第六十話:願望の鍋
試合が終わると、何かが体から抜けた。
「うん、異状はないわね? フローラはどう?」
「こちらも呪詛などの類は見つかりませんわ」
「待って下され、狐に介入された足跡がありまする!」
控室に戻った俺をレオン、フローラ、アオイの三人が俺を囲み瞳を輝かせる。
彼女達が地球の神から授かったチート能力、ステータス閲覧。
ゲームキャラのステータスを見るように対象の素性を調査できる力。
レオン曰く、プレイ画面を越えて開発画面とかレベルまで見られる。
その力で俺に異常がないかを見て貰う。
「おいおい、やっぱり何かされてたのか?」
異常を見つけたアオイに尋ねる。
「魔力が奪われた形跡を確認できたでござる、回復はしているでござるが」
アオイが告げる、マジかよ!
「ストレス値も減っておりますわ、どういうわけかわかりませんが」
フローラも異常を見つける。
「魔力とストレスを抜く、これは何かのコストにされてる気がするわね?」
レオンが俺と同じ答えに辿り着いた。
「皆様、何を仰られているのかがわかりません」
俺達の様子を離れて見ていたパティ姫が疑問を投げかける。
「ああ、マッカ達は敵の狙いに気が付いたようなのじゃよ♪」
「そ、そうなのですかアデーレ姉さま!」
アデーレの言葉にパティ姫が驚く。
「はい、所で姫様? この国には、何か願いを叶える魔法の道具のお話はございませんか?」
クラウが姫に尋ねる。
「も、もしや狐の皇妃はマッカ様達の魔力を集めて願いを叶えようと?」
姫も何かを察した、賢いなお姫様。
「ええ、姫のお考えの通りとんでもない事が起こるかも知れませんわ」
フローラが穏やかに姫に尋ねる。
「私の知る限りでは、ご馳走をいくらでも出せる魔法のお鍋のお話がございます」
姫がマジックアイテムの存在を教えてくれる。
「決まりね、敵はそのお鍋を邪悪な願いを叶える道具にするつもりよ」
レオンが答える。
「ああ、もう少し砕くと願いを叶える魔法の道具を魔力で違う願いを叶える道具に変えて使おうとしてるかもって話だ」
俺が補足するとパティ姫が驚いた顔をした。
「マッカ様、武勇のみならず知性も優れたお方だったのですね!」
「ひどい、俺は脳みそ筋肉じゃないよ!」
幼子の素直な言葉が胸に刺さる、俺は学校の勉強も真面目にしてるんだ。
バッシュにはヤンチャ系とか、学園一の不良とか言われてるが誤解だ!
「そうなのですよ姫様♪ マッカ様は、頭も良い方なのです♪」
「私、マッカ様の強さしか見ておりませんでした。 反省いたします」
よし、これで脳筋イメージが消える♪
「それでは、マッカさんには引き続き試合で頑張っていただきましょう」
「そうじゃな、妾とクラウはその魔法の鍋の調査に行こうぞ」
クラウとアデーレが別行動を提案する。
「そうね、頭脳明晰な二人にお願いするわ♪」
レオンが納得する。
「拙者とフローラ殿とレオン殿はマッカ殿のサポートと姫の護衛でござる」
「戦隊ならではの役割分担ですわ♪」
アオイとフローラが役割を述べる。
「そっちも気を付けてくれよ、二人共いざとなったら逃げてくれ」
俺はアデーレとクラウに告げる。
「わかっておる、妾達は引き際は心得ておるからの」
「突進力は逃げる時も活用できますから」
家のブラウンとシルバーは頼もしかった。
姫も含めて俺達は拳を突き合わせてから行動を開始。
皇妃、テイルとか言っていたな。
魔法の鍋を俺達から奪った魔力で己の野望を叶える道具へと変容させる。
前世の地球でもそう言った、魔法の力を悪用する輩はいた。
魔法中心の世界であるこっちでも、同じ事を企む奴がいないわけがないよな。
「マッカ、一人で思い悩まないの♪」
「いや、急に抱き着くなよレオン!」
「良いじゃない、妻の正当な権利よ♪」
「姫の前でやるなっての!」
レオンが俺に抱き着いて思考に割り込む。
「レオン殿、また抜け駆けを!」
「レオン様は、抜け目ないですわね」
アオイとフローラは姫の傍にいてぐぬぬと唸る。
いや、そう言う姿は子供の前で見せちゃ駄目!
「……マッカ様、家の父上と同じでだらしないです」
パティ姫が冷たい目で睨む、依頼人の好感度が下がっちまったよ。
こうして、俺達戦隊はまた分散して行動を開始した。
俺は相変わらずファイア&ムーブメントのファイア、正面からの囮を担当。
試合の場に立ち相まみえるのは、赤い鳥の頭を持つ短パン一丁の格闘士の青年。
「貴様、西方の同類だな? 我が名はルーダ、鳥の戦士だ!」
「マッカ・サンハート、不死鳥の勇者フラメスことネッケツレッドだ」
「複数の名を持つ勇者か、相手にとって不足はない!」
「ああ、全力で挑んだ上で勝たせてもらう!」
異国で出会った、同じ属性キャラクター。
格闘ゲームの同キャラ対戦みたいな気分だが、負けてはいられない。
相手は烏天狗みたいな鳥人間ロボ、こちらは象人間ロボに乗って試合開始だ。
相手のロボは背中の翼を広げて飛翔、上空から炎に包まれた羽を降らせる!
「フィールドで耐える!」
こちらは自分の機体を中心に炎のバリヤーをドーム状に展開して耐える。
周囲の地面がボンボン爆発する中、敵の次の攻撃に備える。
モニターチェック的な事をすれば、客席ではパティ姫達が観戦していた。
『上から来るぞ、蹴りだ!』
「わかる、俺も同じ技が得意だ!」
空から降って来るのは、流星の如く炎の魔力のフィールドを纏った蹴り。
こちらは呼吸を整えて、大地から熱エネルギーを汲み上げて拳に力を集める。
「喰らえ必殺、バーストアッパー!」
相手の技に合わせてアッパーカットを繰り出し、組み上げた力を火山の噴火のように放出する。
蹴りと拳がぶつかり合い大爆発が起こる。
相手の機体は吹き飛ばされつつも回転して着地。
『……句、我が蹴りが敗れるとは! だが、まだ終わりではないぞ!』
相手の機体は右足が吹き飛び片足立ち状態でも、拳を構えて突進。
「受けて立つぜ、せりゃっ!」
大地を踏み、パンチを繰り出す。
灼熱の拳同士がぶつかり合い、インファイトで殴り合う。
何と言うか、試合と言うよりは昭和の漫画の河原での殴り合い。
『まさかあ奴とこうして殴り合う時が来るとはな』
「身内同士で喧嘩させちまて悪いが、気張ってくれよハッティ?」
『任せよ、地上での喧嘩は鳥よりも象の方が強いわ♪』
「……いや、俺も本来はあっちと同じ鳥の人なんだがな?」
試合も三回目となると、ハッティとも打ち解けて来た。
いや、俺の愛機はフラメスナイトなんだがな?
こちらは両腕で受けてガードしつつ殴るスタイルで相手を迎え撃つ。
殴り合いで決着となるかと思いきや、相手が距離を取ると背中の羽が刀となり
二刀流スタイルになった。
『あやつも剣士、そなたと同じだな』
「ここまでキャラ被りは初めてだよ、こっちも行くぜ!」
こちらの機体は象の牙の刀で二刀流。
互いに踏み込み、双方ともに左右の刀で激しい打ち合いとなる。
「く、鏡を見ている気分だぜ! だが、なおさら負けられねえ!」
相手からも同様の気迫が伝わる、拳での殴り合いから刀での殴り合い。
どちらも引かず前に出ては弾かれ会い、双方下がりまた前に出る。
いや、マジで逃げられない互角の相手と当たっちまったよ。
剣術大会の時は小技で絡め手をしながら勝ちを手にできた。
だが、ルーダとか言う選手の機体にはそんな事をしている余裕はない。
相手の機体は、片足でこっちと互角の剣技をロボで出して来るんだ。
下手な小細工をする暇はない、真っ向から相手の刃と向き合うしかない。
属性も得物も技量も同じと言う、とんでもない相手との根性勝負。
何度目かの鍔迫り合いから、相手が後ずさり二刀を巨大な一刀へと変える。
『決め時だな、行くぞ!』
「おう、真っ向勝負で行くぜ。 熱血二刀流、星切りの太刀二段切り!」
相手は大上段から振り下ろして斬撃を飛ばして来た。
こちらは流星の如く光を纏い突進、相手の斬撃を切り上げて払い接近。
これが一段回め、続けて二段階目は左右から袈裟斬りで切り下ろす。
相手の首と両腕を胴体から切り落とし、残心を決める。
勝ったと同時にまたしても、体から魔力が抜かれ機内でよろめく。
「くそ、マジで蟲毒かよ? インドより中華じみた術式だな?」
術式の主であるテイル皇妃に対して毒づく。
絶対に許さんと思いつつ、俺は準決勝へとコマを進めたのであった。
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