第四十五話:勇者インスペース
エルフ達の国、ブロンズ王国にある聖なる湖。
湖に潜った俺達聖獣勇者団は、巨大な海亀型の箱舟を見つける。
箱舟のクルーと認めれた俺達は、ムーントータス号を浮上させ持ち帰った。
「さて、日記はこれ位にしておくか」
最後に日付を書いて、俺は日記を書き終える。
どうにか基地の自室に戻って来たが、大変な日だった。
精神が疲れたので、メモ書き程度の内容で終わらせる。
前世でも日報や始末書やら書いて来たが、今日は日記を書くのも疲れた。
レオンとかに見られたら、ない事ばかり加筆修正された上に出版される。
あいつなら自分の主観中心で、後世の歴史家の迷惑になる物を書いている。
前世でも俺達の資料編纂とかしてたのはレオンだな。
あいつの方が文才はあると思う、日記帳は隠さねば。
着替えも風呂も面倒なので、ヒヨちゃんを召喚して浄化の炎を吹き付けて貰う。
今日はもう寝よう、ちょっと休暇が欲しいぜ、
ファンタジー世界に有給休暇はないのが辛い。
そもそも俺は給料とか貰ってるのだろうか?
貰った金は勇者団全体の活動資金だからパーティー資産。
自分の個人資産とか調べないと不味いかな?
いかん、寝ないと碌な事を思いつかない。
ベッドの上に倒れ込み、呼吸を整えながら眠りについた。
翌日。
ムーントータスの調査チームを率いて俺達は艦内を探索した。
権利関係で揉めるかと思ったが、調べた結果このデカい亀型戦艦は神獣だと判明。
神獣は人間が好きにできるもんじゃないので、崇めて祀る事となった。
俺は外に出てムーントータスのデカい頭に触れて意思疎通を試した。
『我が名はムーントータス、そなたが当代の勇者の筆頭か?』
女性口調で俺に語りかけてきたムーントータス。
「はい、若輩者ですが務めさせていただいております」
俺は丁寧に答える、機嫌損ねたら不味いしな。
『そなた達が我を呼び起こした際に、我が身は当代に合わせて変質した』
つまり、俺らがロボに乗って接触した事でロボに対応した施設に進化したのか?
人間フレンドリーな神獣様だなとありがたく思う。
『邪神と魔王軍を討つ為、再びそなた達の力となろう。 戦いが終わりそなたらを送り届けた後は我は月の女神に代わり新たに月の守護に就く』
ムーントータスの言葉に頷く、それなら彼女の力を巡り争いとはならないはず。
「マッカ、ムーントータスは何て言てるの?」
レオンが俺に近づき問いかける。
「ああ、俺達に力を貸してくれる。 んで戦後は、月の守護神になるってさ」
俺は正直に伝える。
「うん、それが良いね神獣様を巡って争いになるとか困るし♪」
レオンが微笑む。
俺とレオンが会話する中、アデーレ様が叫び声を上げた。
「ぐわ~~~~っ! 頭に天啓が降りて来たのじゃ~!」
どうやら、女神様が彼女に何か情報をダウンロードさせたらしい。
「ええい、星の世界の魔素に対する防護服を作らねば!」
アデーレ様が叫びを上げ敵地へと走って行く。
内容からすると、宇宙服かな?
装備の開発を博士枠の彼女に押し付けるのは心苦しいが、任せるしかなかった。
「何と言うか、本当に世界が変化してるねえ♪」
基地内の食堂での昼飯中、そばを食う手を止めてレオンが笑う。
「いや、笑い事じゃねえって大事な事なんだから」
俺は向かいの席に座るレオンにツッコむ。
「でも、宇宙服は剣と魔法の世界でも必要ですわね」
俺の右隣でフローラ嬢が呟く。
「私達は聖獣の加護があるので変身すれば良いですけど他の方々は確かに」
俺の左隣で焼き魚定食をほおばる手を止めたアオイ嬢も頭を捻る。
この世界の宇宙には、放射線ならぬ邪悪な魔素があり人体を蝕む。
魔素である為か防御魔法に干渉するので、被爆ならぬ魔素汚染は完全に防げない。
と言うのがキングトータスから教わった情報。
彼女が湖で眠ていたのも、魔素の浄化と言う目的があったから。
メンバーで生身で宇宙に飛び出して平気なのは、フェニックスと契約して存在が神の域に近づきつつある俺のみとかも言われた。
アデーレ様には、魔素による被害を九割軽減する宇宙服を作ってもらっている。
花鬼生徒会の面々の機体の製造も別口で進行中だ。
魔法の力で大幅に時間を節約してアイテムができるとはいえ、中々決戦に殴り込めないのは申し訳ない気分だ。
気持ち的には敵との決戦を終わらせて世間の皆様の経済的負担を解放したいん。
だが、戦は時間も金も物資も人手も消費するもの。
世の皆様の尽力に報いるべく、俺達も頑張らねば、。
「マッカさん、やる気が出てますね」
「そうでないと困る」
バッシュとクレインが俺を見ながら言い出す。
「つまり、我々が先に星の世界へと向かうのですね?」
レオンの隣に座るクラウが俺に問いかけて来た。
「ああ、まず俺達がこの世界での宇宙訓練に出る」
俺は仲間達に宣言した。
「そうだね、どのみち前世の杵柄で経験のある僕らが行かないと」
レオンが頷く。
「アデーレ様にも伝えておきましょう、話しておくことは大事です」
クラウも同意しつつ告げた。
「これは、チェリッシュランドは青かったって言える流れですかね?」
バッシュが冗談を言う。
「残念だな、その台詞は聖女だったメリッサ王妃が言っている」
クレインが笑顔で答えて笑いを呼び、場を和ませる。
ラボで作業中のアデーレ様に報告に行く。
科学と魔法が入り混じった謎の器具が設置された部屋は魔窟だった。
「うむ、星の傍を離れるではないぞ? レポートは、レオン殿に頼もう」
アデーレ様、俺が机仕事が苦手だとわかってらっしゃる。
かくして、勇者団の七人でロボに乗りムーントータスの中に入る。
俺達が機体をハンガーに固定させると、激しい揺れが起こり圧が来た。
圧が止んだかと思えば、何となく浮遊感を感じる。
ムーントータスの中から出てモニターで外を見ると漆黒の宇宙空間。
ファンタジー世界でも宇宙は星々が輝く世界であった。
『う~~ん、宇宙空間は踏ん張りがきかなくて落ち着きません!』
アルタイスが不満を漏らす。
「確かに、地に足が付いていないと落ち着かないな」
敵のアジトがある月を見てみると、巨大な青い光のキューブに覆われていた。
『あれが、月の女神様が施した結界ですのね?』
ポラリスが呟く。
『あの結界のお陰で、地上はまだ滅んでいないんだ」
エラポスの機体からも呟きが聞こえる。
『必ずカチコミかけて月も取り戻しましょう♪』
アリエスが明るく誓う。
「そうだな、待ってろよ魔王軍ども!」
俺も気合を入れる。
『皆さん、何やら空間が歪んでますよ?』
タウラスが叫ぶ。
『魔力を感じない、別口?』
ムーントータスに残ったレグルスも叫ぶ。
「総員、船を守れ! 敵襲だ!」
俺は叫び皆で船を守る配置に着く。
虚空の歪みから現れたのは、魔力のセンサーにかからない灰色の三角錐。
三角錐の物体から手足と頭が生える。
ロボットの類か? 仕方ねえ、合体だ。
「ゴダイレンセイオーで行く、敵は謎の怪ロボット!」
結界魔法を展開して身を守りつつ合体シークエンスに入る。
何故かこちらの合体中に敵は動かなかった。
こちらがゴダイレンセイオーになると、怪ロボットは両手から光線剣を出した。
「上等だ、魔王軍じゃなさそうだが受けて立つ!」
こちらもフェニックスオオダチを召喚して構える。
習熟訓練だと宇宙に出て見れば未知との遭遇と戦闘。
前世の時も宇宙には敵味方問わず色んなのがいた。
だが、今世の宇宙でもそうだとは思わなかったよ!
相手の素性はわからないが、脅威となるなら容赦はできん。
突進してきた謎の宇宙ロボットと、俺達が操るゴダイレンセイオーは刃を交えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます