第五十二話:魔王ボージャック

 ボージャックの待つ玉座の間へ殴り込んだ俺達。


 「ロボが消えた? いや、送還か!」


 気が付くと俺達はヒーロースーツを着た生身の状態になっていた。


 「よくぞ来たなネッケツジャー♪ いや、勇者共と言うべきか?」


 紫のカーペット、鉄みたいな謎きな奥の壁。


 真っ黒で重装甲の鎧の腰にはBのマークのゴツイベルト。


 「来てやったぞボージャック、前世からの因縁今度も俺達が勝つ!」


 うん、何度だって倒してやるなんて言ったからかな?


 まさか生まれ変わっても対決する事になろうとは。


 「がッはッは、相変わらず有言実行だなネッケツレッドよ今世の名を名乗れ♪」


 ヘビメタバンドのアルバムのパッケージでしか見ないような金属製の玉座の上。


 魔王ことボージャックは俺達に名乗れと催促する。


 「フラメス殿、奴の真意は?」


 スミハル殿が俺に尋ねる。


 「ああ、戦の前に名乗るのは戦士の礼儀って奴です」


 俺がそう答えると納得してくれた。


 ヒーローと悪の組織の対決のお約束を説明する手間が省けた。


 「ならば名乗ろう、ネッケツレッドこと不死鳥の勇者フラメス!」


 一番手はレッドの俺からだ。


 「ネッケツブルー、生まれ変わって龍の勇者アルタイス!」


 二番手はブルー。


 「ネッケツイエロー、熊の勇者ポラリスですわ♪」


 三番手はイエロー。


 「ネッケツグリーン、鹿の勇者エラポス!」


 グリーンは、サイドチェストでポージングするなよ。


 「ネッケツピンク、羊の勇者アリエスですよ♪」


 ピンクも名乗った、基本五色終わり。


 「世界はプレシャス、ネッケツゴールド♪ 獅子の勇者レグルスよ♪」


 おい、何で中身が女モードになってるんだゴールド!


 「合わせるならネッケツシルバー、牛の勇者タウラス」


 うん、シルバー枠だな。


 「真打は妾、ネッケツブラウンこと土竜の勇者ヘリオスじゃ♪」


 ヘリオスは威風堂々だった。


 「「我ら、聖獣勇者団っ!」」


 全員で名乗る。


 「生徒会長、黒鬼のスミハル!」


 黒い武者鎧姿のスミハル殿が二刀を構えて名乗る。


 「副会長、橙鬼のダイダイマル様だ♪」


 オレンジの鎧のダイダイマルも槌を担いで見えを切る。


 「会計、紫鬼のムラサキ」


 紫の烏帽子のような兜が目立つ鎧で弓を構えるムラサキ。


 「広報、青鬼のソウキュウでござそうろう♪」


 青い蟹のような鎧に三叉槍のソウキュウが名乗る。


 「書記、白鬼のシンベエ!」


 シンベエ君は刀を下段が前だ。


 「「我ら、花鬼生徒会ぅ♪」」


 花鬼生徒会も名乗りを上げた。


 「よくぞ名乗った♪ 我が名は魔王ボージャック、勝負だ勇者ども!」


 ボージャックが立ち上がり全身から真っ黒なオーラを解き放つ。


 だが、そんなもんに俺達は負けやしねえ。


 お望み通り、仲間達全員で生身戦から始めてやらあ♪


 「行くぜ、異世界の戦の作法によりまずは生身でぶつかり合いだ♪」

 「わかりやすくて良い作法であるな、義弟よ♪」


 俺とスミハル殿が背中合わせになりリーダー同士で語り合う。


 「ちょっと、フラメスは私達のよ!」


 レグルス、こんな時に何を言ってる?


 「兄上ずるい、その場所変わって下さい!」


 アルタイス、お前もだ!


 「相変わらず、殿方にも好かれてるごようすで」


 ポラリスさん、黒いオーラ出てる。


 「これは後でお説教ですね」


 タウラス、俺は悪くない。


 「帰ったらすぐにでも結婚じゃな」


 ヘリオス、戦闘中だ!


 これみよがしに聞こえる仲間達の不平、んな事言ってる場合か!


 「ふん! 貴様ら、生まれ変わってもボンクラかっ!」

 「やかましい、型に嵌らないのが俺達の強さだ!」

 「ほう、我らが一撃を受けるとは中々♪」


 俺とスミハル殿の斬撃は、ボージャックに受け止められる。


 相手に攻撃を弾かれた勢いで後方に飛び退き合流。


 「ほう、我が鎧に傷がついたか? 懐かしい気分だ♪」


 自分の両腕の前腕の籠手についた傷を見て喜ぶボージャック。


 「相変わらず、プロレスラーみたいな奴ね?」

 「いや、戦闘中に俺の腕に絡みつくなレグルス!」

 「今度こそ倒しましょう!」

 「いや、ポラリスも何してんの?」


 俺はレグルスとポラリスにサイドから腕に絡みつかれていた。


 「こりゃ、二人共交代じゃ!」

 「そうですよ、時間厳守です!」

 「私も抱き着きたいです!」


 いや、お前ら? 床から戦闘員が出て来てるぞ?


 「フラメス殿は女難ですなあ♪」

 「兄弟、大変だなあ?」

 「家の大将も色街では似たようなもんだけどね」

 「英雄、色を好むですな♪」

 「敵の雑兵は我らに!」


 ああ、花鬼チームが戦闘員達に突撃してる。


 「おいフラメス、真面目にやれ!」

 「そうですよ、ラブコメタイムは後にして下さい!」


 いや、お前らも止めてくれよグリーンとピンク。


 「ええい、相変わらず舐め腐りおって! ボージャックスクリュー!」


 ボージャックがこちらに向けて黒い竜巻を放って来た。


 「なめるな、スパイラルレインボー!」


 仲間達が集まったので、こちらも虹色の光の本流を放出して迎え撃つ!


 地水火風に光の基本五属性。


 加えて、愛と勇気と正義と希望と夢の十属性の混合魔法だ!


 黒の竜巻と虹がぶつかり合い、爆発が起こり相殺される。


 ボージャックも俺達も吹き飛ばされた壁にぶち当たる。


 「ぶわっはっは♪ 良いぞ、良いぞ、もっと出して見ろ♪」


 嬉しそうに立ち上がるボージャック、まだまだ余裕だな。


 俺達も立ち上がる、こっちもまだまだ余裕だぜ。


 プロレスの如く技の応酬でぶつかり合う俺達。


 「プップクプ~~~~ッ!」

 「ヒャッハ~♪」


 ボス戦に乱入して来たのはテッポーとジェスターだった。


 「何と、甦ったか!」

 「くそったれ、確かに本体を斬ったはず!」


 花鬼生徒会には甦ったテッポーの針攻撃。


 こっちにはジェスターの鎌の斬撃。


 俺達の出鼻が挫かれた。


 「馬鹿め、幹部怪人も再生しないと誰が言った♪」


 ボージャックが嬉しそうに笑う。


 確かにお約束だが、乙女ゲームの約束じゃねえ!


 「さっきはよくもやってくれたな、パパはやらせない!」

 「お前ら皆ぶっつぶしてやる!」


 ジェスターとテッポーが吠える。


 「ならば、何度でも退治してやろうではないか♪」

 「お前ら全員生まれ変わらせてやる!」


 ヒーロー側も負けてはいられない。


 仲間達も気合を入れて、ぶつかり合いの再開だ。


 ボージャックと俺達の間に、ジェスターとテッポーが立ち塞がる。


 「よし、俺達はバリアントの力で行くぜ!」

 「「応っ!」」


 神獣を召喚して身に纏った俺達。


 「我らも息を合わせるぞ!」


 花鬼生徒会も何処からかデカい大砲を召喚する。


 「同時に行くぜ花鬼の♪」

 「うむ、我らは一つ♪」


 俺とスミハル殿はリーダー同士で取り決める。


 「「バリアントバズーカ!」」

 「「花鬼怒髪天砲っ!」」


 俺達のチームそれぞれの必殺攻撃。


 これに対してジェスター達の選択は、ボジャックの盾となる事であった。


 爆発で煙が上がり敵の姿が隠れる。


 「ふんっ! よくぞ務めを果たした我が子らよ♪」


 煙が晴れると現れたのは、満身創痍のジェスターとテッポーとボージャック。


 ボージャックは自分の盾となったジェスター達を吸い込み己の体を回復させた。


 「ち、子供を食い物にするとは相変わらずだな!」


 ボージャックの所業に反吐が出る。


 「フラメス様、父親としてはあなたの方が何万倍も素敵ですわ♪」

 「ありがとう、今世では満点パパになるよ♪」


 ポラリスが宥めてくれたので落ち付けた。


 「まさに外道の所業、許せぬ!」


 スミハル殿は怒りを燃やす。


 「ぶわっはっは♪ 貴様らを倒して蘇らせればいい事よ♪」


 前世よりも悪党ぶりが増してるなこいつ。


 「さて、では貴様らの大好きな巨大戦と行こうか♪」


 ボージャックが笑うと同時に城の中が揺れ出す。


 「我が伴侶たる邪神よ、目覚めよ♪ 共に立って我らが敵を射ち滅ぼしたまえ!」


 ボージャックの詠唱に俺は嫌な予感がした。


 「皆、城から出てロボを呼ぶぞ! この城自体が邪神の体で敵のロボだ!」


 俺の叫びに皆が頷き、馬モードになった神獣達を花鬼生徒会と相乗りして脱出。


 ムーントータスが吐き出した自分達の機体に乗り込み、、巨大戦に備えた。

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