第七十話:ビャッコレンセイオー、吠える!

 洞窟の外へ飛び出し、ベラトリクスの操る白虎王と相まみえる。


 「皆悪い、きっちり勝つから手出しは無用で頼む」


 俺は機体の中から通信でレオン達に告げる。


 「うん、いつもの事だけど無理し過ぎないでね♪」


 レオンは微笑む。


 「あの方だけでなく私達にも、お構い下さいませ!」


 フローラの言葉はもっともだ。


 「まったく、機体の修理するのは妾である事は忘れるでないぞ?」


 アデーレには装備やロボ関係では頭が上がらねえ。


 キッチリ勝って虎を猫に手懐けるさ。


 「ほう、生身の時とは空気が変わったな?」

 「ここからが俺の真骨頂だ、勇者筆頭は伊達じゃねえ♪」


 フラメスナイトと自分をリンクさせる、ロボの体は俺の体だ。


 相手も機体と自分をリンクできているのか?


 通信越しではなく普通に話せてる。


 「ああ♪ やっぱり、戦ってるマッカは素敵♪」

 「レオン様、マッカ様は全てが素敵ですわ♪」

 「同感じゃが、妾達以外の女子には真剣になって欲しくはないのう」


 嫁達の会話も集音で聞こえる。


 良心の呵責で耳が痛いが、勝負となったら目の前の相手に集中する!


 「行くぜフェニックスラッシュ、小手、面、胴っ!」

 「熱い攻めだな、受ける側にも心地いいぞ!」


 こちらの攻撃を相手はサーベル二刀流で受ける。


 「まだまだ行くぜ、切り上げ、切り下ろし、突きっ!」

 「こちらもお返しだ、アイシクルファング!」


 刀を燃やしての連続攻撃、相手も刃に氷を纏わせての二刀の連撃。


 互いに引かず刃を振るい、炎と冷気を爆発させながら斬り合う。


 男は度胸、勇者は任侠の精神で一歩も退かねえ!


 「やはり貴殿は魅力的な戦士だ、もっと私にぶつかって来てくれ♪」

 「言われなくても、俺は目の前の相手には全力投球だ!」

 「もっとだ、もっと来い! 貴殿の闘志と熱意を私に注いでくれ!」

 「同じ事を言う男がいたよ、あんたはあいつにそっくりだ!」

 「他の人間の事など言うな、私を見ろ! いや、私だけを見ろ! 私は貴殿だけを見ているぞ!」

 「ヤンデレか!」


 俺は目の前の相手からかつてのライバル、ネッケツキラーに似た物を感じていた。


 おかしいなあ、月での勝負で奴との因縁は決着が付いたはずなんだが?


 どこか懐かしさを感じつつロボ同士の対決は、空中戦に移行する。


 白虎王が足裏から筋斗雲みたいに空気を噴き出し、雲を作って飛び立つ。


 こちらは背中から炎の翼を出して追いかけ、火炎弾をガトリング式に連射。


 「甘いぞ、アイシクルチャクラム!」

 「上等だよ、デルタブレイズ!」


 白虎王が巨大な氷の輪を作り回転させて振り回し、火炎弾を防ぐ。


 続くこちらは、魔力を凝縮し炎の三角形を生みだして放り投げる。


 相手もこちらに対抗して、氷のチャクラムを投ゲ返してきて衝突し相殺となる。


 炎と氷、相反する属性同士のぶつかり合いなので根性比べだ。


 「どうしたレッド、私を手懐けるのではなかったのか♪」

 「お前まさか、キラーの生まれ変わりかよ!」


 飛び道具のぶつけ合いからロボ同士の殴り合い。


 互いの拳が触れ合った時、白虎王に乗っているベラトリクスから感じた魂。


 それはやはり友にしてライバル、ネッケツキラーの物であった。


 マジかよ、月で良い感じに成仏したかと思ってたのに!


 「お前まさか、我が友ネッケツキラーか?」

 「いかにも、前世の名はネッケツキラーである。 レッドよ、男なら女子の身に生まれ変わらせた責任を取れい♪」

 「TS転生で押しかけ女房って、レオンと丸被りじゃねえか!」


 ないと思っていた縁が繋がってしまった。


 相手の口調から察するに、前世の記憶を思い出して人格が統合されたか?


 いや、転生先とか指定してなかったけどまさかこうも早く再会するとは。


 「上等だ、フラメスナイトパンチ!」

 「ぐはっ、今後とも宜しく頼む」


 空中での格闘戦、俺はロボの拳に炎を灯し必殺パンチで叩きのめす。


 この一撃が勝利の決め手となった。


 殴り合って仲間になるって、本当にバトル漫画だよ。


 そして、白虎王をフラメスナイトでお姫様抱っこしながら着地。


 前世の因縁をしった以上は放置できない。


 こいつに関しても、俺が責任取らないとまずいな。


 前世の縁と言う奴は、俺を離さないらしい。


 まあ、お陰で俺が孤独にならずに済んでるんだがな。


 問題は嫁達をどう納得させるかだよ、男に転生してたなら普通に仲間入りなんだ。


 けれども、ライバル怪人がTS転生してヒーローになったでござる。


 更には責任を取って嫁にしろと言って来る。


 とか言っても、通じるだろうがどうだろうか?


 機体から降りれば、仲間達とお話し合いタイム。


 「お帰りなさいあなた♪」

 「お帰りなさいませ♪」

 「良く戻って来たのじゃ♪」

 「うん、出迎えてくれてありがとう。 実はさ」


 洞窟内に戻った俺は、仲間と話をしようと切り出す。


 「実は私の前世はネッケツキラーと言う怪人だったのだ♪」


 パイフー嬢が笑顔で切り出した。


 嫁達は愕然、女の子がしてはいかん顔になってる。


 「うん、何で私は性別変えるのに苦労したのにあなたは一発転生なの!」

 「はっはっは、ゴールドよ懐かしいな貴殿と拳を交えるこの流れ♪」


 案の定、レオンとパイフー嬢がカンフー映画みたいに素手で格闘を始めた。


 レオンも前世では自分とキャラが被ると、ネッケツキラー時代のパイフー嬢とはぶつかり合っていた。


 「しかし、あの時の怪人が仲間になるとはのう」


 前世の因縁がないアデーレは落ち着いていた。


 「マッカ様ですからね、私は受け入れますわ仕方ありません」

 「え、良いのか?」

 「私が妻の中で一番であると言う自負は、揺るぎませんので♪」


 フローラはどっしりと構えていた、勝てない。


 「私が獅子であなたが虎、何の因果よ?」

 「貴殿と私は裏表のような物だからな♪」

 「そうね、腹が立つけど想いは同じ。マッカの為に、あなたを受け入れるわ」

 「うむ、こちらも貴殿と同じ気持ちだ悔しいが同担してやろう」


 いや、同担とか地球でしか言わん事を言うな。


 レオンも渋々ながら、元ネッケツキラーことパイフー嬢を受け入れた。

 

 新たな仲間とロボが増えた時、洞窟の氷壁に映像が浮かび上がる。


 「なにあれ、円盤の怪獣?」

 

 レオンが映像を見て驚く。


 「む、敵が街の上空に現れたか!」


 パイフーが叫ぶ、敵襲なのは間違いない。


 「皆様、急ぎ向かいましょう!」

 「フローラ殿、皆の者、合体して行くのじゃ!」


 アデーレがいつの間にか、白虎王と俺達の機体を合体できるようにしたらしい。


 「よっしゃ、皆乗り込め! ビャッコレンセイオーのデビュー戦だ♪」

 「うむ、共同作業だな我が夫よ♪」

 「ネッケツジャー、出動だ!」


 各自が機体に乗り込んで空へと飛び出す。


 フェニックスの頭部、白虎の胴体にライオンの下半身。


 土竜の左腕に熊の右腕の五体合体だ。


 「完成、ビャッコレンセイオー!」


 俺が吠えればコックピットの外では、胴体部の虎の頭も吠える。


 「良し、敵がこちらに注目したぞレッド!」


 ベラトリクスが叫ぶ。


 「来いよ星魔共、これ以上街に被害は出させねえ!」


 敵の姿で共通しているのは、円盤に手足や頭が生えた形。


 それとビームが標準装備って所か!


 街に倒した敵の残骸落とすわけには行かねえ、超高高度までぶっ飛ばす!


 「ベラトリクス、白虎王部分の武装を使わせてもらうぜ?」

 「構わん、我が夫よ♪」

 「まだ早い、タイガーブリザード!」


 ビャッコレンセイオーのタイガーヘッドボディから、冷気を纏った竜巻を放つ!


 巻き込まれた敵の雑兵達は吹き飛ばされつつ凍り付き、大気圏辺りまで富んで粉砕された。


 残るはデカいのが一匹、両腕に盾みたいな円盤が付いてる昆虫ロボだけだ。


 「お次はレグルス、キングネメアの爪を借りるぜ?」

 「勿論、あんな盾っぽい装甲何てネメアの爪なら紙切れよ!」

 「ありがとよ!」


 ビャッコレンセイオーの両手甲から光の爪が生える。


 「レッド様、グリズリーのパワーもお使い下さい!」

 「妾のモールのドリルも使うのじゃ!」

 「二人ともありがとう、タイガーラッシュ!」


 機体を敵に突撃させ、まずは両手の光の爪を振るう。


 やはり盾の機能があるのか敵はガードする、だがこっちの光の爪はガードごと敵の腕を切り落とす。


 止めは膝からドリルを生やしての、ニーキックで爆散!


 「よっしゃ、ビャッコレンセイオーの初勝利だ!」


 俺が勝利の雄叫びを上げれば、地上の街の人達が歓声を上げた。


 俺一人じゃできる事は限られる。


 けど、力を貸してくれる仲間やロボや人々のお陰で無敵の働きができるんだと改めて感じられた戦いだった。

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