第五十一話:風雲魔王城!

 月の荒野での合戦を乗り越えた俺達。


 正面から殴り込んだ魔王城の中は、超巨大なダンジョンだった。


 江の島の岩屋をデカくしたみたいな壁や床。


 九体のロボで挑むダンジョンハック。


 おとぎ話の魔王の城とは全くの別物なせいで過去の知識が役に立たない。


 「フラメス、僕達の機体が合体出来ないよ!」


 レオンことレグルスの機体から聞こえる叫び声。


 「地道に攻略しろって事だろ、このゲーム雑誌で低評価そうなダンジョンを!」


 俺がレビュワーなら、星一だなこのダンジョン。


 「くう、合体封じの魔法ですか!」


 アオイ嬢ことアルタイス。


 彼女の機体が敵兵である巨大スケルトンを槍で砕きながら叫ぶ。


 ダンジョンだからやっぱりモンスターは出てくる。


 「もしや、ロボでなく生身で攻略しろと言う事でしょうか?」


 フローラ嬢ことポラリス。


 彼女は疑問を抱きつつ、自分のロボで巨大なトロールを上手投げで岩壁に叩きつけて撃破する。


 「駄目だ、探知魔法では城のプロテクトプログラムを探せない!」


 クレインことエラポスが機体の角を青く発光させ、魔法での調査結果を告げる。


 ここからじゃ、魔法的なハッキングは無理って事か。


 「とにかく、手探りで行ける所まで進みましょう」


 バッシュことアリエス、ファンタジーで言うシーフ役の彼の機体が床や壁を手探りで罠の類を探して安全を確保しつつ進んで行く。


 「皆さん、機体の損耗状態は如何ですか? 回復が必要な方はこちらに!」


 クラウことタウラス。


 彼女の機体は回復係として、俺達の機体のダメージを魔法で回復してくれた。


 「巨大兵器でも動けるとは面妖な迷宮であるな、フラメス殿?」


 花鬼大将軍からスミハル殿の声が語りかける。


 確かに、何かがおかしい。


 「むむ、怪しげなレバー付きの箱があるのじゃが?」


 アデーレ様ことヘリオスが、巨大なモニターの山に接続されたレバー付きのコンピューターを見つける。


 「まった、ヘリオス! それはボージャック空間発生装置だから触るな!」


 前世の知識から叫ぶ、作動させたら特殊空間に転移させられる奴だ!


 「ちょっとヘリオス、その機械には興味を持たないで~~~!」


 レグルス機がヘリオス機を止めに行く。


 「ドワーフの鉄則、罠は作動させて潰すのじゃ!」


 ヘリオスが脳筋ぶりを破棄し、レバーを引いてしまう。


 「ちょ! ドワーフの脳みそ筋肉~~~っ!」


 アリエスがもう遅い。


 俺達の周囲の空間が歪み、鳴門の渦潮の如くうねり出して俺達と飲み込んだ。


 俺は機体ごとドカンと爆音を上げて着地する。


 見事にパーティー分断されちまったぜ、前世でもやられた手だが。


 何でも起こるは敵が強くなるはで、迷惑な場所に飛ばされちまった。


 「センサーに仲間の反応は無し、助けに行かねば」


 事前に見たモニターの数は九台、ロボに乗った俺達と同じ数。


 この空間何の何処かにある、仲間達のいる他の空間へのトンネルを探さねば。


 「メタル刑事さんの所の研修を受けていて良かったぜ、直感で行く!」


 特殊空間を用いて悪事を働く敵を主に相手にするヒーロー、メタル刑事。


 彼らと共闘した縁で合同訓練をした経験が役に立つのは、実にありがたかった。


 仲間達は心配だが彼らもヒーローだ、乗り越えられるはず。


 ジャングルを出たら火山帯、その次は雪原と歩みを進めるごとに景色が変わる。


 こう言う特殊空間を攻略するコツは、ロボでも浜見でも止まらず動く事。


 下手に止まると襲われるならまだ良いが、閉じ込められるとか取り込まれるとか敵に攻撃されて殺されるよりも嫌な死に肩をしかねない。


 敵を捕らえて殺す場所に、生存する為のスペースがあると思う事が間違いなのだ。


今度の景色は、地球の日本。


 団地や住宅街に公園、昔の癖で壊さないように飛びながら進もうとする中。


 「助けて~~~~!」

 「おかあさ~~~ん!」

 「キシャ~~~~!」


 公園で鼠のような怪人に遭遇した幼稚園くらいの子供達を発見。


 「待ていっ!」


 機体から飛び出し、怪人と子供達の間に割り込む。


 「不死鳥の勇者フラメス、見参! 君達は早く逃げるんだ!」


 生まれ変わっても俺はヒーローだ。


 「ありがとう、ヒーロー!」

 「ああ、危ないから速く逃げるんだ♪」


 これが敵の罠だろうと、子供がピンチなら助けに行く!


 俺は抜刀して、鼠怪人へ斬撃をくり出したその時。


 「隙あり~~~~~っ♪」

 「ぐわっ!」


 背後から嫌な声と同時に斬りつけられた。


 背後の装甲が削られる金属音と火花、襲い来る衝撃。


 俺はダメージを軽減する為に前転して体勢を立て直す。


 フェニックスの力で不死身に近い再生力がなければ危なかった。


 「ジェスター、お前ともここで決着を付けてやるよ!」

 「イ~~~ヒッヒッヒ♪ 挑発が下手だね、乗ると思うかい?」

 「挑発じゃねえ、こいつはただの勝利宣言だ♪」

 「ムキ~~~ッ! お前なんか、死んじゃえ~っ!」


 真正面から襲って来るジェスターの斬撃を刀で受け止める。


 いや、煽り耐性がないのはどっちだよ?


 景色は採石場に変わり、俺とジェスターは鎌と刀で打ち合いになる。


 奴の鎌は変幻自在。


 四方八方から襲って来る攻撃を刀で受け流せば、今度は脇腹を抉りに来たので回転して避ける。


 「僕を舐めるな~~~っ!」


 蝙蝠とピエロを混ぜた黒い外骨格と言う奴の怪人スーツが闇に包まれる。


 「幹部怪人の強化形態か、負けフラグだぜお嬢ちゃん?」

 「ナメルナアアア!」


 人型から完全な巨大蝙蝠形態になって攻撃して来るジェスター。


 「熱血一刀流奥義、星切りの太刀」


 突進にはこちらも突進ですれ違いざまに奴を斬る。


 装甲が砕け落下する音が鳴り響く。


 振り返れば、全身を黒のライダースーツに身を包んだ白髪褐色の美少女。


 「お前の素顔か、美少女だから許されるとかってオチはねえぞ?」

 「だまれ、魔王の娘として僕は最後まで戦い抜いてお前を倒す!」

 「良心が咎めなくて良い台詞だな、ありがてえ♪」


 こいつには仮面事件で散々迷惑かけられてるんだ、許しはしない。


 「来い、バトルジェスターロボ~~~~っ!」

 「おっと、ロボで勝負だったか今度こそ終わりだ!」


 相手がロボを召喚して乗り込む内にこっちも急いでフラメスナイトに搭乗する。


 生身戦とロボ戦を交互にやるのって、やはり戦隊時代のお約束だな。


 「ふう、システムチェックオールグリーン♪ 行くぜフラメスナイト!」


 アイドリング状態のフラメスナイトに戻り、敵に何かされていないかチェック。


 地球の悪党なら、ヒーローが乗ってないロボなんて美味しい獲物に発信機とか爆弾とかウィルスとか平気で仕掛けてくるからな。


 敵が大鎌を振るって飛ばして来る闇の斬撃を避けつつ。どう攻めるか考える。


 「まあ、悩んでいても仕方ない!」


 黄金の林檎を手に取りマスクに当てれば、光に分解されて吸収される。


 これでHPとMPは回復バステも消えてやる気も全開だ!


 牛若丸の如く動き回り、敵の攻撃を回避しつつこっちは敵の装甲を前後左右と飛び回りちまちまと斬りつけて行く。


 『このくそ鳥頭、真面目に戦え!』

 「いや、お前には言われたくはない」


 ブンブン大鎌を振り回し、胸を開けてのビーム砲攻撃に腰からバルカン砲と射撃や砲撃も駆使して暴走するジェスター。


 「は、散々人々を躍らせて悪さして来たんだ自分も苦しみやがれ!」


 こいつのロボの性能上楽に倒せるわけではないが、楽に死なせてはやらない。


 己の悪行を悔むことはなさそうなので、徹底的に嫌がらせをしてから倒す。


 こちらの斬撃を受け防御してきた所為か、バトルジェスターロボの大鎌がひび割れる音を立てて砕け散る。


 『ぼ、ぼくの大鎌が~~~っ!』


 愛用の武器が壊されて絶叫するジェスター、こちらは距離を取て神気を錬る。


 「終わりにしてやる、来世では真っ当な人げに生まれかわれ!」


 金色に輝く破邪の太刀でバトルジェスターロボ叩き切り爆散させる。


 奴の命の気配が消えたと同時に、周りの景色が変わる。


 気が付くと俺はロボに乗ったまま巨大で禍々しい扉の前に立っていた。


 「フラメスが帰って来た♪」

 「よくぞご無事で♪」

 「お帰りなさいませ♪」

 「やり遂げたみたいだな、フラメス♪」

 「流石は僕らのレッドさんですよ♪」

 「一緒に戦えなかったのが残念じゃ♪」

 「これで全員揃って、魔王退治ですね♪」

 「フラメス殿、テッポーは我らが討ちましたぞ♪」


 無事だった仲間達とも合流出来た、良かった。


 「よっしゃ、ここからがボス戦だ♪」


 俺達はボスの間に続く扉へと突撃した。

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