとくらいはこっちも見てよ」

 秋の声が急にとても近くで聞こえた。(びっくりした)秋はいつの間にか、足音を立てないようにして私のすぐ後ろまで歩いてきたようだった。秋の声は耳元で聞こえた。ずっと『森秋』を見ていた顔を動かすと、すぐそこには不満そうな秋の顔があった。

 秋はそっと両手を私の腰のあたりに回すようにして(私のお腹のところで)組むと、私の背中にその体を甘えるようにぴったりとくっつけた。

「秋。急にどうしたの?」

「嫉妬してるの。絵の中の私にばかり夢中になるから。ここにいる私もちゃんと見てよ。そうしないと、もうご飯作ってあげないよ」と口を尖らせて秋は言った。

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