第五十話:聖戦の序章

 いざ月での決戦、来てみたら前世の因縁の相手がボスだったよ。


 「何じゃこ奴ら、見たことのない怪物ばかりじゃぞ!」


 ヘリオスの機体が巨大なスコップを振るい、サッカーボールの怪物を蹴散らす。


 「これは面妖な、タウラスパンチです!」


 タウラスも灰色の巨大なイソギンチャクの怪物、イソギンジャックを殴り飛ばす。


 「こいつら、ボージャック軍団の怪人達ですよ!」


 アリエス機がハンマーで再生巨大怪人の一匹、センタクバサミジャックを粉砕すると敵は霧散化し砂に変わる。


 「大丈夫だよ皆、全部過去に倒して来たじゃないか♪」


 レグルス機が楽しそうにかつての怪人の亡霊とも言える敵群を蹴散らして行く。


 「まったく、供養してやったと言うのに罰当たりどもが!」


 エラポス機もかつて苦戦した敵の亡霊を風を纏った矢で射抜いて行く。


 「出ましたね、お盆とはいえ怪人が帰って来るんじゃありません!」


 アルタイス機が相手をするのは、五月の鎧兜を模した怪人カブトジャック。


 そういや日本だとなつはお盆の時期なんだよな。


 「ボージャック、前世でも飽き足らず今世でも私とフラメス様の恋路を邪魔をして来るとは断じて許せません!」


 怒れる球磨の如くポラリス機は怒りの叫びを上げる。


 「喰らいなさい、イエロー竜巻飛ばしっ!」


 そして、技の名を叫ぶと掴んだ敵を持ち上げてぶん回して投げ飛ばす。


 「なるほど、過去の亡霊共よ迷い出たなら冥府へと帰るが良い!」

 「抜けば花散る氷の刃、受けて見なよ!」


 花鬼大将軍も、巨大な太刀を抜き放ち迫り来る敵を瞬時に切り伏せた。


 何と言うか、アップルがくれた神の林檎の力かロボに乗っていても生身のように仲間達と会話ができている。


 敵も巨大で此方も巨大だから生身と変わらないって気もするが。


 敵の飛び道具攻撃が雨のように降るも、魔王の城を目指して俺達は進む。


 月の平野での合戦を越えれば城攻めだ。


 前世の戦隊時代も似たような展開になったが、過去は切り離せないってか?


 「一気に弔ってやるぜ、俺があの世への送り火だ!」


 送り火はお盆の最後にするもんだが、こいつらはご先祖様の御霊ではないのでさっさとあの世へとお帰り願いたい!


 俺が最大火力の攻撃魔法をぶっ放そうと思った時であった。


「はわっ! 倒した敵がまた地面から生えて来ましたよ!」


アルタイスが驚く、その声で俺は敵が甦る理屈がなんとなくわかった。


「こいつらには死を与える攻撃は効かないのか、ならば回復魔法だ!」


死には生を与える力で対抗だ、皆に伝える。


 アンデッドに回復魔法が効くって、ゲームであったな♪


「流石です、天に召されて下さい!」


神聖騎士のタウラスは、銀の癒しの光を放つ。


 「なるほど、ライトヒール♪」


 レグルスも機体の全身から後光のように回復魔法を放つ。


 「ポラリス殿、後ろは任せた!」

 「喜んで、同じ属性効果で二倍ですわ!」

 「「ツインアースヒール!」」


 ヘリオス機とポラリス機が背中合わせになり黄色い光を放つ。


 どんどん、亡霊ボージャック怪人達が光に包まれて消えて行く。


 いや、本当に成仏してくれよ。


 もしくは善人に生まれ変われ。


 仲間達の様子を確認してたら、こちらに襲い来る敵が一体。


 『甦ったぞネッケツレッド、俺と勝負だ!』


 髑髏のメンポにドレッドヘアーが際立つスーツアーマー姿の巨大怪人。


 全身灰色になってるのはこいつも亡霊怪人だからか?


 「ネッケツキラー、お前かよ! 皆、こいつには手出し無用だ!」


 前世のライバル怪人、ネッケツキラーの振るう刀を俺もロボの刀で受ける。


 「男の勝負だな、勝てよレッド!」

 「キラーさんなら、レッドさんに任せましょう」


 エラポスとアリエスが答える。


 「うんうん、男の勝負に手出しは無用。 存分に戦われよ♪」


 花鬼大将軍も応じてくれた、俺は今世でも良い仲間に巡り合えたよ。


 『貴様と剣を交えたい、俺の願いをボージャックと邪神が叶えてくれた♪』

 「馬鹿野郎、だったら何で人間に生まれ変わらねえんだ!」

 『不明瞭な来世など当てにできるか!』


 俺は敵の中で唯一友情を結べたライバル、ネッケツキラーと切り結ぶ。


 ネッケツキラー、俺を倒す為だけに生まれたと豪語する怪人。


 ベストな状態の俺と戦う為と言う理由はあれど、非道や卑劣を嫌い同じ陣営の怪人でも切り捨てたり人助けをしたりする悪の好漢。


 ある意味では仲間や家族以上の理解者だった剣士だ。


 俺が戦後に怪人墓地に毎年墓参りをしていた悪党は、こいつしかいない。


 ここで出会ってしまったのが悲しいが、会えても嬉しいと思ってしまう相手だ。


 仲間達が俺とネッケツキラーを包囲してリングを作り、勝負を守ってくれる。


 俺とネッケツキラーは互いに刃を振るって打ち込み、受けては払いまた攻める。


 言葉ではなく、刃を交えて語り合いを続けていた。


 『ほう、それが貴様の今世の剣か。 面白いなあネッケツレッド♪』

 「今の名は不死鳥の勇者フラメスだ!」

 『生まれ変わりか、面白い、面白いぞ!』

 「お前も生まれ変われ、こいつで生まれ変わらせてやる!」


 俺は距離を取り八相に構えて精神を集中し、神気を錬る。


 『新たな必殺技か♪ 面白い、打ち破ってやる♪』


 ウキウキすんなよ剣術馬鹿。


 「熱血一刀流巨大奥義・破邪の太刀っ!」


 こちらが機体を突進させれば相手も大上段で突進。


 奴が面を狙って振るのに合わせて、こちらも金色の光を纏った刃を振るう。


 一刀両断に俺はネッケツキラーを叩き切った。


 奴の体は光の玉となって天へと昇って行く。


 「あばよ、今度こそ人に生まれ変わって来い」


 俺は前世の因縁の一つに決着を付けられた.


 「おおっ! これぞ父上の転生の剣、破邪の太刀♪」


 スミハル殿が喜ぶ。


 「おいおい兄弟、すげえもん持ってるな?」


 ダイダイマルが驚く。


 「これは相当な技だよ?」


 ムラサキも驚いていた。


 「ミズホの剣をここまで使いこなすとは天晴ですな♪」


 ソウキュウは感心していた。


 「はわわ! これはマッカ殿が武王即位もありえますぞ!」


 シンベエ君が取恩でもない事を言い出す。


 甦ったボージャック怪人達の群れは回復魔法作戦で倒し切れた。


 「やったね、マッカ~~~♪」

 「流石ですわ~♪」

 「お見事でございまする~♪」

 「素敵です♪」

 「うむ、よくやったのじゃ~♪」


 仲間達が五方向からロボに乗ったままで抱き着きに来る。


 「いや、止めろお前ら! まだ戦は終わってねえぞ!」


 ついでにレグルス、変身中は本名で呼ぶな!


 勝って兜の緒を締めよって言うだろうが?


 「あは♪ ついやっヴゃった♪」


 いや、レグルスは男の姿で乙女モードニ入るな。


 「しかし、父上から秘剣を授かるなんて羨ましいでござる♪」


 アルタイスは無邪気だな。


 「もしや、先ほどの技で魔王も邪神も転生させるおつもりですか?」


 ポラリスが俺の狙いに気付く。


 「なるほど、上手く行けば魔王軍は綺麗に片付くな」


 エラポスも俺の狙いに何かを思い至る。


 「綺麗な存在に生まれ変わってしまえば、二度と悪さはできませんね」


 アリエスも俺の狙いに納得した。


 「そう言う倒し方もありですね、納得です」


 タウラスも転生による討伐を受け入れる。


 「うむ、普通に倒してはまた復活するかもじゃな」


 ヘリオスも納得した。


 「ああ、普通に戦って倒すだけじゃ繰り返しになる。 転生で因縁を断ち切ろう」


 ネッケツキラーを斬った時に、魂を浄化する感じみたいなのを感じた。


 風呂で温泉の素が弾けて溶けて行くみたいなシュワッとした感じだった。


 「地上へ帰ったら、敵の供養もいたしましょう祭り崇める事で清めて邪悪をぜんなる御霊へと変えてしまうのです♪」


 花鬼大将軍からスミハル殿が代表して提案する。


 本当にミズホ国って、日本風だよな。


 「じゃあ、新婚旅行はミズホの都での夏祭りだね♪」


 レグルスがはしゃぐ。


 「はいはい、それじゃあ気を取り直して次は城攻めに行くぞ!」


 俺達が外の兵力を倒し切ったのを感じ取ったのか?


 敵の城の基礎にあたる巨大な頭蓋骨部分が口を開けた。


 城門は開けたから掛かって来やがれと言う合図だろう。


 邪神諸共、お前らボージャック軍を今度こそ壊滅させてやるぜ。


 俺達は敵の城へ向けて走り出した。

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