第六十二話:準決勝

 時間が出来た内に俺もフラメスナイトに乗って動かす。


 神の世界の空を飛ぶのは気持ちいい。


 今はハッティに乗っているが、俺のメイン機体はフラメスナイトだ。


 フラメスナイトのご機嫌取りを終えて滑走路に着地。


 「ふう、次はパティ姫の剣の稽古だな♪」


 機体から降りて次の行動に備える俺。


 神に覚醒したパティ姫もハッティに乗れるようになった。


 機体の正当なパイロットであるだけあって、操縦訓練で象形態と人型形態を交互に操るなど彼女のパイロットとしての適性は高いと言えた。


 幼子を戦場に出すのは好ましくないが、彼女自身は戦士の魂が芽生えて来ていた。


 大会が終われば、機体をお返しできるな。


 屋外の稽古場に刀を二振り腰に差して稽古着姿のパティ姫がやって来た。


 「よし、それでは始めましょう♪」 

 「はい、宜しくお願いします♪」


 礼に始まり稽古を開始、互いに抜刀して向き合えば姫が打ち込んで来る。


 「マッカ様、如何ですか私の双刀術は?」

 「ああ、良い打ち込みだぜ♪」


 パティ姫の二刀を俺も二刀で受け止めつつ答える。


 アップルが管理する神の世界は時間の流れは現実とは違う。


 肉体や精神の加齢を気にせず過ごせるから、みっちり年単位の稽古ができる。


 パティ姫の剣術は、俺が指導するのはいいのかと思っていた。


 仲間達から、剣技のトップなんだから面倒がらず教えろと言われて担当になった。


 「はい、受けられたらすぐに退く! 無理に力比べはせずに動き回って!」

 「はい、パオ~~~~ッ!」


 俺の言葉に従い動き回りつつ、あちこちから打ちかかる姫。


 その剣戟を受けては返し、こちらからも攻めれば見事に防ぐ。


 獣人族、オーガやオークにドワーフと言った脳筋族並みのパワーがある。


 獣相の元の動物にもよるみたいだが、パティ姫は十歳にしては剛力と言えた。


 「はい、今日はここまでです♪」

 「ありがとうございました♪」


 礼に終わり、去っていくパティ姫を見送る。


 彼女の次の稽古はフローラの格闘術だ。


 パティ姫の成長は早い、現世に戻ったらヤバい戦士になるぞ。


 いや、今後の困難を乗り越えるには強さは必要だがな。


 稽古の後はレベル上げ、神の世界に出て来る虫や獣型の魔物を姫に倒させる。


 「今日は森で魔物狩りをしましょう♪」

 「はい、美味しいお肉を手に入れますわ♪」

 「レオン、姫に無茶はさせるなよ?」

 「大丈夫よ、一番無茶な人がいるから♪」

 「そうです、マッカ様が一番無茶をする人です♪」

 「それを言われたら、返す言葉がねえ」


 レオンと三人で神世の森を進む。


 首位の気配を探り、黄金お林檎を食べつつ進めば魔物とエンカウント。


 「行きますわ、ウィンドバレット!」


 パティ姫が叫び突き出した掌から、緑色に光る風の弾丸が飛び出して行き猪型の魔物の頭部を粉砕して倒した。


 「いや、これは育て過ぎたか?」


 パティ姫、十分戦場に出ても武勲を立てられるぞ?


 「この世界の初期の私達程度には仕上がったわね♪」


 レオンがシレッと言う。


 「はい、今後も精進して邪神にも負けない位になりたいです♪」


 パティ姫が瞳を輝かせて俺達を見る。


 「マッカ、言いたいことはわかるけど次世代の戦士の育成も必要なのよ?」

 「けどなあ、姫には楽しい子供時代を過ごしてもらいたいんだよ」

 「私、今の時間は楽しいですわ♪」

 「まあ、ポジティブで素敵♪」

 「まあ、事が片付くまではしっかりお守りするぜ」

 「宜しくお願いいたしますわ♪」


 パティ姫をバトルプリンセスへと鍛え上げてから現世に戻った俺達。


 敵も準備をしているだろうがこちらも備えてる、ガラム帝国の皆さんにはこの後で街を戦場にしてごめんなさいと今の内に心の中で謝る。


 こちらも相手に乗せられた振りをして闘技場へ向かう。


 対戦相手は、精悍な顔つきをした中華鎧の武人の男性タン・タンメン。


 「余所者同士の対決か、勇者の腕前見せて貰おう♪」

 「きっちり片を付けて、お帰り願うよ」


 悪人じゃなさそうだが読めない、鍋の国の狙いがわからん。


 相手は白い虎人間型の機体、ヒロイックな奴だ。


 誰が相手であろうとも、代理闘士として勝ち抜くのが俺の仕事。


 『来るぞ、マッカよ!』

 「合点、カウンターだ!」


 相手の機体がカンフー映画で見た八極拳風の突進。


 こっちの機体は、ムエタイ映画からパクった飛び膝蹴りだ!


 双方衝撃で吹っ飛ばされる、そしてこちらは機体から炎の翼で姿勢制御で着地。


 相手も竜巻をクッションにして仕切り直し。


 準決勝だけあって、油断できない相手だよ。


 離れた所からパンチのラッシュで空気弾を飛ばして来る相手。


 こっちも、火炎弾をラッシュで飛ばせば相殺される。


 相手のパイロット、ロボが無くても強いな。


 こういう手合いの気持ちはわかる、遊んでるんだ。


 「武人ってのは、これだから止められねえよな♪」


 その遊びの誘い、乗ってやるよ。


 パティ姫が見せたように機体を象形態に変形させ、牙から極太の火焔放射をしながら突進。


 「火猪ならぬ、火象の計って奴だ!」


 相手は避けずカウンターを狙う。


 だが、俺がただの突進をすると思たか?


 急ブレーキ、からの勢いで牙を突き上げ投げ飛ばしだ!


 格闘ゲームの技キャンセルから別の技に行く、相撲の投げの応用だ。


 客席から歓声が沸き上がる。


 これで勝てれば万歳だがそうじゃねえ。


 相手も、風のクッションでダメージ軽減して立ち上がる。


 ゲージはちょっとしか減らせてねえな。


 機体を人型に戻して構える。


 『ほう、面白いな♪ 何処の国にも似ているようで似ていない技だ』

 「おしゃべりは試合後にしようぜ、得物で来いよ将軍だろ?」

 『うむ、貴殿の剣と打ち合て見たかったぞ♪』


 こっちが二刀流で構えれば、相手は中華の大刀を中段から脇ににずらす。


 『吠えよ風、唸れ刃! 風神乱舞っ!』


 タンの機体が大刀をぶん回せば竜巻が複数発生し、俺の方に襲い来る。


 「悪いな、北風と太陽は太陽の方が勝つんだよフェニックスバスター!」


 こちらは、自分が乗っているロボよりも巨大な火の鳥を生み出して竜巻も相手も吹き飛ばす! 


 マップ兵器の威力は初めてかい? 


 火の鳥も竜巻も消えれば、相手の機体は焦げやへこみはあるも五体満足。


 ダメージコントロールが上手い相手だ。


 「流石はスーパーロボットだな、敵にすると面倒臭い」

 『あのガドゥンガンは我に負けぬ頑健さを持つ、根は気の良い娘なのだがな』

 「そうか、だが決めるぜ俺達は勝たなきゃならねえ!」


 この気分の悪いスーパーロボット対決祭りを終わらせて悪の野望を叩き潰す。


 それで姫やこの国の人々を助けるプランは変わらない。


 皇帝が何を考えているのか、敵は何を呼び出そうとしているのか?


 謎は出て来てもバトル専門の俺には解く暇がない。


 『面白い、面白いぞ勇者よ♪ さあ、まだ勝負はこれからだ♪』

 「無駄に元気が良い将軍だな、退き際見極めてギブアップしろよ?」

 『そのような勿体ない事ができるか、武人たる者は前のめりだ♪』

 「ああくそ、愛すべき馬鹿の類だこの人! 無視できねえ!」


 キラキラした目でこっちに向かうのが想像できる。


 俺も真っすぐバトル大好きだもん、同類の臭いは感じたさ。


 だがこっちはただの武人じゃなくて、悪を倒して人を助ける正義のヒーロー。


 決めさせてもらうぜ。


 『誠にすまぬ、マッカよ』

 「気にすんな、こういう手合いの面倒を見るのもヒーローの務めだ」


 相方を慰めつつ必殺技の構えを取る。


 相手は雄叫び上げながら特攻してきたよ。


 「受けて見よ、熱血二刀流奥義フェニックスダイブ!」


 象ロボットで不死鳥とはこれ如何にだが、全身を火の鳥と化して突撃。


 相手を炎のに包んで切り抜ける。


 残心を極めれば、背後で爆発が起こりガドゥンガンと言う虎ロボットは倒れた。

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