第五十八話:いざ、ガランピック開幕!
黄金の獅子の旗を掲げ、石造りの街を進む俺達。
ネッケツジャー六人がマジックメイルでハッティを護衛し行進。
ガラム帝国も五ヶ国同盟の威光には手が出せず、俺達はガラム帝国へと来れた。
ターゲットの狐の皇妃も頭が回るが故に歯がゆいだろう。
虎の威を借る狐に対してこっちは、獅子やら猛獣やらの威を借りてる。
損得勘定ができるとかえって自由に動けないよな。
レオンやアデーレにアオイにクラウ。
俺の嫁さん達を経由して、即日でパティ姫は西側各国とミズホ国のトップと面会し協力を取り付けた。
上様、教皇猊下、皇帝陛下は自分が出ると言い出したのは参った。
俺以上にパティ姫の為なら世界大戦起こす気満々だったよ、家のトップ達。
俺が行くと言ったら、彼らに名代にされたので責任が重い。
男は度胸、勇者は任侠。
弱きを助け強きを挫く。
敵に回すとおっかないが味方にすると心強い。
外圧と武力も駆使してどうにか俺達は立場と参加を認めさせた。
「お母様~っ!」
「パティ、よくぞ無事で!」
俺達の滞在場所に指定されたのはインド映画で見た庭も家屋も広大な屋敷。
離宮の一つだそうだ。
豪奢な玄関ホールで、パティ姫と彼女の母親であるパール皇妃が抱き合う。
パール皇妃は完全に白い象の頭を持つ獣人だった。
外圧パワーで、一時的に皇妃の保釈に成功した俺達は抱き合う母子の姿に涙する。
「皆様、娘をお救いいただき誠にありがとうございます!」
皇妃が泣きながら俺達に礼をする。
「いえいえ、まだこれからですわ♪」
レオンが微笑む。
「必ずや我らがお二人もこの国もお助けいたしまする!」
アオイも拳を握る。
「代理闘士の任、果たして見せます」
俺も誓う、罪なき人々を苦しめる輩は許さん。
パール皇妃の安否確認はできた。
ガラム皇帝も妻達に情はあるのか、殺したりはせず隔離みたいな状態だそうだ。
格子付きの馬車に乗せられ護送されて行く皇妃を見送る俺達。
「皇妃達の方には。クレインとバッシュを向かわせているから安心して♪」
「隠密行動とかが得意なあの二人なら安心だ♪」
レオンが俺に無邪気に抱き着き、こちらに耳打ちする。
クレイン達も動かしてくれていたのはありがたい。
休みだった彼らからシフト変更された事に文句を言われそうだが、素直に聞こう。
あの二人なら、皇妃様の暗殺を防いでくれる。
俺にも死者蘇生の力はあるが、それは最後の手段。
魔王軍との戦いの時にした蘇生行為は、女神様から許された。
魔王戦後の今は、ホイホイとは使えない。
世界のバランスとか考えた上で力を使えと、女神様から制限が課せられた。
それに、蘇生できるから死なせても良いなんて事は絶対にない。
狐の皇妃が俺達が思うような悪党なら、姫の前で皇妃を殺害とかしかねない。
子供の目の前で親を殺させるとか、絶対にさせられん。
他の皇妃様も同様に隔離されてるから、そっちも助けないと。
三十分番組みたいに、中々一気に解決とはいかない。
俺達がこっちに掛かり切りの為、通常業務である各国の防衛とかは花鬼生徒会に頑張ってもらうしかない。
十三人のヒーローチームなのに、半数以上をこっちで使わせてもらうのはリーダーとして申し訳ないと思う。
埋め合わせは今回の件が終わったらしないとな。
俺が一人で考えを巡らせる中。
パティ姫にはフローラとアオイとクラウが付いていた。
アデーレは、象ロボットのサフェードハッティの中でメンテ中だ。
彼女は魔神と言う未知のロボに興味津々だったからな。
いや、俺も気になるが人んちの物をあれこれするのは気が引ける。
解析だのは専門家に任せよう、俺は真っ向からぶつかるだけだ。
三日後、郊外にある超巨大闘技場に俺達は集っていた。
円形闘技場ってのは、何処も似た感じだな。
良い天気の下で花火が上がり、闘技場の外には屋台が並ぶ。
使命がなければ、仲間達と観光を楽しみたいほどに賑やかなお祭りだ。
巨大ロボがぶつかり合う場内に地球で言う、中華風で豪奢な真紅の櫓が組まれる。
俺や他の選手は、櫓の前に集まりスピーチを聞く。
その辺りは、地球のスポーツ大会とかと変わらない。
何処からか風と共に疾走してジャンプし、櫓の上に立ったのは一人の偉丈夫。
黄金の鎧を纏った頬に虎の縞があるイケメン獣人。
あれがガラム帝国の皇帝、ヴィヤグラ八世か。
狐の妃ってのは隠れてるみたいだな。
「これよりガランピックを開催する! 戦士達よ、全力で挑むが良い!」
皇帝は短いスピーチの後に櫓からジャンプし、貴賓席へと飛んで行く。
皇帝から発せられた魔力は強かった。
戦えば手強い相手になる、そりゃ狐が威を借りるにふさわしい相手だ。
何を考えているのかはわからん相手だが、やるしかあるまい。
魔王や邪神とも戦って来た、皇帝だろうと対決するなら全力だ。
パティ姫の父親でもあるが、だからこそ子供を悲しませる父親はいかん。
俺自身も前世では決して良い父親じゃなかったから、なおさら許せん。
近親憎悪の八つ当たりだろうが、やってやる。
己の中で闘志を燃やしモチベーションを上げつつ、一時解散。
次にこの場内に立つのは試合の時だ。
木の机と椅子のみの簡素な控室に入り仲間達と向き合う。
ありがたい事に、控室に入る前に襲撃とかなかったよ。
場外乱闘とか、盤外戦術は何処の世界でもあるけどな。
「さて、いよいよ試合ね♪」
レオンが切り出す。
「トーナメントですわね、巨大ロボ同士の」
フローラが壁に貼ってある大戦表を見て呟く。
「パティ姫は我らにお任せ下され♪」
アオイが微笑む。
「マッカさんの一回戦の相手は、猿の皇妃の闘志だそうですよ?」
「猿の皇妃か、まあやるしかない」
クラウの情報にそう言って頷く。
「頑張るのじゃぞ、そなたならできる♪」
「ありがとう、任せてくれ♪」
アデーレが応援してくれる。
「マッカ様、赤鬼の如き活躍で勝利をお願いします!」
パティ姫が切実に訴える。
「おう、お任せあれ♪」
天狗と言われたり鬼と言われたりだが、やる事は変わらない。
世の為人の為に戦って勝つ、負けられない。
パティ姫のヒーローとして、頑張って勝つ。
仲間達に背を向けて控室を出る。
場内には対戦する選手同士の機体が運び込まれていた。
こっちのハッティに負けぬ大きさの白い猿型ロボ。
パイロットも猿の獣人の少年だった。
金毛だからキンシコウかな?。
タンクトップにトランクスと軽装の少年だが、目付きは鋭い。
「お前が象の戦士か? 悪いが、姉上を救う為に勝たせてもらう!」
「そちらもか、救う為に負けられないのはこっちもだ」
こっちを睨みつつも、手を合わせて礼をする少年に返礼する。
この少年も恐らくいい所の子で善人なんだろうな。
蟲毒じみた試合だが、勝つしかない。
俺も相手も機体に乗り込むと、双方のロボットが人型に変形する。
銅鑼が鳴り、両者が同時に戦いの舞を舞えば試合開始だ。
「ラング―ルヨーダー、参る!」
「ハッティヨーダ―、受けて立つ!」
先手は相手の機体、飛び膝蹴りが来たのでこちも肘打ちで迎え撃つ。
弾き飛ばされたのは相手の機体だが、空中で回転して無事着地。
疾風を纏い、突進して来た。
向こうが動ならこちらは静。
風が吹くなら林の如く受け流す、とは中々いかなかった。
忍者の分身の如く四方八方から襲い来る相手の打撃を迎え撃つ。
典型的なスピード型とパワー型のぶつかり合い。
こちらは拳に炎を纏わせれば、相手は竜巻を手足に纏いドリルの如く攻める。
腕のあるスーパーロボット同士のぶつかり合いは、簡単には決着とはならない。
『……ラング―ル、国を守る同士の我らが!』
「ヒーロー同士で戦っても面白くないよな、だが負けられない!」
ハッティが嘆く、悪の陰謀でヒーロー同士が戦わされているようなものだ。
だが、相棒にも奮起してもらわないと困る。
勝負に負けられないのは、こちらも同じなのだから!
蹴りから真空の刃を飛ばす相手に対し、こっちは象の鼻から火炎弾で相殺する。
必殺技らしく、全身に風を纏った飛び蹴りで迫るラング―ル。
「こっちも止めと行こうぜ、バーニングスマッシュ!」
太陽と見まごう火球を右の拳に纏わせて、ストレートでぶん殴る!
激しい爆発が起こり土煙が上がり場内を包む。
土煙が晴れた後、勝者として立っていたのは俺達だった。
「勝者、象の戦士ハッティヨーダ―!」
審判の叫びに歓声が上がる。
俺は喜べない勝利で、一回戦を乗り切ったのであった。
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