第四十七話:推参、花鬼大将軍!

 ジグモ星人を倒して帰ったら、お約束のように仲間達に怒られた。


 「やっぱり、マッカには迷子紐が必要かしら?」


 レオンが頬に手を当てて女モードで溜息を吐く。


 困った息子を見る母親みたいに言うな。


 「油断も隙も無いですね、マッカ殿は!」


 いや、前世からの問題児仲間であるアオイ嬢には言われたくはないぞ。


 「マッカ様、前世の頃から事件を引き寄せている気がしますわね?」


 フローラ嬢は俺との過去を思いだしているのかうらめしげな目で俺を睨む。


 彼女との前世での事には、身に覚えがあるから視線が痛い。


 最初の結婚記念日に出かけたレストラン。


 店が入ってたデパートがテロリストに襲われたのを一緒に解決したっけ。


 デートをすれば、悪の組織の敵襲とか近くで事件とか起きてたよな。


うん、フローラ嬢にだけは謝るかな。



 「いや、俺は何も悪い事はしてないぞ?」


 悪の宇宙人を倒して平和を守っただけ。


 敵の方が、俺や世界の平和を乱しに来ているんだって。


 何故か、他人任せにはできない案件ばかりが俺の方に来てる気がするけどさ?


 今回は、事前にアデーレ様にも告げてる。


 『私は無鉄砲で飛び出しました』


 と言う俺の主観的な事実とは違うプラカードを首に掛けられ、会議室で仲間達に車座で囲まれながらも反論する。


 「戦いに夢中になって、僕達を呼ぶのを忘れたのは駄目でしょ?」


 バッシュが告げる。


 「マッカは、闘牛と同じだからな一度暴れると」


 クレインが呆れる。


 「マッカさんを追跡するマジックアイテムの開発が急務ですね」


 クラウが怖い事を言う。


 「前世でもやってたのよ、マッカの脳内にナノマシン入れて」


 レオンが呟く、まさか健康診断で脳みそ見られた時か?


 「今回は妾の不手際じゃ、すまぬ」


 いや、アデーレ様は悪くないだろ?


 「今後はもっとマッカに目を光らせましょう」


 レオンがまとめる。


 「マッカ、牧場でのんびりしよっか♪」


 アップルが笑顔で此方に語りかける。


 「アップルさん、抜け駆けは行けませんわ♪」

 「え~、マッカの好感度爆上げしたかったのに?」


 フローラ嬢とアップルが視線で火花を散らす。


 ちょっとお腹が痛い。


 「うむ、時間割は守るのじゃ」


 アデーレ様が決を下して今度こそ治まった。


 今回のぐだぐだなラブコメタイムから一応解放された俺。


 仲間達と部室を出て、一時解散の流れとなる。


 いや、きちんと俺の方からも動かねば。


 愛には愛を返さねばならん、レーティングを守りつつ。


 俺だって欲はあるが、暴走しない自信がない。


 今の俺がパトスを解き放ったら、魔王軍との決戦どころじゃなくなる。


 平和な時期じゃないとパパにはなったら駄目だ。


 パートナーだけでなく、未来の子供達への責任もある。


 前世では満点どころかギリギリ平均点パパだった。


 娘からは熱血バカオヤジとか言われたし。


 息子達とは仲は良かったんだがな?


 ボージャックとの戦いが終わっても、悪との戦いは終わらなかった。


 教官職についても、新たな敵や後輩や仲間のヘルプやらで駆り出された。


 そんな俺の生き様を見たからか、子供達や孫も皆ヒーロー稼業に進んだ。


 今世では、満点パパになりたいんだよ。


 この事もきちんと話そう、戦後に明るい家庭を築くために。


 「マッカ様、良い笑顔ですわ♪」

 「ちょ、フローラ嬢?」


 物思いから現実に戻ると、フローラ嬢が俺の腕に絡みついて寄り添っていた。


 「今日は私がマッカ様当番ですの、放しませんわよ♪」

 「うん、腕絡みもされてるしね」


 前世でもやられてたな、立った状態での腕絡み。


 下手をすると関節を極められて投げられる奴。


 学園を出て王都の中央通りをのんびり歩く俺達。


 「やっと二人で穏やかな時間を過ごせますわね♪」

 「まあ、戦い続きだったからな」

 「ふっふっふ、今日は私がマッカ様を独り占め♪」


 うん、前世でできなかった奥さんサービスをしよう。


 カフェでお茶でも飲んで、空飛んで女子寮入り口に送って。


 健全なデートをと思っていた俺は、フローラ嬢と共に召喚された。


 「うおっ! 何だ、事件か?」


 格納庫の中、仲間達は変身していた。


 「また悪党にデートの邪魔をされましたわ!」


 フローラ嬢は怒りを燃やして変身した。


 「マッカよ、巨大魔獣の群れが王国領に迫って来ているのじゃ!」

 「何だって、許せねえ!」


 ヘリオスの言葉に驚きつつ、俺も変身してロボに乗り込み出撃する。


 「ちいっ! よりもよって俺の地元じゃねえか!」


 空から見下ろせば敵の群れが迫るのは、俺の地元サンハート領にある平原。


 着地して各々で攻撃し、数を減らして行く。


 巨大な猪型の魔獣や巨人型の敵など、敵は雑多な編成であたt。


 敵の数を減らして行くと、空に暗雲が生まれ落ちて来る巨大ロボットと追加の魔獣の群れが落ちて来た。


 『プ~ップップ♪ さあ魔獣ども、王国を踏みにじれ♪』


 ロボから聞こえるのは敵の幹部であるテッポーの声。


 奴もロボットを新調したのか、上半身は刺々しいウニもどきで下半身が戦車タイプの黒い巨大ロボに乗っていた。


 「にゃろう、合体だ!」


 俺の叫びに仲間が応じてハチダイレンセイオーへと合体する。


 夕陽を背負い、平原に立つハチダイレンセイオー。


 故郷の街を守るべく俺は仲間と迫りくる魔獣達に向き合う。


 強力なユニット一体でのタワーディフェンスの開始だ。


 雑兵ども、一匹たりとも通さねえ!


 俺が不退転の気合を入れた時であった。


 『暫く、しばら~く~~~~♪』


 天からスミハル殿の芝居がかった大音声が戦場に響き渡る。


 同時に、何かが落下して土煙がド派手に上がる。


 『な、何者だ~~~っ!』


 大音声に驚いたテッポーが叫ぶ。


 土煙が晴れると同時に現れたのは、一台の巨大なスーパーロボット。


 白い着物に赤い袴を着た豪傑を模したド派手に傾いた機体だった。


 『ミズホが生みし鋼の大権現その名も花鬼大将軍♪ あ、ただいま推参♪』


 俺達に通信魔法で中の様子を見せつつ語るスミハル殿、黒の甲冑姿だった。


 『兄弟たち、待たせたな♪』


 ダイダイマルはいつぞやみたオレンジ色の鎧。


 『花鬼生徒会も巨大マジックメイルで参戦だよ♪』


 ムラサキは、名の通り紫色の甲冑。


 『我らも大舞台に上がらせていただきます♪』


 ソウキュウは水色の鎧姿。


 『皆さん、敵もそろそろ動きますよ?』


 シンベエ君も緑色の鎧を纏っていた。


 花鬼生徒会は、鎧武者姿に変身するチームだった。


 花鬼大将軍はなおにだいしょうぐん、歌舞伎の主役みたいなロボだな。


 俺達が今乗っている。のハチダイレンセイオーと同じ高さと横幅。


 市街地で戦闘に使うのが怒られる奴だ。


 「あっちは、ド派手に和風だね♪」


 前世では歌舞伎とか好きだったレオンことレグルスが喜ぶ。


 「僕達も負けてられませんよ♪」


 バッシュことアリエスが対抗心を燃やす。


 「ゴリマッチョなロボット、素晴らしい♪」


 クレインことエラポスは感動していた。


 「ミズホ国、侮れんのう」


 アデーレ様ことヘリオスは、警戒していた。


 「兄上達には負けませんよ♪」


 アオイ嬢ことアルタイスも奮起した。


 「猛牛のように勇ましく参りましょう!」


 クラウことタウラスも闘志を燃やす。


 『プップップ、一台増えた所でどうなる♪』


 俺達に何度も負けておいて嘲笑うテッポー。


 「知らないのか? お前に勝ちはない!」

 『天下を守る双璧の巨人の力をしかと見よ!』


 スーパーロボットが二台もいたら、負ける理由がないと言うのを教えよう。


 『オオナギナタ、春一番っ!』


 スミハル殿が叫べば、花鬼大将軍が超巨大な長刀を召喚して装備し吶喊。


 台風の如く薙刀をぶん回して迫りくる魔獣達をミンチにして行く。


 「よし、俺達も行くぜレンセイオービームで薙ぎ払いだ!」

 「「応っ!」」


 こっちも胸のライオンヘッドが牙を剥き、青白い極太のビームをぶっ放す。


 花鬼大将軍に当たらないように胴体を動かして振るえばビームでの薙ぎ払いだ。


 テッポーの奴がお替りで呼び出した魔獣の群れを光の玉に変えてやったよ。


 『お見事、お見事♪ 流石は我らが友よ♪』

 「そちらも流石だぜ、残るは敵の大将一人。一気に終幕と行こうか!」


 フェニックスオオダチを構えてこちらも前に出る。


 『おのれ~~~っ! こうなったら、こっちも巨大化だ!』


 敵のウニロボットが巨大化し、百mを越える棘付き鉄球となって転がって来た。


 『甘い、どれだけ大きくなろうとも我らは負けぬ!』

 「そう言う事、合わせて行くぜ!」


 花鬼大将軍も巨大な刀に武器を変えて大上段に構える。


 俺達のハチダイレンセイオーも同じく大上段に構えて必殺技の用意。


 俺達は同時に突進し互いの刃を合わせてエネルギーを放出。


 超巨大な黄金の刃を生み出す。


 「「天下一刀、神威の太刀っ!」」


 全員で叫び、振り下ろす。


 『ば、馬鹿な~~~~ッ!』


 テッポーの断末魔の叫びが聞こえた、成仏しろよ。


 天まで届く光の柱を立ち上げて、光の柱を背にして残心を決める俺達のロボット。


 天下御免の大勝利と呼べる戦いであった。

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