第六十三話:ボス戦開始、生身戦パート

 さて、今度は助けに行くか。


 ロボから降りてタン将軍を解放しようと彼の下へ向かう。


 「おい、その人はこちらで面倒見るから渡してもらおうか?」


 機体から出ていたタン将軍を両脇から担ぎ上げた帝国兵士が俺を睨む。


 「「二エはワタサヌ!」」


 案の定、兵士達は黒い狐怪人と言うべき姿に変身して襲いかかって来た。


 「げげ~っ! 兵士が化け物に、こうなりゃ退治するしかねえ!」


 敵の攻撃は回避し、わざとらしく大声で叫びながら浄化の光りを客席に放って人々を正気に戻す。


 「おい、なんだあの狐の化け物は!」

 「神聖なガランピックを侮辱する者がいるぞ!」

 「ヘ、兵士達が次々と化け物に!」


 客席で正気に戻った人々がパニックになる。


 「良し、聖獣武装っ! 不死鳥の勇者ネッケツレッド!」


 俺は変身して名乗り、怪人達を刀で斬り捨て焼き尽くす。


 「お待たせしました、ネッケツブルー見参でござる!」

 「ネッケツイエローですわ♪」

 「夫の棒読み台詞がに愛しさを感じた女、ネッケツゴールド!」

 「またレッドがやらかしたな? ネッケツグリーン到着だ!」

 「客席は僕達にお任せ、ネッケツピンクでっす♪」


 グリーンとピンクも到着して動き出した。


 「すまぬなレッド殿、迷惑をかける」

 「気にすんな、あんたもこき使うから」


 俺はタン将軍に回復魔法を掛けて自立行動できるようにする。


 「かたじけない、我も戦おう!」


 闘技場内に空から八色の合体ロボ、ハチダイレンセイオーが降りて来る。


 『待たせたの、ネッケツブラウンが巨大ロボのお届けじゃ♪』

 『ネッケツシルバーも一緒です』


 全合体した俺の愛機に先に乗っているのはブラウンとシルバー。


 俺達戦隊が大いに騒がせている中、パティ姫がハッティに乗り込む。


 『帝国第百八皇女パティ、八色の勇者様達と共に主犯であるテイル皇妃を断罪いたしますわ!』


 象ロボの中から高らかに宣言、成長したなお姫様。


 かくして、主役サイドは出そろい生身戦と巨大戦のどちらの対応もできる状態となった。


 「我らネッケツジャー、ガラム帝国の国難を救いに見参!」


 これは真剣に叫ぶ、宣戦布告だから。


 ここからは俺達が攻める番だ。


 「オ~ホッホッホ♪ よくもやってくれたわねヒーロー共!」


 貴賓席から皇帝を伴って飛んで来たのは黒い狐の仮面を被った白いドレスの女。


 「ち、やはり皇帝が人質か?」


 高らかに笑うテイル皇妃が突然蹴り飛ばされる。


 「長い三文芝居は終わりだ女狐よ」


 言い放ったのは皇帝、やっぱり洗脳されたフリか。


 壁まで蹴り飛ばされたテイル皇妃は、全身を黒い狐怪人風の外骨格に変える。


 「おのれ、やはり我が術も誘惑も効いてなかったのか!」


 テイル皇妃が恨みがましく叫ぶ。


 「全てはこの場で貴様を討つ為だ、星から来た魔物よ」

 「いや、しれっと抜かしてるがな? 民や妻子に迷惑かけたり、娘を悲しませてんじゃねえ!」

 「がはっ! ……勇者よ、感謝するっ!」


 俺は我慢がならず、皇帝の腹にボディブローをかまして黙らせタン将軍に預けた。


 「うむ、預かった。 では我はこの皇帝を連れて退避しよう」

 「ああ、その男は後でみっちり嫁さん達にシバかれれば良いと思う」


 ヴィヤグラ八世を担いだタン将軍は疾風のごとく走り去って行った。


 「……く、こんな世界にもこのブラックテイル様の邪魔をするヒーローがいたなんて忌々しい!」


 ブラックテイルがこちらを睨む。


 「あら、何処の世界にも正義のヒーローってのはいるものよ♪」

 「異界の悪党、覚悟するでござるよっ!」


 ゴールドが煽り、ブルーが抜刀して構える。


 「パティ姫を悲しませた罪、断じて許しませんわ!」


 イエローも激怒モードになる。


 「大方、地球で悪事をしくじって逃げて来たんだろう」

 「雑魚怪人ですね、わかります」


 グリーンとピンクも煽る。


 『たわけが、魔力を奪い巨大な星魔でも召喚しようとしたんじゃろ?』

 『私達ネッケツジャーがいる限り,そうは問屋が卸しませんよ』


 ブラウンとシルバーも挑発する。


 「く、忌々しいね! 皇帝には本気だったのに、けどこっちもただじゃ終わらないよ! この国も世界ごと纏めてぶち壊してやる!」


 ブラックテイルが叫べば、奴の影の中から怪人軍団が洗われる。


 俺らヒーロー戦隊よりも、バイクキッカーの方の怪人かなこいつ?


 「おっし、お約束の生身戦からだ♪ ネッケツジャー、ゴー♪」

 「「応っ!」」


 迫り来る敵軍を迎え撃つ、俺達戦隊の戦いは合戦方式。


 まずは敵の兵を削ってから、一騎討ちで大将首である怪人を倒す。


 一騎討ちで倒しても一回は蘇るかもだから、その時は合体技で止め。


 「夫と家族と仲間と民以外は近づかないでくれる? ライトニングピアス!」


 ゴールドの光りを纏った獅子奮迅の槍の刺突が敵群を穿つ。


 「狐が熊に敵うわけございませんわ、イエロースイング!」


 イエローはジャイアントスイングの要領で敵を振り回しながら敵を殴り倒す。


 「レッド殿と被りますが拙者も剣士、ブルースプラッシュ!」


 ブルーは足と刀に流水を纏わせ、激流の如きスピードで敵を切り裂く。


 「俺は地味だが確実に仕留める、グリーンスパイラル!」


 グリーンは矢に疾風を纏わせて放って行く、どれもヘッドショットで必殺必中だ。


 「僕の鞭は痺れますよ、ピンクホイップサンダー!」


 ピンクが鞭を振るえば、敵の頭上に稲妻が落ちて邪悪を砕く。


 「ちい! これだからチームのヒーローは嫌なんだよ!」

 「じゃあお望み通り一騎打ちで相手をしてやるよ!」


 俺はブラックテイルに突撃し斬撃を浴びせる。


 「あら、あんた皇帝みたいな良い男ね♪」

 「魅了は効かない、嫁ならもういる!」

 「なら殺してお前を奪ってやる!」

 「ふざけんな!」


 ブラックテイル、腕の立つ怪人だが戦闘力より言動がおっかない。


 そして何より、後ろから嫁である仲間達が不機嫌になってるのが怖い。


 尻尾は三本、九尾ではないようだ。


 「行くぜ熱血一刀流奥義、破邪の太刀!」

 「身代わり尻尾!」


 こちらの必殺技に対して尻尾を一本代償に生き延びたブラックテイル。


 やはりあの尻尾はライフゲージか。


 俺は仲間達の下へ飛び退いて合体技に入る。


 「お帰りなさいませ♪」

 「ダーリンの成分が染みわたるわ♪」

 「さあ、合体技と参りましょうぞ♪」

 「妾達も参加するぞ」

 「ロボはアイドリングしてます」

 「レッドは厄介な女にもてるな」

 「前世から変わりませんね」

 「私も来たわよ♪」

 「アップルも来たか、ならバリアントバズーカだ♪」


 女性レッドことアップルも加わって全員で馬型のバズーカを担ぐ。


 「また増えただと! どんだけいるんだ!」


 ブラックテイルが毒づきながら、四足獣形態へと変化する。


 「お約束よね、敵側がああいう変身したら負けるって」

 「尻尾は二尾、バズーカで倒して残り一尾で復活でしょうか?」

 「それもお約束でござるな、最後は巨大戦でござるよ♪」

 「これはある意味儀式みたいなもんだ、手順に沿って退治するぜ皆!」

 「「応、バリアントバズーカ!」」


 ゴールド達がお約束について語りながら狙いを定める。


 敵の怪人が変身したら負けフラグと言うのは伝統だ。


 敵は口から煙を吐いて突進してくる。


 俺はバズーカの引き金を引き、虹色のビームをぶっ放して迎え撃つ。


 ブラックテイルにビームが着弾し敵が爆炎と光に包まれる。


 「ふあっはっは、私にはまだ二本尻尾が残っていたのはわかったんだろう?」


 案の定、残りの尻尾が一本になった姿であ爆炎の中から現れたブラックテイル。


 「そんな事はわかってる、ガランピックの決勝戦らしく巨大戦で決着を付けようぜ!」


 俺は巨大戦を相手にふっかける。


 「その挑戦を悔んで死ぬと言い、出でよ伝説の大鍋!」


 ブラックテイルが叫び、彼女の足元が揺れて巨大な黒い鍋が顕現する。


 鍋に描かれるのは猿、蛇、虎、鳥とこれまで俺が倒してきた相手のモチーフの動物の頭とどこか鵺の伝説じみていた。


 ブラックテイルが空へと浮き上がり、上空に浮かんだ鍋に吸い込まれると暗黒の鍋は獣の頭を持つ黒い巨大ロボへと姿を変じる。


 「良し、こっちも乗り込むぞ!」

 「「応っ!」」


 敵がロボを出したなら、こっちもハチダイレンセイオーへと乗り込む。


 さあ、真の決勝戦ガランピック最後のロボットバトルの開幕だ。

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