第四十八話:神騎一体
花鬼生徒会のロボットも誕生し、共闘してテッポーを討ち取った俺達。
時は来た、いざ討ち入りの時だ。
「いや、せっかち過ぎじゃぞマッカ!」
会議室で提案したらアデーレ様に止められた。
「ごめん、キングトータスがまだ起きない!」
突如室内に転移して来たアップルが叫ぶ。
「花鬼大将軍も、整備がまだだよ」
レオンがやれやれと肩をすくめて言う。
「勇み足は行けませんわ、出陣式も必要ですのよ?」
フローラ嬢にも窘められる。
「俺達だけで乗り込んだら、抜け駆けだと言われるのが不味いんだよ」
クレインがこちらを睨んで言い放つ。
「マッカさん、この戦いだけは友軍の皆様と足並みを揃えて下さいよ!」
バッシュも語気が荒くなる。
「戦を早く終わらせたいのは皆同じですよ、マッカ殿」
アオイ嬢にまで落ち着いた口調で諭されてしまった。
「すまない、そうだよな」
仲間達の言葉に息を整えて落ち着く。
「マッカさんが前世でどんな戦い方をしたのかはわかりません」
「クラウ?」
「ですが、今のあなたはおかしいです。 普段のやらかしはしても、仲間の言葉も大事にするマッカさんに戻って下さい!」
クラウの言葉にも、追い打ちを掛けられて反省する。
「後、あんたたちはまだ
アップルから、
「それってもしかして、あの馬と関係があるのか?」
「大ありよ! 魔王だけでなく邪神も倒すには神獣の力も必要なの!」
アップルが熱弁する。
「それは、俺達が知らない英雄伝説とも関係があるのか?」
クレインが何かに気付き、質問口調でアップルに語りかけた。
「ええ、私達が邪神まで倒せなかった理由は神獣の力を扱えなかったから」
アップルが苦々しく語り出す。
それは、過去の魔王討伐の語られなかった真実だった。
「皆は転生二回目だから覚えていないだろうけれど、私は覚えてる」
アップルは語り続ける。
俺達は実は転生が二回目で、地球に転生する前の時代があった事。
その当時は、今みたいにロボもヒーロースーツもなく聖獣の加護と剣と魔法のみでの戦いであった。
乙女ゲーム時代の伝説の主人公、聖女メリッサと勇者王リチャードの二人。
俺達が二人の為に血路を切り開き、彼らがキングネメアの加護を得た光の聖剣で魔王を倒した。
ここまでは、物語や歴史に書かれた事実。
だが、ラスボスだと思っていた魔王との戦いの後で邪神との連戦になるとは当時は誰も予想が出来なかったらしい。
魔王戦で精魂尽きた聖女と勇者のついでに、玉座までの道を切り開いた俺達は月の女神の慈悲により救われたのだと言われた。
聖獣の力も神獣の力もフルに使うには、魂のアップデートが必要。
俺達は死後、女神の手で魂を直々に育成される事となったクラウとアデーレ様。
農耕神としてマイナーゴッドの地位についていたアップルを除き、魂のレベル上げも兼ねて神々のスカウトにより地球へと転生した。
勇者と聖女のカップルはと言うと、今やマイナーゴッドとして王国の守護神だ。
「よし、じゃあ勇者王越えを目指す為に特訓だ♪」
「「オ~~~♪」」
焦燥感から解放された俺は、拳を突き上げて宣言すれば仲間がレスポンスする。
待ってろよ邪神と魔王軍、お前らを確実に殴り倒すべく強くなってやる。
こうして、特訓の為にアップルの世界へと赴いた俺達。
相変わらず、争いとは無縁な良い天気の牧歌的な世界。
ここに来ると、心が穏やかな気分になる。
農場でスローライフを夢見る人の気持ちがわかる。
まずは今まで放置していた神馬達のご機嫌取りで、餌やりやブラッシング。
数日前までは仔馬だったのが、普通のサイズの馬に成長していた。
ついでに聖獣達に対しても餌やり等の世話をする。
「で、なんで俺達は農作業をさせられてるんだ?」
クレインが林檎の収穫作業をしながらぼやく。
「いままで食べてた林檎の代金変わりだそうです」
「ほら、さぼらず取る! あ、落ちた林檎はいただきます♪」
バッシュもパッションシープに監視されながら働く。
「クレインよ、次は我の角の手入れを頼む」
サイクロンディア―がクレインを急かす。
「マスター、私も前よりさらに大きくなりましたよ♪」
「ヒヨちゃん、戦闘機並みに育ったな?」
俺はヒヨちゃんの背に乗り仲間達の様子を俯瞰しながら魔力を振りまく。
神獣達との訓練の前に聖獣達とも絆を強める。
神騎一体は、勇者と聖獣と神獣の心と体が一つにならねばならない。
その三位一体の境地に至るには、共に過ごし触れ合う事が一番の鍛錬らしい。
「聖獣にも神獣にも心や好き嫌いもあるの、人間だって好きな人の力になりたいって気持ちがあるでしょ?」
いつの間にか俺の隣にいたアップルが俺の考えに答えてくれる。
「もしかして、その時の俺達って聖獣とそこまで仲が良くなかったとか?」
「悪くはないけど、最愛までは至ってなかったのが敗因ね」
攻略の鍵はレベルや仲間達の絆だけでなく、聖獣達との好感度だったか。
言われてみれば力を貸してくれる相手の好感度が低けりゃ駄目だよな。
愛は力、納得した。
「よっし、人と神と聖獣と神獣。 皆の絆を繋いで未来を作るぜ♪」
人は一人だけじゃ駄目だ、色んな繋がりがあってこそ進んで行ける。
改めて考えさせてもらったぜ。
それぞれが聖獣との触れ合いを終えてから、西部劇で見た赤茶けた荒野に俺達は変身した状態で神馬に乗って集まった。
「アップル様の世界って、農場だけじゃなかったんですね?」
タウラスが呟く。
「少しは馴れたと思ったが、神の持つ世界とは摩訶不思議よのう?」
ヘリオスは驚きと落ち着気が混ざった口調で呟き荒野を見回す。
「よっしゃ、ここからが神騎一体の特訓のスタートだ!」
神馬も嘶きやる気を見せる。
「「
全員で叫ぶと俺達の体が光に包まれた。
聖獣武装で変身した手足と胴体の上に白い馬型の追加装甲が加わった。
「全員、手足が装甲で肥大化して胴体が馬の頭が付いたのか?」
俺は自分だけでなく仲間達の姿も見て見る。
「うん、ロボットアニメの主役機体とかそんなノリの姿になってるね♪」
レグルスが仮面の下で微笑みながら呟く。
「ロケットなパンチとか打てそうですね?」
アリエスが適当な岩に向けて拳を突き出すと、衝撃波を出して彼の腕の追加倉庫言うが飛んで行った。
飛んで行った追加装甲は、文字通り岩をドカンと砕いて戻って来た。、
「本当に出たな、ロケットなパンチ」
エラポスも試しにぶっ放して見ると、同じように拳の装甲が飛んで行き山を砕いて戻って来た。
「もしかして、脚力も上がっているのでしょうかっ!」
ポラリスが軽く足を踏み込み体を前に傾ければ、文字通りロケットダッシュで突進して行った。
「ちょ、ポラリス! よし、追いかけるぜ!」
俺もポラリスを追えば、足裏が爆発して弾道ミサイルの如く飛び出しポラリスを追い抜た。
「うお、こいつは馬力が半端ない!」
出せる馬力が上がり過ぎて制御できない。
「ヒャッハ~~♪ 楽しいです~~っ♪」
アルタイスはサーフィンの如く波に乗って突っ走ていた。
何だろう、使える魔法の属性により変化があるのか?
「おおう、神獣達が喜んでおるのが伝わってくる! はしゃぎ過ぎじゃ!」
ヘリオスが荒野の大地を駆け巡りつつヒントになる事を告げる。
「もしや、どうどうどう♪」
俺は自分の胸に付いた白馬の頭を優しく撫でると、動きが止まった。
動きを止めて意識を集中すると、神獣達のはしゃぐ気持ちが伝わって来た。
「そうか、喜んでくれて嬉しいよ♪」
俺が呟くと、胸の装甲の白馬の頭が口を開けて嘶く。
「うお、そこの部分開くんかい!」
鳴き声を上げて肯定する神獣。
俺達は荒野の岩や山を破壊しまくり、どうにか力加減を覚える事に成功した。
神獣達がはしゃぎ疲れたと言うのもあるだろうが。
更に、神獣達には乗り物や追加装甲以外にも機能がある事が判明した。
「「
俺達が全員で叫ぶと、神獣達は追加装甲形態から馬が足を曲げて寝そべった形の砲撃形態へと姿を変えた。
「神輿のようですね、重いです!」
アルタイスが呻く。
「根性じゃ、気合いを入れて担ぐのじゃ!」
ヘリオスが叱咤する。
「牛も足腰は強いですよ!」
タウラスが何故か対抗心を燃やす。
牛と馬は仲が悪いのだろうか?
「まさか、八人でバズーカ砲を抱えて撃つことになるとはな」
エラポスが感慨深そうに呟く。
「これ、バズーカ自体が重いから止め用ですよ?」
アリエスは足を振るわせていた。
「エネルギーは僕達の魔力だね、そろそろ撃とうよ?」
レグルスが俺に催促をする。
「わかった、バリアントバズーカ・レインボーストリーム!」
俺は技の名を叫び、馬の尻尾部分にある銃把を握り引き金を引く。
馬が大口を開け、虹色のビームをぶっ放した。
撃った反動で俺達全員も吹っ飛ばされたが、車線上の山々が消し飛んでいた。
「これなら、月に乗り込んでも通用しそうだな?」
変身も解ける程に魔力を使い果たしてぶっ倒れた俺達。
不思議と満たされた気分になっていた。
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