第七十一話:カチコミ、雪山神殿!

 ビャッコレンセイオーで、星魔達を撃破した俺達。


 『勇者だ、今助ける! リザレクトブレイザー!』


 街の人達に向かい叫び、ロボの虎の頭から極大のビームを放つ。


 「ああ、私、生きてる?」

 「おお、怪我が治ってる! 腕もあるぞ!」

 「病気も治った! 嘘でしょ?」

 「ばあさん、わしら若返っとるぞ!」

 「お母さん、目を覚ました~~~~っ♪」


 リザレクトブレイザー、命を救う蘇生の光。


 どんな病も怪我も死亡すら救う力、老人が若返るとかも起こる。


 街の人達が回復や蘇生をして行き、喜びの声上がるのが聞こえる。


 「「ありがとう、勇者様っ!」」


 元気になった人たちが集まり、ビャッコレンセイオーを拝み出す。


 「良かった、皆生きてる♪」

 「流石はレッド、この街に生まれた者として感謝する♪」


 ベラトリクスが礼を言う、良いって事よ。


 フェニックスの力で、守るべき人々の命を救えて良かった。


 『何でヒーローは悪者をやっつけてはくれても、命は助けてくれないの?』


 前世の頃から今でも俺の胸に刺さる家族を失った子供の言葉。


 あの頃にできなかった命を救う力の行使、だが今も心の棘は抜けない。


 ロボを分離して広場に着陸させ、各自の機体から街へと降りる。


 変身を解いて素顔になり、集まって来た人達と顔を合わせる。


 どの人達もモンゴルとネパールとかアジア風の衣装の人々だった。


 本当は、助けた相手と顔を合わせるとかしない方が良い。


 顔を見れば情が沸く、情は新たなトラブルの呼び水になったりする。

 

 でも俺は、自分が助けた命と向き合おうと思った。


 「勇者様だ、五人の勇者様達じゃ!」

 「おお、パイフー嬢もおられるぞ♪」

 「パイフー様も勇者だった、素晴らしい!」


 地元民のパイフーも俺達といた事で歓声が上がった。


 でも何か、住民のテンションが熱狂してね?


 「皆の者、鎮まれ! お嬢様、ご無事ですか?」


 黒いカンフー着を着た灰色の虎獣人の男性が現れて吠える。


 騒ぐ民草を爺やさんが宥める。


 「ああ、爺やも無事で良かった。 勇者達を連れて来たぞ♪」

 「ひとまずは移動を、今後の事もございます故」


 爺やと呼ばれた男性が睨みを利かせると、人々は解散した。


 「よし、片づけを始めて行くか」

 「じゃが、復興などは妾達の仕事ではないぞ?」

 「ですが、救助活動と片付けくらいはしておきませんとね」

 「いつまでもここに滞在してられないしね」


 レオン達が考えを述べて行く。


 「すまない、しばし皆の力を貸してくれ」


 パイフーが俺達に頭を下げた。


 被害状況を確認しに散開、怪我人などがいれば俺を呼ぶ。


 と言う流れで事後処理の開始だ、敵を倒して命を助けるだけじゃ終わらない。


 戦闘の後始末は、レオンの魔法とロボで瓦礫を光の粒子へと変えて更地にした。


 家や身寄りがない面々はひとまず街の住人達で面倒を見て貰う事になった。


 その他はもう、余所者の俺達よりも詳しいミンミンさんとレジスタンスに投げた。


 現場での戦闘と人命救助は全力でやるが、余所者が首を突っ込むべきじゃない事や政治がらみの事などは現地民に任せるしかない。


 俺達には戦力はあるが、資金と時間は潤沢じゃない。


 「助けた後は、助かった人達で立ち上がって頑張ってもらわんと困るよな」


 聖獣達の帖パワーで後片付けを終えて広場に戻り呟く。


 「その通りだ、己の人生の舵取りは己でせねば」


 パイフーが俺の呟きに答えた。


 「うんうん、私達もそれぞれの人生があるしね♪」


 レオンが背後から俺の首に手を回して抱き着く。


 「レオン様、美味しいとこどりはいけませんわ」


 フローラが俺に右腕に絡みつく。


 「そうじゃ、レオン殿はずるいのう!」


 アデーレは俺の左腕にぶら下がる。


 「むむ、では私は足を戴こう」


 パイフーは低空タックルのように俺の足に抱き着いた。


 「いや、お前らロボの合体じゃないんだからな!」


 嫁達の行動に呆れつつも気が軽くなる。

 

 俺達は次の仕事に移行する事を決めた。


 この街を含む地域を荒らす星魔の巣を叩く!


 今回の面子と再び機体に乗り込み、飛び立つ。


 星魔教団の基地は、北西にあり。


 『あいつらの特徴から思い出した、あれはサークリッド星系の奴らだと思う』


 パイフーが変身したベラトリックスが通信で語りかけて来た。


 『そうか、前世では宇宙を渡り歩いてたんだったな』


 彼女が地球でネッケツキラーであった頃、宇宙の流れ者だったと聞いた。


 前世の戦隊時代は、正直メインの敵以外は気にしてなかった。


 宇宙人に詳しい仲間が出来たのはありがたいな。


 『面倒ね、あっちの宇宙では異世界移住がブームなのかしら?』

 『星ぐるみでの地球侵略に負けた以上、残党が散らばるのは仕方なしですわ』

 『う~む、地球とやらは恐ろしい所なのじゃのう?』


 おい、ヘリオスが地球を誤解している。


 いや、侵略する側からは恐ろしいヒーローが守る場所だから間違いではないが。


 『まあ、サークリッドでもヒューマノイドは地球でヒーローになった者もいたようだ。 あの頃通っていた悪党の酒場で聞いた程度の話だがな』

 『ありがとうよ、お前の事も知れて良かった♪』

 『これからはもっと深く知る事になるぞ♪』


 ベラトリクスと会話する。


 『ちょっと、私達とももっと深く知り合いましょうよ!』

 『そうじゃ、今夜は寝かさんぞ!』

 『離しませんから、じっくりお話合いをしましょう♪』

 『おう、俺だって離さねえよ♪』


 何か、戦闘前に嫁達とフラグを立ててしまったが仕方ない。


 地上から上がって来た円盤付きの星魔獣達を各箍撃破で潰し、空を爆炎で染める。


 『山自体が神殿と言うか要塞か! 合体して突っ込むぞ!』


 山の中腹に開いた円形のゲートにビャッコレンセイオーで突入。


 当然ながら待ち構えていた敵兵力と交戦、ビームや砲弾の嵐は気にせず進む。


 『よくぞここまで来たな! サークリッド連合王女、ガーベラが相手だ!』


 だだっ広い地下の円形闘技場で待ち受けていたのは、一台のスーパーロボット。


 人型で背中にデカくて白い環を背負った巨体。


 と言うか頭部にも、肩腰にも大小の環が付いているなあの黄色いロボ。


 『上等だインベーダー! 俺達ネッケツジャーの、ビャッコレンセイオーでぶっ飛ばす!』


 事情があろうがお前ら星魔はこの世界へのインベーダー、守護者として許さねえ。


 「ビャッコグレイブで行くぜ、皆!」

 「ええ、まずは小手調べね♪」

 「敵は二丁チャクラムですわ!」

 「く、興味深い機体じゃが破壊せねば!」

 「レッド、サイクロンスラッシュだ!」

 「オッケー!」


 合体でコクピットが一緒になった仲間達の指示で機体を操る。


 こっちはでかい薙刀を振り回して突進、相手も回転してぶつかり合う。


 まるで独楽のぶつかり合いだ!


 『ぐわ~っ! このリングダインが弾き飛ばされただと!』

 『追撃行くぜ、タイガーブレイク!』

 『舐めるなあっ!』


 ガーベラと名乗る敵の女司令官が、ロボを操りこちらへ廻し蹴り。


 左の肘を打ち上げ蹴りを止め、踏み込んで右の掌打。


 八極拳の猛虎硬爬山もどきで敵の機体を岩壁まで弾き飛ばす。


 『お前ら星魔教団は、この国を支配して何を企んでいる!』


 素直に答えるとは思わないが尋ねる。


 『決まっている、星の魔神様の下にこの星を征服し地球への再侵略を行うのだ!』

 『その野望、俺達がぶつ潰す!』


 やはり敵の理由はロクなもんじゃなかった。


 『お前も来世は真っ当な命に生まれ変われ、熱血一刀流奥義・破邪の太刀!』


 素手からフェニックスオオダチへ武器を変え、刃が輝く必殺の剣技で両断する。


 敵の機体が爆散し、金色の光の柱が立ち上がる。


 ボスを倒した後は、敵の基地の破壊を行い脱出をした。


 地上へと脱出し、機体から降りて敵の基地の方を眺める。


 「まさか、敵の狙いがこっちの侵略だけでなく地球の侵略もだとはな」


 ますます敵の野望を潰さねばと言う気持ちになった。

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