第五十三話:超熱血ファイト!
月の大地が激しく震え。魔王の城が生き物のように蠢く。
俺達は機体に乗り込んで上空から敵の動きを観察。
この手のお約束、合体やら変身中に下手に攻撃するのはヤバい。
ついでに言うなら、こっちも回復タイムが欲しかった。
腹が減っては戦はできぬ、悪の組織が相手の合戦ならばなおさらだ。
心身の疲労を回復し、俯瞰しながら戦い方を考える。
石垣の代わりの城の基礎の髑髏の眼窩に赤い光が灯る。
城から黒い汚泥が溢れて髑髏を満たし、超高速で肉付きが始まる。
「ちょ、あの髑髏が邪神の顔なの!」
レグルスが気持ち悪そうに叫ぶ。
ホラー映画の世界だよな。
「バリアントの加護がなければ、気が狂いそうですわ」
ポラリスが戦慄する。
「タウラスよ、そなたは気づいておるのか?」
「気付きたくありませんでしたが、邪神が月の女神様を取り込んでます!」
「何と不遜な、邪神許すまじです!」
ヘリオスとタウラスの会話にアルタイスも加わる。
「エラポス、アリエス、皆、合体だ!」
俺の合図に従いこちらもハチダイレンセイオーに合体する。
向うも準備中でこっちに手出しして来ないのはありがてえ。
全部合体したその上で巨大な白馬ロボに騎乗。
花鬼大将軍もムーントータスの背に乗り戦闘に備える。
ハチダイレンセイオーよりも巨大な鋼の美女が、月の大地を割り起き上がる。
割れた大地が邪神の体に纏わりつき、青白いドレスのような装甲となる。
王冠を抱いたロングドレス姿の美女。
長い髪も肌も青白く美しいが人の美しさとは違った。
いや、ロボとスーツうの二重の神のご加護で耐えている。
これは、一般人なら遭遇したら正気度マイナスどころか脳みそ爆発レベルだ。
『忌々しい主神の手先共、此度も我を阻むのか?』
機械的ない合成された美女の声、ただの問いかけにも呪詛が籠る。
「当たり前だ! 我らが女神の命の下、貴様を討つ!」
全員が機内で黄金の林檎を食い、狂気的な邪神の声とオーラに耐えつつ俺が叫ぶ。
「邪神調伏は、我らチェリッシュランドの民の総意である!」
花鬼大将軍も同様に林檎を食って耐えながら言い返す。
気持ちで負けたらダメだ、魂を直接蝕む狂気に抗うには正義の狂気しかねえ。
「どうしたネッケツジャーども、これが我が母にして伴侶の力だ♪」
邪神の胸の谷間から、ドヤ顔のボージャックの顔が浮き出る。
「虎ならぬ嫁の威を借りるとは情けない奴だな」
「僕らも女神様の威を借りてますけどあの顔はムカつきますね」
エラポスとアリエスが漫才的な事を言う。
笑う門には福来ると言う言霊の力だ。
「良いのう、妾達も陽気を出して行くぞ♪」
「こうなりゃやけです、気持ちを上げて参りましょう!」
ヘリオスとタウラスも心に火が付いて来た。
「よっしゃ、皆テンション上げて行こうぜ♪」
俺もリーダーとしてバリバリ林檎を喰らい、仲間を鼓舞して高めて行く。
「嘘、何か機内が金色の光で満ちて来た!」
「この輝き、心地良いですわ♪」
「負ける気がしません♪」
『皆、ジャンジャン林檎を送るから食べまくって神に進化して!』
アップルから通信が入る。身近な女神様の加護が来た!
花鬼大将軍も機体が金色の輝きだす。
俺達の機体も金色に輝き出して来た。
そうだ、敵が強ければこちらも強くなれる。
俺達はそうやって戦いの中で強なって、乗り越えてきたんだ。
「がッはハッハ、貴様らが強くなろうとも他の人間共は強くなれまい♪」
『その通り、ならば守るべき世界の方から滅ぼしてやろう』
邪神が両手を天に掲げて巨大な隕石を生み出し、俺達ではなく俺達が守るべき世界である青き星を狙って投げる。
「甘いぜ、バリアントダッシュ!」
俺達の機体は超スピードで宇宙を疾走し、投げれた隕石に先回りしてキャッチ。
「おっしゃ、キャッチ!」
隕石を受け止めた衝撃が機体に伝わるが、受け止めに成功する。
「たかが石ころ一つ、てこの原理で投げ返せますわ!」
「ポラリスさん、相変わらずですね」
ポラリスにメインパイロット権利をパスすれば。レンセイオーが巨大隕石を邪神へと投げ返す。
「おのれ、伏兵か!」
花鬼大将軍とムーントータスは、邪神の腹部から飛び出した巨大なダンゴ虫の怪物を弓で撃ち落として行く。
『ア~~~~~~♪』
邪神が美しくも禍々しい呪詛の籠った歌声を宇宙空間に響かせる。
「「ぶはっ!」」
咄嗟に自分達とチェリッシュランドを含めて結界魔法で覆う。
邪神の歌で転倒した花鬼大将軍は、ムーントータスが拾って助けた。
邪神の歌声はロボである中にいる俺達を狙った攻撃だった。
忌まわしき禍歌が俺達のマスクを割り、両耳と目と鼻と口から血を流させた。
割れたマスクも心身のダメージも回復するが、気分が悪い。
黄金の林檎を虚空から取り出し、マスクに当てて体に取り込めば、黒い呪詛が大概に排出されて霧散化する。
「負けてたまるか、世界も未来も守るんだ!」
己を鼓舞し、機体の外の邪神を睨む。
「そうよ、帰ったら結婚式なんだから! ネメアビーム!」
レグルスが操作をして胸からビームを撃ち反撃する。
着弾したビームに邪神の胴体に当たるも、ダメージは軽微ですぐに再生される。
続いて邪神の口から吐き出されたのは、無数の蝙蝠型の怪物の群れ!
「シープハンマーで、打ち返しますよ!」
アリエスがやる気を出し、レンセイオーの武器をシープハンマーに変えて振るう。
「レグルス、同時にぶっ放して討ち漏らしはなしで行くぞ!」
「任せて♪ ネメアビームフルバースト!」
「フェニックスブレイザー!」
俺とレグルスはそれぞれ頭部から超高熱火炎、胴体からビームを放出。
被弾で装甲が爆発するのも構わず、蝙蝠攻撃を迎え撃って凌ぐ。
「俺達も加勢するぜ、兄弟!」
後方に下がって来た花鬼大将軍とムーントータスも、蝙蝠攻撃を迎撃する。
流石にボスだけあって、攻撃が今までで一番苛烈で厄介だった。
後ろに守るべき星があり下手に攻撃に行けないのが精神的にきつい。
ムーントータスから黄金の林檎がポンポン転送されて、俺達に吸い込まれて行く。
補給と修理を受けながら戦えてるのはまだ救いだ。
「皆、まだ心は燃えてるな?」
俺は仲間達に尋ねる。
「闘志も、あなたへの愛も燃えてるわダーリン♪」
いつの間にか完全に女性モードのレグルスが答える。
「私も、この愛は永遠に消える事はございませんわ!」
ポラリスも叫ぶ。
「愛も野心も闘志も燃えているでござる!」
アルタイスも同意、
「俺の脂肪も筋肉も燃えているぞ!」
エラポスはどんどんムキムキに変化していた。
「エラポスさん狭いです! 僕も燃えてますよ!」
アリエスも同意した。
「当然です、荒ぶってますよ」
「妾もじゃ、行けるぞ!」
タウラスとヘリオスも頷く。
「我らも心は同じだ、貴殿に全てを預ける!」
花鬼大将軍からもムーントータスからも声が届いた。
「よっしゃ♪ ならば皆で叫ぼう、超熱血合体!」
「「超熱血合体!」」
叫びと共に俺達の体も機体も黄金に輝き出す。
こちらの輝きを受けた邪神が呻いて後ずさる。
ご都合主義上等、皆より先に神へと至った俺の特典のブレイクスルータイム♪
巨大な鬼瓦になった花鬼大将軍を背負い、城の石垣みたいになったムーントータスを足に装着し巨大化だ。
「「完成、ネッケツゴッドレンセイオー!」」
道理も無理もぶっ飛ばして生まれた、黄金の超巨大スーパーロボット。
邪神だろうがあらゆる災厄もぶっ潰す、究極の理不尽のお出ましだ!
「ワ~~~~~ッハッハ♪ 邪神、魔王、何するものぞ♪」
『……こ、これは神の力? 知らない、女神の力ではない?』
邪神が困惑する、未知の存在に恐怖する。
「そうだ、新たに生まれた十三柱の神の力受けて見ろ!」
堂々と邪神に言い返す。
共に神となった仲間達に神獣となった相棒達、皆の力が繋がっているのが感じる。
もう怖くない、負ける気はがしない。
「嘘、スーツがネッケツジャー時代に戻ってる!」
「僕も、女の子に戻ってますよ!」
レグルスとアリエスが驚く。
フルフェイスマスクに全身スーツと剣と魔法の世界に似合わない姿だ。
「ほう、これがネッケツジャーのスーツかえ♪」
「相棒の神獣が胴鎧になってますね♪」
ヘリオスとタウラスは興味深そうだった。
「ふむ、これが異界の装束か♪」
「お揃いとは楽しいな♪」
「鎧も出て来るね?」
「気分が盛り上がって来ましたぞ♪」
「感慨深いです」
花鬼の皆もネッケツジャースーツに身を包んでいた。
「私はフラメスとお揃いね♪」
アップルもレッドのスーツに喜ぶ。
「新生ネッケツジャー、ゴー♪」
「「オ~~~~ッ♪」」
皆でネッケツジャーになった所で、ネッケツゴッドレンセイオーで突撃!
腕を植物のように伸ばして来る邪神の懐に入りアッパーカットで殴る。
殴り飛ばされつつも、反撃の為にブラックホールを作り出した邪神。
「させないわ、ゴールデンアップルシュート!」
アップルの操作でネッケツゴッドレンセイオーが巨大な金の林檎を生み出して相手の攻撃よりも先に投げ飛ばす。
黄金の林檎が邪神が生み出しかけていたブラックホールとぶつかり大爆発を起こして打ち消される。
「な、何だその力はあの時以上に出鱈目ではないか!」
爆発で吹きとばされた邪神から。ボージャックが邪神から浮き出て文句を言う。
「出鱈目で結構、悪の組織のボスはヒーローに出鱈目に倒されるのがお約束だ!」
悪党のクレームは前世の頃から受け付けてねえ。
背中の鬼瓦と白馬ロボを両肩に担いで、馬の口と鬼瓦の口からビームで砲撃。
「フラメス、いやレッド? そろそろ止めが行けるぞ!」
「わかったぜグリーン♪ 皆、さっきも言ったが俺に力を貸してくれ!」
「喜んでお貸しいたしまする、我が背の君♪」
ブルーが叫ぶ。
「ブルーさん、そこは私達の背の君ですわ♪」
「そうよ、帰ったら妻会議よ♪」
「うむ、議長は妾じゃな♪」
「書記は私ですかね」
「お茶請けはアップルパイね♪」
いや、自称奥さんたちは自重して!
「レッドさん、今世でも奥さん達の尻に敷かれますね♪」
「あいつはそう言う運命だ」
ピンクとグリーンはいつも通りか。
「あの~? そろそろ止めと行きませんか?」
ネッケツホワイトになったシンベエ君が良い事を言った。
「よし、ゴッドオオタチで決めるぞ熱血一刀流奥義!」
「「邪神調伏・破邪の太刀っ!」」
皆で叫べば、ネッケツゴッドレンセイオーが虹色に輝く大太刀を大上段に構えて邪神へと振り下ろした!
虹色の光の柱に包まれた邪神とボージャック達は今度こそ消え去った。
残心を決めて見得を切るネッケツゴッドレンセイオー。
「これにて一件落着♪」
「「バンザ~~~イ♪」」
かくして、俺達新生ネッケツジャーは見事に邪神の討伐に成功したのであった。
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